[2022_08_26_01]関西電力美浜原発3号機でまたトラブル 今度はECCS系統で警報、前回は放射性物質を含む水が漏れた 齢45年を超える老朽原発は運転を「拒絶」して 私たちを守っているのかも 危険な老朽原発は廃炉しかない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年8月26日)
 
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関西電力美浜原発3号機でまたトラブル 今度はECCS系統で警報、前回は放射性物質を含む水が漏れた 齢45年を超える老朽原発は運転を「拒絶」して 私たちを守っているのかも 危険な老朽原発は廃炉しかない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎ 美浜3号機では8月1日に原子炉補助建屋の補助格納容器内で、放射性物質を含む水が漏れているのが確認され、8月10日に予定していた運転再開を延期していた。
 その改修が終わり、再度、原子炉起動の準備を進めていた矢先に、また別の事故が発生し再稼働時期がまた延期された。
 補助建屋で発生した水漏れ事故の原因が「解明」され再発防止がはかられたと報告した直後に、今度はECCS系統のトラブルで再度、運転できなくなった。
 関電が8月19日に原子力規制委員会へ提出した報告書では、見直したスケジュールでは原子炉起動は23日、送電開始は25日の予定だった。
 齢45年を超える老朽原発は、運転を「拒絶」して私たちを守っているのかも知れない。そんな気にさせるくらい、動かそうとすると何処かでそれを「阻止」する事故が起きている。
 強行して動かしたら、大事故に発展するのではないか、そんな気にさせる異常事態が福井県嶺南地方で続いているのだ。

◎ECCS系統のトラブル

 今回発生したのは、一次冷却系に付けられている「蓄圧注入系」と呼ばれる、ECCSの一種のタンクで起きた減圧。このシステムは、後備停止系統とも呼ばれ、原子炉の冷却と停止を兼ねた装置だ。
 一次系は高温高圧(150気圧・300度)で運転されている。
 この状態で、原子炉の停止系が故障し、止まらなくなった状態で冷却材が失われる事故が発生した場合、ポンプで注入するECCSだけでは原子炉の停止がうまくできず、メルトダウンする危険性がある。
 その際、蓄圧注入系のタンクに予め「ほう酸」を混ぜた冷却材を入れておいて加圧しておき、これを注水することで、「ほう素」が中性子を吸収する働きにより原子炉を停止することができるとして、設置されている。
 タンクには約30トンの「ほう酸水」がある。
 このタンクの圧力が、規定値よりも下がったとの警報が出た。

 関電の発表文から引用すると
 『16時54分頃、中央制御室において「Aアキュムレータ圧力低」の警報が発信しました。関連パラメータを確認したところ、Aアキュムレータ圧力が、保安規定に定める運転上の制限値4.04MPaを下回り、4.010MPaに低下していることを確認しました。
 このため、16時54分に保安規定の運転上の制限を満足していない状態にあると判断しました。その後、Aアキュムレータの圧力が4.052MPaに回復したことから、16時57分に保安規定の運転上の制限を満足する状態に復帰しました。』
引用元
https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/nuclear_power/info/u_seigen/2022/pdf/0821_1_01.pdf

◎ これを読み解くと、アキュムレータがほう酸注入タンク、圧力の「4.04MPa」はメガパスカルで、気圧に直せば「39.8718気圧」これが「4.010MPa」「39.57562気圧」に下がったことで警報発報。しかし3分後には「39.990131気圧」に回復したので発報停止。そういう意味だ。
 保安規定上、「1次冷却材圧力が6.89MPa(約68気圧)を超える場合はアキュムレータ圧力は、4.04MPa(約40気圧)以上であることが求められている」というから、再稼働の準備として圧力容器を封鎖し原子炉の圧力を上げ始めていた時期だったのだろう。
 美浜原発3号機は3ループ型(一次冷却系と蒸気発生器と二次冷却系の「ループ」が3系統で構成される原発)なので、アキュムレータも3つある。そのうちの一つで警報が出た。
 僅かな数値の差であるように見えるかも知れないが、これが原子炉を止められるかどうかの瀬戸際で働く装置であることを忘れてはならない。
 30トンのタンクが3つで必ず止められるかどうか、計算上は可能でもやってみなければ分からないといった、重大事故で使われる装置だ。これが完全に働くかどうかわからいままに動かすなど論外なので、直ちに原因究明と再発防止対策に入るのは当然である。
 こうした原発のトラブルは老朽炉では頻度が増す。
 これは避けられない。
 今は美浜原発3号機しか40年越えの原発は再稼働していないが、
 今後、高浜1、2号、そして茨城県の東海第二原発が再稼働を予定していることを考えると、リスクの増大はますます避けられないこととなる。
 岸田政権による「原発7基追加再稼働推進」は、次の事故を引き寄せているだけの、危険な暴走に他ならないことを改めて世に警告していこう。

◎ なお、前回のトラブルについての説明は
https://www.kepco.co.jp/corporate/notice/notice_pdf/20220816_1.pdf
に掲載されている。
KEY_WORD:美浜_緊急冷却装置に異常_:MIHAMA_:TAKAHAMA_:TOUKAI_GEN2_:廃炉_: