[2022_02_24_03]川内原発2号機(九州電力)定期検査入り 今回の定検で「特別点検」を実施する 20年運転延長申請の準備の一環 川内原発延長運転に反対しよう 老朽化に伴う欠陥を見逃せば大事故に繋がりかねない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2022年2月24日)
 
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川内原発2号機(九州電力)定期検査入り 今回の定検で「特別点検」を実施する 20年運転延長申請の準備の一環 川内原発延長運転に反対しよう 老朽化に伴う欠陥を見逃せば大事故に繋がりかねない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 川内原発は1号機が2024年に、2号機が2025年に40年の運転期限を迎える。
 今回の定期検査では、「特別点検」を実施するという。
 20年の運転延長を申請するためには、老朽化した原発の健全性評価をしなければならない。これを「特別点検」と呼んでいる。
 川内原発2号機は、原則40年の運転期限を3年後の2025年11月に迎える。原子力規制委員会に申請し、審査を経て最長20年運転を延長することができる。
 その運転延長の申請に必要な「特別点検」を開始した。
 「特別点検」はデータの確認だけで半年以上かかるという。
 なお、1号機では去年10月から「特別点検」が行われている。

1.「特別点検」とは
 対象設備と対象部位、対象劣化事象、点検方法

 原子炉圧力容器についての対象部位は、母材及び溶接部については照射脆化(注1)を見る。
 点検方法は超音波探傷試験(UT)(注2)による欠陥有無の確認を行う。
 1次冷却材のノズルコーナー部の表面では、疲労の蓄積を調べるため、表面検査や渦流探傷試験(注3)による割れの有無の確認を行う。
 炉内計装筒については、その全数について応力腐食割れに着目し、テレビカメラによる目視試験で溶接部の割れの有無の確認と計装管内表面検査と渦流探傷試験による欠陥の有無の確認を行う。

 原子炉格納容器についての点検項目と方法としては、原子炉格納容器鋼板について点検を行うが、接近できる部分についての範囲に限られ、腐食について目視試験による塗膜状態(塗装している表面の状態)の確認を行う。
 また、格納容器コンクリート部の強度と遮蔽性能については、コアサンプルを取得し、強度や遮へい能力、中性化、塩分浸透及びアルカリ骨材反応の確認を行う。
 建屋のコンクリート構造物については、全体を検査するのではなく、「安全機能を有する」ところについてのみ検査対象となる。
 具体的には系統と機器を支持するコンクリート構造物、重大事故等対処設備に属するコンクリート構造物、機器を支持するコンクリート構造物について検査を行う。
 その検査内容は、建屋の強度と遮蔽能力の低下度合いについて着目し、コアサンプル等による強度、遮蔽能力、中性化、塩分浸透及びアルカリ骨材反応の確認を行うとされる。

2.「特別点検」の問題点

 検査対象となっているところは、建設から廃炉まで、交換がきかないところに着目していることはわかる。
 逆に、これ以外の部位は交換可能と考えているのだろう。
 しかし、実際には交換できないところも多々ある。特に電源ケーブルや計装ケーブル類はほぼ不可能だ。

 さらに、構造物に隠れたりコンクリートに覆われた格納容器、放射化が激しい原子炉格納容器まわりの機器類、圧力容器についても検査が出来ないところもあるから、「特別点検」で運転延長のための十分な検査が出来るとは思えない。

 圧力容器についても遠隔操作にて点検を実施する必要があり、視認性は悪い。
 検査体制についても問題がある。
 2020年4月1日より新検査制度が施行されている。従来、規制機関が行っていた基準・許認可への適合性の確認は、すべて使用前事業者検査として、電気事業者が実施することとなっている。
 規制委は電気事業者の実施状況を監視・評価する立場になる。安全機能や性能に対する裕度が低下したり逸脱した場合は追加規制措置を実施することになるが、それだけのスキルが規制委にあるかどうかが問題だ。

3.川内原発延長運転に反対しよう

 1号機も2号機も、運転延長申請は未だ行われていない。
 2021年5月5日付けの南日本新聞によると、電話世論調査で原則40年の運転期限の延長に反対と答えたのは59.7%、賛成35.5%と大きく差がついたことを報じた。
 1年前の前回調査で反対53.8%、賛成38.0%だったことから、差が開いている。反対の理由は「できるだけ早く再生可能エネルギーに移行すべき」が47.9%で最多だったという。
https://373news.com/_news/storyid/136611/

 老朽化した原発の運転延長はただでさえリスクの大きい原発を、さらに危険なものにしてしまう。
 現在のところ、40年を超えて延長運転が許可された原発は美浜3、高浜1、2、東海第二の4基。いずれも再稼働はしていない。

 米国では8割以上の原発が60年運転の認可を得ているが、さらに2機の原発で20年追加し80年運転の許可もNRCから出されている。
 原発を推進するにしても、新増設は簡単には進められないと考える原子力産業界は、日本でもさらなる延長運転を認めるべきとの意見が出ており、これが「カーボンニュートラル実現に向け不可欠」といった主張になっている。(東京新聞「40年ルール」なし崩し 再稼働へ突き進む関西電力の老朽原発 福井県知事が同意へ」2021年4月26日)

 東電福島第一原発は、1号機が運転開始40年目を迎える年にメルトダウンをした。
 これは偶然ではない。
 40年、60年と老朽化していく原発の致命的欠陥を事前に見つけ、事故を起こさないことは、言うほど簡単ではないし、失敗は許されない。

 圧力容器の蓋が破壊寸前まで減肉していても気づかなかったケース、金属表面のクラッドがはがれて配管を損傷させるケースなど、検査をしていても気づかない欠陥が増えてくる。

 また、原理的に交換不可能なケーブル類や機器類をそのまま使い続けるリスクは評価しようもない。
 こうした老朽化に伴う欠陥を見逃せば、大事故に繋がりかねない。
 40年を超える原発はルール通り廃炉にすべきだ。

※(注1)「照射脆化」
「放射線の照射を受けて金属材料が脆化する(もろくなる)現象をいう。」(原子力百科事典ATOMICAより)
※(注2)「超音波探傷試験(Ultrasonic Testing)」
 超音波を試験体内部に伝播させて、きずから反射した超音波の強さと反射する範囲を元に、きずの大きさや形状を推定することによって、試験体の評価を行うものです。適用対象は鉄骨、橋梁などの鋼構造物の溶接部や部材に適用します。(日本エックス線検査株式会社HPより)
※(注3)「渦流探傷試験」
 渦流探傷は、非破壊検査手法の一種です。
 交流電流を流したコイルを検査体(金属)表面に近づけたときに、検査体表面に生じる渦電流の大きさが欠陥の有無や材質の不均一性といった要因によって変化することを利用し、対象にダメージを与えずに検査を行います。 (ローマン・ジャパン株式会社HPより)
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