[2017_11_10_01]<島根原発廃炉ルポ>廃棄物の行方を地元懸念 経済効果も未知数(河北新報2017年11月10日)
 
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<島根原発廃炉ルポ>廃棄物の行方を地元懸念 経済効果も未知数

 東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間は原則40年と定められ、今後、全国各地の原発で廃炉が増えるとみられる。電力各社は拡大する廃炉ビジネスの経済効果を強調するが、地元への波及は読めない上、定まらない放射性廃棄物の行方を懸念する見方は根強い。廃炉作業が7月に始まった中国電力島根原発1号機(松江市)を訪ね、廃炉の今と地域の思いを探った。(報道部・高橋鉄男)

 建屋内の燃料プールで、核燃料を回収する準備が進む。運転状況を示すボードには「運転終了」の紙が張られていた。
 「まだ作業員の被ばくを抑える放射能汚染マップを作製している段階。30年かかる廃炉作業が始まったばかりです」。中国電の担当者が説明する。
 島根1号機は1974年に運転開始した沸騰水型軽水炉(BWR)。2010年に発覚した点検不備で停止したままだった。原発事故後に規定された「40年ルール」を延長するには安全対策に膨大な費用が見込まれ、廃炉が決まった。
 廃炉作業の施設解体で生じる原子炉内の構造物や圧力容器などの「低レベル放射性廃棄物」は、各電力会社が埋設処分地を見つけなければならない。
 島根1号機の場合、廃炉作業で生じる廃棄物計18万トンのうち、低レベル放射性廃棄物は約6000トン。中国電は「他の電力会社と連携して廃棄したい」との方針を示す。ただ処分地探しは難航必至で、廃炉工程が遅れる事態も危惧される。
 原発から2.8キロに自宅があり、脱原発の市民運動に携わる農業安達進さん(64)は「廃炉は歓迎だが、核燃料や汚染廃棄物がいつまで留め置かれるのだろうか」と懸念する。
 計画によると、使用済み核燃料の搬出や除染、原子炉や建屋の解体は45年度までかかる見通し。費用は381億円を見込む。
 廃炉ビジネスは3兆円規模と言われる。大手メーカー以外、地元企業がどれほど関われるかは未知数だ。
 松江市によると、中国電が建設工事中の3号機の場合、島根県内の企業の工事受注額は全体の14%を占めた。一方、1号機の廃炉作業を巡り、地元経済界から受注を求める要望はない。
 市の担当者は「廃炉は汚染に関わる作業。企業も社員も不安を感じているのだろう」と推し量る。
 保母武彦島根大名誉教授は「原発も廃炉ビジネスも、自立した地域経済が育つものではない」と懐疑的な見方を示す。
[中国電力島根原発]松江市の日本海沿いに3基あり、国内で唯一、県庁所在地に立地する。1号機(46万キロワット)は7月に廃炉作業に着手し、2号機(82万キロワット)は再稼働に向けて国が審査中。3号機(137万3000キロワット)は建設工事中。原発事故を想定した避難計画策定が義務付けられている原発30キロ圏内に島根、鳥取両県の6市がある。

◎女川1号機 対応は未定

 福島第1原発事故後、原発の運転期間は原則40年となり、原子力規制委員会が認めれば1回に限り20年延長できる。東北では、東日本大震災後に停止が続く東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の全3基のうち、最も古い1号機が運転開始から33年たつが、東北電は対応を明らかにしていない。
 原田宏哉社長は「今は女川2号機の再稼働が優先事項。1号機は40年まで7年あり、今後、安全性やコストを総合的に判断する」との見解を示す。
 福島県が廃炉を求める東電福島第2原発1〜4号機も35〜30年が経過する。
 事故後、廃炉を決めたのは関西、中国、四国、九州の各電力と日本原子力発電の合わせて5原発6基。いずれも出力が比較的小さく、運転期間延長のための膨大な安全対策費の投入を見送ったとみられる。

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