[2021_02_04_01]使用済み核燃料があふれる(原発の運転ができなくなる)  電気事業連合会が『関西電力救済のため』にむつ市RFSへ「原発を持つ各社の共同利用」を提起 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年2月4日)
 
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使用済み核燃料があふれる(原発の運転ができなくなる)  電気事業連合会が『関西電力救済のため』にむつ市RFSへ「原発を持つ各社の共同利用」を提起 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

項目紹介

1.はじめに
2.むつ市RFSと東京電力との関係
3.むつ市RFSの共同利用計画
4.電事連が関西電力救済のため「電力共同使用」を提起
5.関西電力の現状
6.関西電力の使用済み核燃料プールの現状

1.はじめに

 2020年11月11日、東京電力と日本原子力発電(日本原電)が合弁で設立したリサイクル燃料貯蔵株式会社(RFS)が青森県むつ市に建設中の使用済み核燃料中間貯蔵施設「リサイクル燃料備蓄センター」について、規制委員会は新規制基準適合性審査の審査書を決定した。
 これで中間貯蔵施設の運用が開始できる手続きが一つ進んだ。
 現在は設置工事認可申請(安全対策工事の検査)がおこなわれており、使用前検査が終われば運用可能になる。
 この施設は東日本大震災前の2010年に、当時の原子炉等規制法に基づき事業許可と設置工事認可を取得し建設工事を開始し、2013年8月に最初の建屋が完成した。
 しかしその後の2013年12月に、東日本大震災を受けて原子炉等規制法が改正され、「新規制基準」が施行され、これに適合しなければ稼働できないことになった。
 2014年1月にRFSは、原子力規制委員会に対して「事業変更許可申請」すなわち新規制基準適合性審査の申請を行った。
 6年10ヶ月かけて審査が行われていた。
 主な論点は、新しく採用された地震・津波評価で施設に影響があるかだった。

2.むつ市RFSと東京電力との関係

 RFSを設立したのは東京電力と日本原電。東京電力は「2018年9月まで」に、柏崎刈羽原発7号機からRFSに向けて使用済み核燃料70体の輸送を計画し、発表したことがある。
 ところが同年9月19日に「RFSは現時点で事業変更許可等の審査中であり、新たな輸送時期につきましては、RFSの検討状況を踏まえて、調整いたします。」として撤回した。
 その後、規制基準適合性審査が進み、2020年11月に終わった段階でも、そして今も「輸送計画は未定」としている。
 その代わり柏崎刈羽原発の再稼働準備として、使用済み核燃料を6、7号機から号機間移送をおこなっている。どうやらRFSへの輸送に対しては、どこからかストップがかかっていたらしい。
 その謎が解けるのは2020年12月11日だった。

3.むつ市RFSの共同利用計画

 『梶山弘志経済産業相は11日の閣議後記者会見で、電力会社で組織する電気事業連合会(電事連)と17日に面会すると表明した。青森県むつ市にある使用済み核燃料の中間貯蔵施設を、原発を持つ各社が共同利用する電事連の案について報告を受けるとみられる。』   (日経新聞12月11日)
 この前日の日経新聞では、『核燃料中間貯蔵で共用案 電力業界団体、関電の再稼働支援』と題する記事が掲載されている。
 要旨は以下の通り。
 『電気事業連合会は東京電力と日本原電が出資して作ったRFSの貯蔵センターについて、原発を持つ電力各社で共同利用する案を検討している。
 これは主に関西電力救済の目的だ。老朽原発の美浜3号機などの再稼働をめぐり福井県から中間貯蔵施設の県外候補地を示すよう求められた関西電力を救済する狙いがある。
 関西電力と福井県の間では、中間貯蔵施設の県外候補地を2020年の内に示すよう県が求めている。しかし打診したところはいずれも拒否され、年内に示すことは出来なかった関西電力は、このままだと再稼働の同意を得られない。そこで白羽の矢を立てたのがむつ市のRFSだった。』
 水面下で数年前から、共同使用の動きはあった。2018年に共同通信がスクープしたこともあり、むつ市は「不快感」を示してきた。
 電気事業連合会の清水成信副会長(中部電力副社長)が12月18日に、青森県とむつ市を訪れ「共同利用の検討に着手する方針」を説明した。
 宮下宗一郎むつ市長は「むつ市は核のごみ捨て場ではない。全国の燃料を引き受ける必然性はない」「使用済み核燃料が(むつ市に)一斉に集まり、出口はあるのか。核のごみ捨て場という印象を全国民に持たれてしまう」と反発。
 三村申吾青森県知事は「県にとって全くの新しい話。聞き置くだけにする」と回答を保留。地元への説明より報道が先行したことに対して「混乱や不安が生じ誠に遺憾。立地地域との信頼が重要だと強く認識してほしい」とした。(河北新報12月19日)

4.電事連が関西電力救済のため「電力共同使用」を提起

 電気事業連合会は関西電力救済のため、東京電力と日本原電が設立したRFSに、関西電力の使用済み核燃料も貯蔵する計画を進めることにした。
 しかし関西電力だけを加えるとあまりにもあからさまなので、「電力共同使用」という構造をでっちあげた。
 再稼働していない原発は使用済み核燃料プールが逼迫するはずはない。再稼働した原発のうち、九州と四国電力のプールには未だ余力がある。
 逼迫するのは関西電力だけである。(九州電力の川内原発も6年後に逼迫するが、敷地内に使用済み核燃料の乾式貯蔵施設を作る計画がある。だが地元同意はない。)

5.関西電力の現状

 関西電力は2019年に発覚した高浜町の元助役による買収問題に関連して、地元の信用も失墜した。そのこともあり高浜原発1、2号機と美浜3号機の40年超の老朽原発再稼働については、県との間で「使用済み核燃料の搬出先決定」つまり中間貯蔵施設の県外立地が不可欠な約束になっている。
 2016年に関西電力は県とのあいだで使用済み核燃料を原発から搬出する約束をし、その立地点を2018年中に決定することを約束した。
 しかし何処も受け入れるところはなく、2020年末まで期限を延ばしても予定地を示すことは出来なかった。
 杉本福井県知事は「中間貯蔵施設の計画地点の提示がないので議論の入り口に立たない」と明言したという。(福井新聞12月28日)
 この間に関西電力は、RFSへの共同出資案などを模索していたようだが、最終的には国と電事連を通じて青森県とむつ市に使用済み核燃料の受け入れを求めている。
 関西電力は使用済み核燃料中間貯蔵について次のような方針を明らかにしている。
 「使用済燃料貯蔵対策への対応状況について・2020年7月2日」より
 『福井県外における中間貯蔵について、理解活動、可能性調査等を計画的に進め、2020年頃に計画地点を確定し、2030年頃に2千トンU規模で操業開始する。2020年頃に、計画地点確定。2030年頃に、操業開始(2千トンU規模)計画遂行にあたっては使用済燃料対策の重要性に鑑み、迅速かつ的確に対応し、できる限り前倒しを図る。』
 結局これをむつ市に押しつけようとしたのである。

6.関西電力の使用済み核燃料プールの現状

 原発を再稼働している関西電力、九州電力、四国電力については、運転を続ければ使用済み核燃料が増え続けるが、その中でも関西電力のプールは5年後から逼迫し運転不能となる可能性があるとのデータを電事連が公表している。
 「使用済燃料貯蔵対策への対応状況(2020年7月2日)によると2020年3月末時点で関西電力美浜(稼働可能なのは3号機のみ)については1炉心分70トン、取替1回分20トン、管理容量(*)760トン、使用済燃料貯蔵量470トン、試算値として4サイクル(約5年)後の管理容量620トン、使用済燃料貯蔵量550トン、貯蔵割合は89%。稼働している炉が少ないので比較的余力がある。
 同じく高浜原発は4基の稼働が可能として、1炉心分290トン、取替1回分100トン、管理容量1,730トン、使用済燃料貯蔵量1,290トン、試算値として4サイクル(約5年)後の管理容量1,730トン、使用済燃料貯蔵量1,690トン、貯蔵割合は98%。この後運転は出来なくなる。
 大飯原発は2基が稼働可能として、1炉心分180トン、取替1回分60トン、管理容量2,100トン、使用済燃料貯蔵量1,710トン、試算値として4サイクル(約5年)後の管理容量2,100トン、使用済燃料貯蔵量1,950トン、貯蔵割合は93%。こちらもこの後運転は出来なくなる。
(*)管理容量は、原則として「貯蔵容量から1炉心+1取替分を差し引いた容量」。
 (既出:月刊「たんぽぽニュース」2021年1月号)
KEY_WORD:中間貯蔵施設_福井県外_:MUTSU_RECYLCLE_:HIGASHINIHON_:KASHIWA_:MIHAMA_:SENDAI_:OOI_:TAKAHAMA_: