[2017_09_18_01]再処理工場・雨水流入 原燃の資質 疑問視 規制委 管理体制「信頼揺らぐ」(東奥日報2017年9月18日)
 
 六ヶ所再処理工場の非常用電源建屋で8月に発生した雨水流入は、日本原燃が工場内の全設備の管理状況を調べる事態に発展した。新規制基準適合性審査の「大前提」(原子力規制庁)となる設備保全が不十分だったことが発覚し、一時はあと一歩まで近づいた審査合格も遠のいた。原子力規制委員会からは、事業者としての原燃の資質を根本から問う声も上がっている。(古川靖隆、阿部泰起)
 再処理工場では昨年8月にも、分析建屋と出入管理建屋で止水板の欠陥による雨水流入が発生。さらに、北陸電力志賀原発(石川県)での雨水流入を受け、規制委は今年2月、原燃などに対策の実施を指示したが、原燃は非常用電源建屋で今回雨水が流入した箇所は止水処置が施されていると判断し、直接の原因となったひび割れを見逃していた。
 13日に規制委が都内で開いた再処理工場の審査会合で、原燃の村上秀明副社長(再処理事業部長)は「自ら問題に気付く能力・仕組み、対応のスピード感が決定的に足りない」と自己分析した。しかし、原燃の説明を巡り規制委側は「問題を小さくしようとか、問題ではないとする方向に力が働いていないか」と指摘。設備保全の不備によるトラブルが今後も起こることを懸念し、「原燃に再処理事業をやらせていいのか」と、適格性を問う発言も出た。規制庁担当者は「点検していない所がたくさんあり、それすら把渡していない」とあきれ気味に語った。
 原燃は本年度末までに再処理工場の全設備の管理状況を調べ、必要な点検・補修を終わらせる方針。並行して審査対応も行い、今月中に審査合格の前提となる補正申請書を規制委に提出するとしている。しかし、規制委の田中知委員は「審査会合を開くに値する(補正申請書の)内容でなければ時間の無駄。現場の安全確保が最優先」とし、合格への手続きを進めようとする原燃にくぎを刺した。
 今回の雨水流入は保安規定違反となる可能性が高い。規制庁幹部は取材に「原燃は事業許可申請や審査で約束したことを履行できていない。信頼性が相当揺らいでいる」と厳しい口調で語る。一方、原燃は「ご指摘いただいたことに速やに対応し改善を図りたい」と答えるのが精いっぱいの現状だ。
 事業者の資質を巡っては、東京電力が柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働審査で事業者としての「決意と覚悟」を原発の保安規定に盛り込むことで適格性を示そうとしたものの、性急だと批判が高まっている。規制庁幹部は「事故を起こした東電と、原燃では重みが違う」とした上で、「今後のことは原燃がどういうスタンスで審査に臨むか次第。まずは結果を見せてほしい」と、資質を厳格に見極めていく構えだ。
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