[2014_07_04_02]大間原発差し止め訴訟 国と電発 争う姿勢 東京地裁第1回弁論 「国は姑息、真摯ではない」 函館市長 当事者適格性を強調(東奥日報2014年7月4日)
 
 北海道函館市が大間原発の建設差し止めなどを求めた訴訟の第1回口頭弁論が3日、東京地裁(増田稔裁判長)であり、被告である国と電源開発(Jパワー)は「原告適格(=提訴する資格)が認められない」などとして、同市の訴えを却下するよう求めた。
 一方、函館市の工藤寿樹市長は「東京電力福島第1原発事故を見れば、原発が本質的に危険で、どんな対策を講じてもゼロリスクにならないことは明らか」などと意見陳述し、あらためて建設凍結を訴えた。
 自治体による原発差し止め訴訟は初めて。
 口頭での意見陳述は国側も行い、(1)函館市が根拠とする「地方自治体の存立を維持する権利」は具体的な権利義務、法律関係に関するものと言えず、訴訟で争うことには当たらない(2)原子炉等規制法には、地方公共団体の財産権や地方自治権を個別的利益として保護する趣旨は含まれない−などと主張した。
 Jパワーは答弁書で「原告の権利内容が不明確」などとし、訴えの却下を求めた。また、函館市による大間原発の危険性の指摘についても争う姿勢を示し、請求棄却を求めた。
 原告側は今後、国の主張に対する反論などを行っていく。
 函館市は訴状で「大間原発の設置許可申請時に用いられた安全審査指針は、福島第1原発事故の発生を防げなかった。不合理性は明らかだ」と主張。
 大間原発とは津軽海峡を挟み最短で約23キロと近いことから、「過酷事故が発生した場合、市域が汚染され、住民の土地は奪われる。函館市の有形固定資産は無価値になる」などとし、自治体の存立を維持する権利を訴えている。
 Jパワーは2012年秋に大間原発の建設工事を再開。完成後の運転開始に向け、今秋にも原子力規制委員会に安全審査を申請する方針を示している。

 「国は姑息、真摯でない」 函館市長 当事者適格性を強調

 約30分にわたり、大間原発の建設凍結を訴えた函館市の工藤寿樹市長。閉廷後の会見で「思いの丈を百パーセント話すことができた」とほっとした表情を浮かべた。一方、国が訴訟の却下を求めたことには「姑息(こそく)。正面から向き合わず、真撃(しんし)な態度が見られない。だから国民的理解が得られない」と、怒気を含んだ声で言い切った。
 「毒性が強いプルトニウムとウランを混ぜて使う世界初の原子炉。危険性が高い」「公海から5・5キロしかなく、テロ集団にとって格好の位置にある」 法廷で工藤市長は滞員の傍聴席に一礼、提訴に至った理由を次々と並べた。言い終えると、傍聴席から小さな拍手が起こり、裁判長がたしなめる場面も。
 訴訟の焦点となっているのが、地方自治体が利害当事者として認められるかどうか。工藤市長は会見で「地方自治体が事実上消え去るのが原発(事故)。災害や戦争などでは復興できるが、原発の過酷事故は半永久的に自治体の存立を奪ってしまう」と強調した。
 裁判費用の足しに−と、道内外からの寄付は2500万円を超えた。「私は反原発とか、脱原発とか(の立場)で原発を論じたことはない。事故を起こした世代の責任として、立ち止まって考えてみようということ」と訴訟への理解を求めた。
 一方、大間町の金澤満春町長は訴訟は他自治体のこととして「コメントは差し控える」とした上で「町としては大間原発の建設推進の立場は不変。今後の裁判の推移を注視していく」とのコメントを出した。(本紙取材班)
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