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[2023_02_22_12]政府GX基本方針 再処理「完工」掲げるのみ 識者「サイクル具体策ない」 次世代炉 ハードル高く 膨大コスト・再処理困難(東奥日報2023年2月22日) | ![]() |
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脱炭素社会に向け、政府が閣議決定したグリーントランスフォーメーション(GX)実現の基本方針。「政策の大転換」と騒がれた原発に比べ、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルに目新しい内容はない。日本原燃・六ヶ所再処理工場(六ヶ所村)の度重なる延期も響き、「完工実現」を掲げるのみだ。併せて示した原子力政策の行動指針案も同様で、識者は「サイクル推進の具体策は何もない」と指摘する。
(加藤景子) 基本方針は、原発の60年超運転、次世代型原発への建て替えなど政治判断により踏み込んだ。一方のサイクルは、記載が「再処理工場の竣工目標実現」などにとどまる。行動指針案も、原燃に安全審査を確実に進めるよう促し、国が体制確認、指導を行うと記したものの、基本的には従来取り組んできた内容の範囲内といえる。 再処理工場は26回の完工延期を経て、いまは「2024年度上期のできるだけ早期」の完工を目指す。フル稼働で取り出されるプルトニウム量は年間約6・6トン。MOX(混合酸化物) 燃料に加工した後、一般の原発で燃やすプルサーマルで利用するが、国内でこれまでに再稼働したプルサーマル原発は4基で、消費量は年間2トン前後しかない。 「この差のプルトニウムをどうするのか。サイクル推進を掲げるなら具体的な使い道を説明すべきだ」。国の審議会委員を務める国際大の橘川武郎教授(エネルギー産業論)は「原子力政策自体がお粗末だが、特にサイクルは、(MOX燃料で発電する)高速増殖原型炉もんじゅの廃止以降、政策の体をなしていない」と不満を述べる。今回のGX基本方針について「国はある意味『原発回帰』という目的は達成した」と話す一方、審議会では、再処理を巡る議論はほぼなかった一と振り返る。 国の原子力委員会も、長期的な方向性をまとめた原子力利用の基本的考え方を改定。基本方針をなぞるように、原発は積極的活用に関する記述が目立った一方、再処理はプルサーマルの「着実な実施」に必要な量だけ認める方針を堅持し、回収量と消費量のバランスを考慮するよう求めた。既に日本は国内外に40トン超のプルトニウムを保有している。プルサーマルが進まなければ、再処理工場の稼働に制約がかかる可能性は高い。 橘川氏は「再処理、放射性廃棄物の最終処分などのバックエンド問題が、原子力政策にとって重い足かせになっていることは間違いない。解決しないのならば、どこかで原子力利用をやめる議論をしなければならない」とし、その焦点が六ヶ所にあると指摘した。 新たな政府方針は、より安全性が高い次世代型原発の建て替えも盛り込んだ。開発・建設の候補は五つ。中には、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル路線と整合が取りにくい原発もある。実現には課題があり、膨大なコストも想定される。 実用化の最有力と日されるのが、従来の原発を改良した革新軽水炉だ。事故で溶け落ちた燃料を受け止める設備を備え、格納容器を覆う壁の厚さを2倍とするなどの安全対策を組み込む。主に西日本で導入されている加圧水型の原発をベースに、原子力メーカーと大手電力4社の共同開発も始まった。 かつて高速増殖炉用燃料の研究に携わった日本科学者会議の岩井孝・原子力問題研究委員長は、既に欧州で採用されている安全対策が多いとし、原発の新規建設を進めるフランスの事例から、建設費はこれまでより数千億円高い1基1兆円超に上ると推測する。「仮に安全性が高まっても、電気を生み出す装置として経済性が他の方法より劣るのでは」と語る。 ブルトニウムを含むMOX(混合酸化物)燃料を燃やす高速炉は、サイクル路線と最も親和性が高いーとし「プルトニウム利用を考える以上、国の本命は高速炉」と述べる。一方、高速炉は安全装置が付けにくく、またコストが膨大にかかる可能性もあるという。 冷却剤にヘリウムガスを使う高温ガス炉は、燃料の再処理が困難とされる。粒状の燃料は何重もの層で覆われ、再処理するためにはこの被覆を剥がす技術が必要になる。 国の行動指針案では、使い終わったMOX燃料の再処理技術を2030年代後半をめどに確立し、処理・処分の方策も検討するとした。岩井氏は「MOX燃料から取り出したプルトニウムは質が低く、資源的にも経済的にも再処理のメリットはない」と言い切る。 政府方針は矛盾しているーと国際大の橋川武郎教授も指摘する。原発の60年超運転と次世代炉建て替えを同時に明記したことに「運転延長なら数百億円程度で済む。電力会社が巨額の費用をかけて建て替えることは考えにくい。今回の方針で次世代炉の建設は遠のいた」と主張する。 いずれの原発も安全規制の議論は未着手。地元住民の理解を得るプロセスも必要で、実現までの期間は見通せない。 (加藤景子) |
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