[2020_09_11_07]大間原発 運転開始2年延期 電源開発「28年度」見込む 「これを最後の延期に」「本当に2年後着工か」地元首長ら(東奥日報2020年9月11日)
 
 電源開発(Jパワー)は10日、大間町に建設中の大間原発について、今年後半としていた安全強化対策工事の着手時期を「2022年後半」に2年程度延期し、「26年度ごろ」としていた運転開始目標時期は未定とした上で「28年度と見込んでいる」と表明した。延期は4回目。Jパワ一の倉田一秀・大間現地本部長らが大間町議会大間原発対策特別委員会(原特委)で説明した。
 安全工事は新規制基準に対応するため、格納容器や炉心の損傷防止、放射性物質の拡散抑制などを強化する目的で実施する。延期理由は、安全工事の前提となる原子力規制委員会の新規制基準適合性審査が想定通り進んでいないため。Jパワーは審査合格にさらに2年程度かかると見込んだ。
 安全工事の工期は従来通り5年間で、その後1年程度の試運転が必要となるため、運転開始目標時期もずれ込んだ。
 倉田本部長は原特委で「度重なる工程延期を、おわび申し上げる」と陳謝。「この先の2年は審査を早期に終わらせるよう尽力する。地元経済への影響を少しでも緩和できるよう、周辺工事の規模を維持していきたい」と強調した。
 10日午後、県と風間浦村、佐井村にも報告した。
 県庁には、Jパワーの浦島彰人副社長が訪問し、柏木司副知事に対し「度重なる工事開始時期の延伸に大変心苦しく思っている。1日も早く許認可を得られるよう、最大限の努力をする」と説明した。柏木副知事は、安全性向上に向けた責任ある対策と、県民と関係自治体の理解を得るための努力を同社に求めた。
 浦島氏は同日、森内之保留県議会議長にも延期を報告した。
 大間原発は商業炉として世界で初めて全炉心でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使える設計で、08年に着工。工事進捗率は東日本大震災直後と同じ37・6%のままになっている。現在は地震・津波関係の審査が続いている。(鳥谷部知子、安達一将)

 「これを最後の延期に」 「本当に2年後着工か」 地元首長ら

 電源開発が安全強化対策工事の開始時期を2年程度先送りすることを表明したことを受け、10日、地元3町村の首長や関係者からは4度目の延期に「これを最後にしてほしい」「本当に2年後にできるのか」などの声が上がった。
 「本来であれば2014年に完成予定だった。15年から固定資産税を得て次のまちづくりをしている時期。町にとって非常にマイナスだ」。大間町の金澤満春町長は厳しい表情で述ベ、町の経済、雇用に引き続き支援を求めた。同町議会の石戸秀雄議長は特別委員会で、度重なる延期をイソップ童話の「オオカミ少年」に例えて「3回目になると(目標時期は)うそだーとなる。4度目は余裕を持って安全性を高める期間にしてほしい」と要求した。
 風間浦村の冨岡宏村長は「(延期は)想定していた」とした上で、原発工事の遅れや新型コロナの影響、漁獲不振で低迷する村の経済情勢に「今後も地域振興策をお願いしたい」と訴えた。
 佐井村の樋口秀視村長は「延期のたびに住民の落胆につながり、気持ちが離れていく」と懸念を示した。
 原発反対派という大間町の60代漁業男性は「福島原発事故の検証がなされていないのに、100パーセント安全が確保されるのか。原発立地地域のマグロというだけで風評被害にならないか心配」と語った。
(烏谷部知子)

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