[2023_08_19_06]原発を積極活用したい政府…「原発マネー」に頼らざるを得ない自治体は山口・上関町だけではない(東京新聞2023年8月19日)
 
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原発を積極活用したい政府…「原発マネー」に頼らざるを得ない自治体は山口・上関町だけではない

 2023年8月19日 06時00分
 中国電力の計画発表からわずか16日後、山口県上関町の西哲夫町長は中国、関西の両電力による使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設に向けた調査を容認した。素早い決断には、国の手厚い交付金や設備整備に伴う経済効果への町の期待がにじむ。原発の積極活用を目指す政府方針の下、自治体が「原発マネー」に依存する構図も繰り返されようとしている。

 使用済み核燃料 原発で使った核燃料は、敷地内の使用済み核燃料プールに保管される。日本政府は、使用済み核燃料を化学処理(再処理)して加工したプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を原発で再利用する核燃料サイクル政策に取り組むが、再処理工場(青森県六ケ所村)が完成延期を繰り返し実現の見通しが立っていない。使用済み核燃料は各原発のプールにたまり続け、2023年3月時点で原発を保有する電力10社のプール容量の74%が埋まっている。プールが満杯になると、核燃料の交換ができず原発は動かせなくなる。

 ◆1億4000万円を毎年交付

 中国電が町に新設を計画する上関原発は、2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、建設が止まったまま。地元経済の停滞に歯止めをかけるため、町が中国電に求めた新たな地域振興策への答えが、中間貯蔵施設だ。
 中間貯蔵施設を巡る国の交付金は、事前調査に入った時点から毎年1億4000万円が自治体に渡る。町の本年度の一般会計当初予算は約32億円で、予算の4%ほどが交付金で上乗せされる計算だ。この交付金は、知事が建設に同意するまで何年間でも受けられる。
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の選定でも、最初の段階の文献調査に入るだけで、自治体に最大20億円が交付される。今月16日には長崎県対馬市議会特別委が、文献調査の受け入れを求める建設団体からの請願を採択。北海道の寿都町、神恵内村は20年に文献調査に入り、終盤を迎える。
 ただ、北海道の鈴木直道知事は、両町村が次の段階の概要調査に進むことに反対の姿勢。対馬市では比田勝尚喜市長が20年の市長選で、処分場を誘致しない趣旨の発言をしている。上関町でも18日の臨時議会前に、反対する住民らが町役場に詰めかけ、登庁した西町長の車を囲むなど、原発マネー頼みへの反発は根強い。(小野沢健太)
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