[2020_12_08_03]大阪地裁により規制委の違法行為が断罪される大飯原発は直ちに廃炉に 全原発の耐震性評価は間違っている 規制委員会は許可を取り消せ 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2020年12月8日)
 
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大阪地裁により規制委の違法行為が断罪される大飯原発は直ちに廃炉に 全原発の耐震性評価は間違っている 規制委員会は許可を取り消せ 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◎ 2020年12月4日、大阪地裁の森健一裁判長は3.11後の行政訴訟
としては初めて原発の設置許可を取り消す判決を下しました。
 判決の意義と思いを以下に書き留めておきます。
 この裁判は、2012年に127人の市民により起こされました。
 起訴状には基準地震動以外にも許可取り消しを求める要因は、いくつも提起していましたが、判決では「基準地震動を求める手法について瑕疵があり、その結果運転許可を取り消す」との結論になっています。他の理由、基準津波の評価の誤りや制御棒挿入遅れなどについては残念ながら却下されています。
 判決を一言で表せば「地震は過去の平均値では起こらない」。
 この当然の定理が裁判により認められました。

◎ 今まで、原子力施設の基準地震動は何処も何度も引き上げられてきました。それだけ最初の設定が大きく間違っていたことを意味するものです。
 それを国(規制側)も事業者も認めざるを得なかったのが現実です。
 福島第一原発事故までに、2007年中越沖地震の柏崎刈羽原発など3原発で3度も基準地震動を超える地震に遭遇し、ついに2011年3月11日を迎えてしまいました。ここでも2原発で基準地震動を超える揺れを観測しています。

◎ 東日本太平洋沖地震による福島第一原発震災は、津波で破壊されたと国や東電は言いますが、その前に地震でも破壊されています。
 電源設備の多くは地震で破損し、外部からの電力を受け取れない状態になっていました。仮に津波が来なくても非常用ディーゼル発電機が燃料切れを起こせば炉心冷却は不能になっていたのです。
 同時に女川原発1号機でも地震で「高エネルギーアーク損傷火災」
(*)を起こしています。
 これは中越沖地震の柏崎刈羽原発3号機で起きた起動変圧器火災と同種のものです。これらは基準地震動を低く設定していたために耐震性能に重大な欠陥があり、引き起こされたことですが、現在に至るも根本的解決はされていません。
 なぜならば、今も新規制基準適合性審査を通ったとされる柏崎刈羽原発も、女川原発も、東海第二原発も、基準地震動が過小に評価されており、その影響で「次の地震」に遭遇した場合に破壊されるリスクが大きいからです。

◎ 特に老朽原発の東海第二については、保安院時代に行われた「やっつけ仕事」の「耐震バックチェック」でさえ「耐震性能がギリギリ」であることが分かっています。
 クリフエッジと呼ばれる限界点が1038ガルに対し、基準地震動は1009ガルと、97%を越えています。「余裕」が僅か3%です。
 「ばらつき」「不確かさ」を考慮すれば、明らかに失格であるにもかかわらず、規制庁は「基準地震動を越える地震は想定していない、する必要もない」「基準地震動を越えたとしても直ちに重大な損傷を引き起こす破壊は生じない。なぜなら余裕があるから」などと市民や議員に対して回答しています。
 規制側であるとの立場も、規制値を定めた基本的考えも、ここにはありません。
 「越えても直ぐには壊れない」が、規制側の言うべきことではないことは「速度を超過しても直ちに交通事故につながるわけではない」と警察が言うわけがないことでもわかるでしょう。行政機関として絶対に言ってはならないことです。

◎ ここでは「規制基準適合性審査を通過させるための姿勢」だけが露骨に現れているのです。
 今回の判決で直ちに原発は止まりません。国(規制委)は控訴することを検討しています。控訴されれば「許可取り消し」の効力は停止します。
 しかし、行政訴訟において国の審査が違法、無効とされたことは極めて重要です。それは、規制委による調査審議の手法そのものを違法としたからです。
 これで他の原発において行われた耐震性評価も、全部失格ということにもなります。
 規制委は大飯原発はもとより、総ての原発の耐震設計審査をやり直すまで、規制基準適合性審査の審査書(設置許可)を取り消すべきです。
(*)高エネルギーアーク損傷火災:アーク溶接は溶接端子と母材の間に放電(アーク放電)する時に発生する5千度から2万度の高温状態を利用して、鋼鉄などの金属を溶かして繋ぐ溶接方法ですが、設備の故障や振動などで発生する端子やケーブルの短絡などにより発生した「アーク放電」により、温度や圧力が急激に上昇し、ケーブルや電気設備を破壊して火災を引き起こす事象です。

▲ 判決の要旨は以下の通りです。

 『関西電力は,大飯原発3号機及び4号機の設置変更許可申請において,各原子炉の耐震性判断に必要な地震を想定する際,地質調査結果等に基づき設定した震源断層面積を経験式に当てはめて計算した平均値としての地震規模をそのまま用いた。新規制基準は,経験式による想定を超える規模の地震が発生し得ることを考慮しなければならないとしていたから,新規制基準に基づき基準となる地震動を想定する際には,少なくとも経験式による想定を上乗せする要否を検討する必要があった。原子力規制委員会は,そのような要否自体を検討することなく,上記申請を許可した。原子力規制委員会の調査審議及び判断は,審査すべき点を審査していないので違法である。』
KEY_WORD:大飯原発_設置取消_:OOI_:TOUKAI_GEN2_:ONAGAWA_:KASHIWA_:CHUETSUOKI_:FUKU1_: