[2022_06_02_09]島根原発2号機 知事が再稼働に同意 県議会で表明 (NHK2022年6月2日)
 
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島根原発2号機 知事が再稼働に同意 県議会で表明

 全国で唯一、県庁所在地にある松江市の島根原子力発電所2号機について、島根県の丸山知事は、2日の県議会で再稼働に同意する考えを表明しました。
 松江市にある島根原発2号機は、原子力規制委員会の新しい規制基準に去年合格し、松江市の市長はことし2月、中国電力との安全協定に基づいて再稼働に同意することを明らかにしています。島根県の丸山知事は2日の県議会で「再稼働は現状ではやむをえないと考え、容認する」と述べ、再稼働に同意する考えを表明しました。
 理由については「産業や生活のために電力を維持する必要があり、現状では原発が一定の役割を担う必要がある」としています。
 これで、安全協定に基づき、地元の県と松江市がいずれも同意し、中国電力は今年度中に安全対策の工事を終えて、その後、再稼働させる方針です。
 全国で唯一、県庁所在地にある島根原発2号機は、原発から30キロ圏内の人口が45万人余りと全国の原発で3番目に多く、重大な事故が起きた場合、島根県は、一部の住民が広島県や岡山県などに広域避難するという避難計画を定めています。
 島根県は今後、中国電力に安全対策の徹底を求めるとともに、国に対しては重大な事故の際の避難の支援や、原発への武力攻撃が想定される場合の態勢整備などを要請したいとしています。

 松野官房長官「いかなる事情より安全性を最優先」

 松野官房長官は、午前の記者会見で「どの発電所も、いかなる事情より安全性を最優先し、原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合は、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の方針だ」と述べました。
 そのうえで「原子力は安定供給や経済効率性、それに脱炭素などの観点から重要な電源だ。特に、現下のエネルギーの供給制約や燃料価格の高騰が続く中で、安全性を大前提として最大限活用していくことが必要だ」と述べました。
 そして「島根原子力発電所2号機の再稼働にあたって、地元の理解が得られたことは重要だ。引き続き、中国電力には安全確保を最優先に対応していただきたい」と述べました。

 中国電力「安全性のさらなる向上を不断に追求していく」

 丸山知事が再稼働に同意する考えを表明したことについて、中国電力は「コメントは差し控えるが、当社としては、安全性のさらなる向上を不断に追求していくとともに今後も当社の取り組みを丁寧にお伝えして参ります」としています。

 島根原発2号機は福島第一原発と同じく「沸騰水型」

 島根原発2号機は、平成元年2月に営業運転を始めました。原子炉の型は、福島県にある東京電力の福島第一原発と同じく原子炉で熱した水から蒸気を発生させてその蒸気でタービンを回す「沸騰水型」で、出力は82万キロワットです。
 中国電力は島根原発2号機について、新たな規制基準に対応するため▽津波の被害を受けないよう高台に追加の非常用電源などを整備するほか、▽想定される地震の揺れの大きさにあわせた 施設の耐震性を強化することや▽重大な事故の際に原子炉の格納容器が破損するのを防ぐため、放射性物質の飛散を抑えながら容器内に充満した気体を外に放出する「フィルターベント」という装置を新設することなど、安全性を高めるための工事を今年度中に終える計画です。
 島根原発は、全国で唯一県庁所在地にあって、重大な事故が起きた場合に屋内退避や避難が必要になる原発から30キロ圏内の人口が45万人余りにのぼり、全国の原発で3番目に多くなっています。
 こうした中、県が実施する住民の避難訓練は、ことしは新型コロナウイルスの影響で中止になったほか、マイカーを使った避難訓練はこれまで実施されたことがないなど、避難計画の実効性を疑問視する声も上がっていて、島根県や松江市が避難の実効性をどう高めていくのかが問われることになります。

 「沸騰水型」原発 国内では

 国内には現在、廃炉が決まった原発を除くと、建設中を含め17原発36基の原発があり、このうち27基で、再稼働の前提となる審査が原子力規制委員会に申請されました。
 このうち、審査に合格した10基が再稼働していますが、いずれも島根原発とは異なる「加圧水型」の原発です。
 沸騰水型では、島根原発を含め、新潟県の柏崎刈羽原発の2基、茨城県の東海第二原発、宮城県の女川原発の合わせて5基が審査に合格しましたが、再稼働した原発はありません。
 このうち、柏崎刈羽原発6号機と7号機は去年、テロ対策上の重大な不備が相次いで明らかになり、規制委員会が東京電力の再発防止策を確認する検査が継続中で、再稼働のめどが立っていません。
 また、東海第二原発は、日本原子力発電による防潮堤などの安全対策工事が続いているほか、周辺の自治体の避難計画の策定が終わっておらず、再稼働の時期は見通せていません。
 一方、女川原発2号機はおととし、地元の宮城県が再稼働への同意を表明していて、東北電力が再来年2月に再稼働させる方針を示しています。
 そして、地元の島根県が再稼働に同意した島根原発2号機は、中国電力が今年度中に安全対策工事を終える予定で、その後、再稼働させる見通しです。

 専門家 “長期停止 運転員の力量維持が課題”

 島根原発について、かつての規制当局「原子力安全・保安院」で検査課長や審議官を務めた、原発の安全性に詳しい、政策研究大学院大学の根井寿規教授は「福島第一原発の事故後につくられた新しい規制基準に対応し、原子力規制委員会から許可も得られていて、安全対策工事も進んでいると理解している。ただ、原発の運転員は、停止から10年以上運転経験を積めていないほか、定年によるリタイアもあり、通常の運転に加えて緊急時の対応など、力量の維持が課題だ」と述べ、長期の運転停止による影響について指摘しました。
 また、根井教授は、2010年に島根原発1号機と2号機で機器の点検漏れが合わせて500件余り発覚し、中国電力のずさんな安全管理が問題になったことに触れ「当時、運転の現場を適切に管理できていなかった。点検漏れが生じないよう、現場も管理する側も、この10年でシンプルで分かりやすい仕組みに改善されたかどうかだ」と述べ、点検漏れなど安全管理上の課題解決が不可欠だと指摘しました。
 そのうえで「中国電力を含め電力会社は、原発の安全管理の一義的な責任が自分たちにあることを意識し、国内だけでなく、海外を含めた最新の情報や知識を取り入れながら、より安全を目指す姿勢で臨むことが常に重要だ」と述べました。

 知事の表明に松江市の人たちは

 原発が立地する松江市では市民から賛同と反対の双方の意見が聞かれました。
 このうち、50代の男性は「日本や島根県のために必要だという判断であれば、安全対策をとって再稼働すればいい。知事の判断を信頼するしかない」と話していました。
 島根原発がある松江市鹿島町出身の20代の女性は「安全性を高めながら再稼働して電力を供給してもらいたい。福島の原発事故のようなことが起きないようしっかり対策してもらって安心して島根で暮らしたい」と話していました。
 一方、松江市の20代の女性は「東北の大震災があってショックだったし、あの事故がもう一度起きるかと思うととても怖いので再稼働には反対だ」と話していました。
 また、松江市の40代の男性は「再稼働はよくない。世界的に原発ははやっていないし、なくても大丈夫ならないほうがいいと思う」と話していました。

 丸山知事「懸念のもとになっている事柄改善を」

 再稼働に同意を表明した島根県の丸山知事は県庁で記者会見し、重大事故に備えた避難計画の実効性を高めるとともに、政府に対して避難先での生活支援を要請していく考えを示しました。
 この中で丸山知事は「県民の懸念や不安がある中での再稼働容認の判断なので、懸念のもとになっている事柄を改善していかなければならない」と述べ、重大事故に備えた避難計画の実効性を高めるため、対象地域の家庭ごとに複数の避難経路の周知を強化することや、新型コロナウイルスの影響で規模を縮小している避難などの防災訓練を感染状況をみながら実施していく考えを示しました。
 そのうえで「避難が必要な状況になった場合には政府に対してプッシュ型の支援を求める」として、避難先での県民の生活支援を政府に要請していくと述べました。
 また他国からの原発への武力攻撃に備えて、政府に対して「原発への武力攻撃を行ってもその国の利益にならないと思わせるのが一番大事なディフェンスラインでありそれをきちんとしてもらいたい」と述べました。
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