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「女川の次は島根」再稼働への道のりは・・・中国電力島根原子力発電所２号機は今
　１１月に被災原発として初めて地元が稼働に同意した宮城県の女川原発。こうした中で島根原発２号機について中国電力は、国の審査が「終盤に差し掛かっている」という認識を示しています。しかし追加工事の指摘などで工事完了は１年延期になりました。来年３月で震災から１０年。島根原発の今を取材しました。

　福島原発の事故後、２０１３年から１５年にかけての２年間の稼働原発はゼロでした。そして今稼働しているのは、愛媛の伊方や福井の高浜など９機。そして国の新基準による審査で『合格』と判断された原発が７機あります。この内、１１月に稼働に向け大きく前進したのが、宮城県の女川原発です。

宮城県・村井知事
　「技術革新をして人類は発展して参りました。福島原発を教訓に高みを目指さなければならない。」

　被災原発として初めて地元自治体が同意しました。女川原発は、福島や島根と同じ型の原子炉でその進捗が注目されてきました。現在島根原発２号機は、津波や地震に備え従来よりも厳しい安全基準のもとで審査が行われていますが、国の原子力規制委の更田委員長は去年こんな言葉を・・・。

Ｑ進捗状況は女川の次？
　「そうです。率直に言えばそうだと思います」
　『女川の次は島根』・・・徐々に視野に入ってきています。しかし、この審査の中で国から津波を防ぐ『防波壁』の耐震性などを疑問視する声が相次ぎ、その結果・・・。

中国電力・清水　希茂社長（今年１０月末）
　「島根２号機の審査は終盤に差し掛かっていると認識しているが、審査会合での指摘などを踏まえ新規の安全対策工事が必要になったことなどから、２号機の安全対策工事の完了時期を２０２１年度のできるだけ早い時期に変更します。」
　中国電力は２号機の安全対策工事について完了の１年延期を発表。追加費用は約５００億円、総額は６０００億円に上る見通しを明らかにしました。
　６０００億円・・・島根県の年間予算（約５０００億円）を上回るその安全対策とは？

藤谷　裕介記者
「これから２号機の原子炉内部に入っていきます」

松江市鹿島町島根原発２号機原子炉建屋の上部。

中国電力島根原子力本部・渡部　公一広報部長
　「ああいう大きな事故が起きた時、仮に水素が滞留したとしてもそれによる爆発を防ぐためにつけた装置です。」

　東日本大震災による福島第一原発事故では、建屋内に水素ガスが充満し水素爆発が発生しました。これを教訓に水素を自動的に水蒸気に変換する装置を２号機内に１８台配備。また当時はむき出しになった核燃料を冷やすため、放水が続けられました。『注水対策』も増強されています。燃料プールに直接注水できるスプレイを新たに設置。福島の事故では原子炉建屋が浸水し、建物内の冷却装置が使えなくなったため、建物の外にも追加配備しました。津波の浸入防止、電源確保、放射性物質の拡散防止など様々な安全対策で総額が６０００億円。この内、５００億円分は今回、新たな追加工事によって発生しました。福島原発の事故後も新設した高さ１５ｍの『防波壁』。完成から７年経ちますが新たに改良が求められています。

中国電力島根原子力本部・渡部・　公一広報部長
　「審査で防波壁の中の、中詰め剤が少し弱いと指摘があったので、この中を固めていく工事（５００億円の一部）を追加でやっていく」
Ｑ最初から工事できなかったのか？
　「我々は充分な強度だと思っていたんですが、念には念を入れて」

　こうした安全対策について曖昧な方針を説明する中国電力に対し、国は誠実な対応を求めています。

原子力規制委の担当者
　「十分に吟味したうえ方針を出してほしい。規制委側から言われてやってみたらダメでしたは無責任。裏付けを持ったうえで方針を出してほしい」
　さらに津波によって漁船が防波壁に衝突した際の影響ついて、他原発は考慮しているにも関わらず、中電はそれをしていなかったことに厳しい声も上がっています。

原子力規制委の担当者
　「確率が低くても影響が大きいのであれば、能動的な対応の検討が必要ではないか。問題があるから強化する。各社は工夫している。でも問題が起きるから無い事にするという発想自体がどうかしているのではないか」
　東日本大震災による福島原発事故からまもなく１０年・・・。被災地の原発が稼働に向け動きだす中、島根原発２号機も新基準適合に向け前進しています。「安全」とは何か・・・原発そのものだけでなく、避難計画の実効性など「住民の安全性」をいかに確保するかも重要となります。