![]() |
![]() |
[2024_12_16_01]原発の恩恵で地方交付税がない佐賀県玄海町。共存意識が強い町でも「核のごみ」受け入れには強い抵抗感(南日本新聞2024年12月16日) | ![]() |
![]() |
参照元
16:00 原発の使用済み燃料から生まれる高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査が、九州電力玄海原発のある佐賀県玄海町で6月に始まって半年が過ぎた。最終処分の国民的議論を促す「呼び水」(脇山伸太郎町長)として全国3番目に受け入れたが、その後新たな市町村は現れていない。半永久的な埋設につながる判断に向けた社会的な合意形成は道半ばだ。11月下旬、地方新聞エネルギー研究会の一員として現地を訪ねた。 玄海原発では、茶色の鉄骨に囲われた海抜24メートルの一角をショベルカーが掘り下げていた。2027年度からの運用を目指す、使用済み燃料の乾式貯蔵施設の建設現場。搬出先である日本原燃の再処理工場(青森県)が完成延期を繰り返す中で、構内の貯蔵能力に余裕を持たせるためだ。 17メートル下の岩盤に建てる。完成すれば、使用済み燃料が構内で満杯になるまでのタイムリミットは10年延びて38年となる。満杯になると原発は稼働できない。福山浩之次長は「核燃料サイクルが回らないと運転できず、(再処理工場の)完成が重要だ」と説く。 ■重い決断 使用済み燃料を再利用する核燃料サイクルは国が堅持する政策だ。この過程で出るのが核のごみ。処分地選定は市町村の応募や国の申し入れに対する地元の受諾で始まる。建設前に文献調査から始まる三つの調査があり、いずれも終了後に地元首長や知事が反対すれば手続きは止まる。これまで意欲を示したのは玄海町を含め3町村にとどまる。 玄海町は原発立地自治体として初のケースだ。議会が4月、文献調査受け入れを求める請願3件を賛成多数で採択したのがきっかけ。使用済み燃料の満杯に伴う玄海原発の停止や核燃料サイクルの行き詰まりが経済停滞を招くとの懸念が背景にある。 採択後に国がすかさず要請し、脇山町長は5月に「重い決断」と受け入れを表明した。選挙がある立場で長期にわたる調査に手を挙げる難しさを打ち明け、「自分も今後、決断に責任を果たせるかどうか。国が積極的にお願いする形の方がいい」と語る。知事は処分場誘致に反対している。 請願に賛成した岩下孝嗣議員=原子力対策特別委員長=は表明以降、新潟、福井両県の立地市町と東京都中野区の計5自治体の議員らが意見交換に訪れたと説明する。だが、手を挙げる意欲は弱かったとし、「(国などは)議論をもっと広げてほしい」と訴える。 ■科学的特性 調査の実務を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)や国などは、昨夏から今年8月末までに全国137自治体を訪ね、理解促進を図る。国の科学的特性マップで適地とされた地域が中心という。 NUMOは機運が高まらない現状を認め、「全国で考える問題。あらゆる取り組みをする」と強調。ほぼ全域に鉱物資源があるとされ、適地と言いがたい玄海町で文献調査を行うことには「詳しく調べないと分からない点があり、調査の価値はある」とする。 最終処分制度に詳しい東京電機大の寿楽浩太教授は「なぜここか、なぜ今かといった問題が解決されないまま、地域も説明責任を求められる状態。現世代で地層に処分する社会的合意は必ずしも十分でない」と指摘する。複数の候補地から絞る方法なども確立されていないとし、「科学的に、より向いていない方を選ぶことは避けないといけない」とくぎを刺した。 ◆玄海町長「新たな候補地出てほしい」 玄海町の脇山伸太郎町長はインタビューに応じ、最終処分への国民的議論を期待した。文献調査中に新たな候補市町村が出てほしいとし、「原発立地自治体だけで(処分場まで)完結するのはどうかと思っている」との認識を示した。 町議会で過去、文献調査への見解を求められるたびに難色を示してきた。住民からの請願はいずれ出てくる想定だったといい、採択した議会判断を尊重して「私も決断まで間を置くべきでないと考えた」。住民説明会などを開かなかった理由でもあるとした。 調査開始後も処分場に否定的かと問われると、明言を避けつつ、町の面積の狭さなどから「考え方自体はあまり変わっていない」。町議会で請願を審議する前に、県知事が誘致反対の立場を表明したことには「議会も私もいい気はしなかった」と振り返った。 調査に伴い国から受け取ることができる20億円の交付金は財政的な余裕から「対応を決めていない」と強調。「受けなければ、次に手を挙げる所が出にくくなることを懸念している」とも述べた。文献調査を終えた際に次に進む可否判断については「コメントできない」とした。 国が原発を最大限活用する方針には、電力需要の増加から「新規原発が必要」と歓迎した。ただ、玄海原発での建て替えには時間がかかるとし、「川内原発3号機が近いと想像をしている」との見方を示した。 ◆予算の6割は原発関連で賄う 人口約5000人の玄海町は原発関連の交付金や税で予算の約6割(2024年度当初)を賄う地方交付税の不交付団体だ。町議は文献調査を求める請願への賛否にかかわらず、原発自体に反対する住民の声は特に聞かないとする。原発との共存意識が強い半面、最終処分場の地元建設には抵抗感がのぞく。 処分場は地下だけで広さ6〜10平方キロに及ぶ施設。最大で、町の3分の1に迫る広さを要する。請願に賛成した井上正旦議員=現議長=は「町民は処分場の上に住みたくないと、はっきり言う」と話す。建設できるのは海底くらいだとし、「立地自治体が手を挙げないと全国から関心を持ってもらえない」と世論喚起の目的に理解を求める。 請願に反対した前川和民議員は原発反対の立場ではないが、本会議上程から約2週間での採決を「住民理解は進まないままで早急すぎた」と振り返る。近隣自治体との関係悪化、処分場建設による観光や1次産業への影響も懸念。次の概要調査に進んでほしくないと願い、「住民投票で判断するべきだ」と唱える。 |
![]() |
![]() |
KEY_WORD:玄海町-最終処分場-文献調査-請願_:GENKAI_:ROKKA_:SENDAI_: | ![]() |
![]() |