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[2024_10_22_05]第7次エネルギー基本計画のここが問題 (上) (2回の連載) 原子力産業の利活用拡大路線を具体化 福島第一原発事故の教訓は忘れ去られている 経産省は原発依存を「可能な限り低減」させる具体的な計画を策定するべきなのにしなかった 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2024年10月22日) | ![]() |
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参照元
04:00 1.実現性のない電力供給計画 ◎ 第6次エネルギー基本計画(エネ基)は2021年に策定された。 内容は2030年に再生可能エネルギー36〜38%、原子力20〜22%、火力40%(天然ガス20%、石炭19%、水素・アンモニア1%程度)としている。 今から5年余り先の見通しだが、これが実現できる可能性は全くない。 ◎ 原発が20〜22%占めるためには、概ね27〜30基程度が稼働していなければならない。その出力は2700万kw程度。 しかし現在再稼働しているのは12基、約1100万kw。 新規制基準適合性審査を通過した原発全てが動いたとしてもプラス5基で17基。1700万kw余り、全電力の15%程度に過ぎない。 あと5年で再稼働できる原発は他に存在しないから、現段階で、目標値はもはや成り立たない目標であることは明白だ。 ◎ 「第7次エネ基」では、これがどのような数値になるのか未だ不明だが、原子力の利活用という方針に大転換すると見られるので、2030年ではなく2035年に原発が36〜38%占めるという計画になるのだと思われる。 しかし結局これも実現することはない。 仮に36基とした場合、新規制基準適合性審査を通過した17基に加えて19基ほど必要になるが、現在審査中のものは7基、合計で2300万kw程度だ。建設中の大間と島根3号が稼働しても26基、2500万kw程度だが、それでも圧倒的に足りない。 ◎ 加えて再稼働原発は全て60年超の老朽炉になる(*)から、これが進んだとしても新増設をしない限りいつかは脱原発になる。経産省や原子力ムラにとって絶対に避けねばならない事態だ。 *例えば高浜1号は10月16日に50年の「長期管理計画」が規制委により認可されたが、GX法により最大限延長したとしても2050年までには廃炉になる。これは高浜2、3、美浜3、川内1も同じだ。 2.経産省は原発依存を「可能な限り低減」させる具体的な計画を策定するべきなのにしなかった ◎ 政府は福島第一原発事故の教訓から、2014年の第4次エネ基から現在の第6次エネ基まで原発依存を「可能な限り低減」するとしてきた。 このような表現の下でも原子力は常に推進されてきた。 特に核燃料サイクル政策は六ヶ所再処理工場の建設が大幅に遅れ、実現可能性さえ危ぶまれているのに一切見直しの気配すらない。 原発の利用を低減するのならば再処理は最初に中止するべきものだ。 しかし核燃料サイクル事業は中止されなかった。 原子力政策は見せかけの「原発依存の低減」のもとで「推進」されてきたのである。 ◎ その中でも特徴的なのは一貫して原発を推進してきた経産省だ。 責任官庁として「可能な限り低減」させる具体的な計画を策定するべきなのにしなかった。 むしろ計画的かつ段階的に原発を復活させ推進してきた。 これに呼応する原子力規制委も、40年の運転期間制限を炉規法で定めていながら、「極めて例外的」(当時の田中俊一委員長)といいつつ20年延長を認める規定のもとで60年運転を既成事実化した。 さらに2023年、脱炭素電源法(GX電源法)で運転期間の規定を規制委所管の原子炉等規制法から経産省所管の電気事業法に移したことで、ついに微かな歯止めさえなくなり、全ての再稼働原発が事実上60年運転許可を得ることになる法律改訂が強行された。 ◎ この「GX」が、そもそも欺瞞と詐欺の温床である。 GX(グリーン・トランスフォーメーション*)という名目の「脱炭素」方針を利用して、発電時に二酸化炭素を出さないという点だけを取り上げて「ゼロエミッション電源*」などと原発を規定している。 ゼロエミッションとは「廃棄物を出さない」という意味だが、放射性廃棄物を大量に発生させる原発に使っているということだけで、その意味のすり替えぶりが分かる。 ◎ カーボンニュートラルという言葉も飛び交うが、化石燃料を燃やすタイミングを殊更問題視するために使っている用語であり、原発が極めて大きな環境汚染源であることを見えなくさせる言葉遣いだ。 本気で達成するための議論ではなく、原子力推進体制を再構築することを目的に「あらゆる政策を動員する」ために用いられるのが「脱炭素」だ。 *グリーントランスフォーメーション(GX)とは、化石燃料中心の産業や社会構造を、クリーンエネルギー中心の構造に転換していく取り組みのこと。地球温暖化による環境課題を解決し、持続可能な社会を作ることを目的とする、という名目だ。 ◎ しかし原子力開発の暗部を知らなかった時代に「無限に安定的に供給でき廃棄物も少ないバラ色のエネルギー」として原子力を想像していた時代ならばいざ知らず、度重なる原発事故と開発による放射能汚染の現実を知った今、「クリーンエネルギー」と言った時点で、完全に破綻した理念である。 *原発が二酸化炭素を出さないことなどあり得ない。 核分裂時に出ないことを殊更強調しているだけだ。ライフサイクルにおける原発の排出原単位は極めて大きいと考えられ、キロワット当たり180〜288グラムという研究もある。なお国は19〜20グラムとしている。 LNG火力は470グラムで、原発との差は2倍程度というのが実相。 とりわけ3分の2の原発が止まっている日本の場合、それらは単に二酸化炭素を出すだけの存在になっている。 3.徹底した省エネルギーこそが最大の政策だ ◎ 「第7次エネ基」において、政府・経産省は、原発の再稼働と新増設を含むGX法の完全反映を目指す。 「エネ基」を議論している資源エネルギー庁の「基本政策分科会」では原発推進意見のオンパレード。その前提としての電力需要増の議論が席巻している。 これに対して実行可能で最も確実な政策は、徹底した省エネ・節電をおこなうことである。 ◎ 第6次エネ基では年間の電力消費量について2050年では30〜50%も増えるのに2030年までは10%以上減るという、呆れるほど矛盾した見通しを出している。 電気自動車、データストレージ(データセンター)、AI(人工知能の活用)など、新たな電力多消費産業の開発により電力消費量は増加するというのが政府の基本的認識のはずだが、2030年の再生可能エネルギー電源比率および原子力発電比率を極めて高く設定するトリックとして、電力消費量の分母を小さくする偽装を用いたためだ。 ◎ 「第7次エネ基」では、もはや「偽装」ではなく現実問題として2035年および50年の「電力消費量見通し」を引き下げなければ、いわゆる「目標値」を達成できないことになる。 分母を減らすということは消費電力量の大幅な削減、すなわち省エネしか方法はない。 ◎ 再エネの導入規模も大幅な上方修正が迫られることになる。 この場合、大量の再エネを安定供給するため、2つの施策が必須となる。 1つは広域連系の拡大、もう一つは電力貯蔵システムの構築だ。 また、将来は再エネの拡大しか道はないことは明らかだ。 再エネはどうしても出力変動を免れない。そのため貯蔵システムの構築以外にも電力のバックアップシステムが必須となる。 まだ火力発電の役割があるとしたら、この点である。 また、バックアップを従来の蓄電池に依存するのは不安定要因がつきまとう。価格の面や供給力にはまだ限界があり、さらにレアメタル資源の偏在、国際情勢に大きく左右されること、今後蓄電池市場が高騰することも考慮しなければならない。 ◎ 当面は火力発電によるバックアップが不可欠になるのである。 その火力はガス火力発電。 エネルギー効率を85%以上に高め、温排水や二酸化炭素排出を極限まで減少させる技術が必須になる。 廃熱も回収し使い尽くすシステムだ。この技術は世界中で必須になる。 日本が海外に売り込める技術になるだろう。 (2024年10月18日たんぽぽ舎発行「金曜ビラ」494号より) |
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KEY_WORD:エネルギ政策_:FUKU1_:MIHAMA_:ROKKA_:TAKAHAMA_:再生エネルギー_:廃炉_: | ![]() |
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