[2020_11_18_03]女川原発2号機再稼働「地元同意」 残された課題 “避難計画の実効性” 専門家「福島の教訓忘れ去られている」(KHB東日本放送2020年11月18日)
 
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女川原発2号機再稼働「地元同意」 残された課題 “避難計画の実効性” 専門家「福島の教訓忘れ去られている」

 今年2月の審査合格から約9カ月。再稼働をめぐる地元同意の手続きは完了しましたが、どのような課題を残したのでしょうか。
 東日本大震災後、すでに再稼働した原発は全国に9基あります。地元同意を得られた女川原発が10基目になります。
 これまでの9基は、いずれも西日本にある原発で、福島第一原発や女川原発とは異なる加圧水型の原子炉です。
 一方、女川や福島の原発は沸騰水型の原子炉で、新しい基準でより厳しく重大事故への備えが必要になりました。
 そのため、沸騰水型で原子力規制委員会の審査に合格したのは女川原発に加え、新潟県の柏崎刈羽原発、茨城県の東海第二原発の3つの原発に留まっています。
 審査に合格したタイミングが最も遅かった女川原発が地元同意では1番手になりましたが、女川原発以外では2年以上、地元同意をめぐる議論が続いています。
 2017年12月に審査を通過した柏崎刈羽原発のある新潟県では、同じ東京電力が起こした福島第一原発の事故について県独自の検証が終わるまで、再稼働の同意はできないとしています。
 また、茨城県の東海第二原発が立地するのは人口約3万7000人の東海村です。 電力会社と結ぶ安全協定は、震災前、東海村と茨城県のみを対象にしてきました。しかし、福島の事故を受けて、対象を30キロ圏内に位置し、東海村に隣接する市と人口の多い水戸市を加えた6つの市と村に拡大し、再稼働の判断材料となる事前了解権を持たせました。
 原発の周辺自治体に影響力を持たせるため、交渉を続けてきた茨城県那珂市の海野徹前市長に話を聞きました。
 海野徹・前那珂市長「当時の東海(村)の村上村長が、自分ひとりで判断するのは、なかなか辛い部分があると。私たちは、その意見に全く賛成だったものですから、今の6市村の枠組みができたわけです」
 東海第二原発の30キロ圏内には、94万人が暮らします。茨城県では、作成中の避難計画の実効性を上げるため、30キロ圏内の住民やそのほかの地域に住む県民に対し、県が避難計画の課題を示しながら議論を続けています。
 同じ被災原発である女川原発が再稼働へ同意したことについて、海野・前那珂市長はどのように捉えているのでしょうか。
 海野徹・前那珂市長「当該、立地自治体の首長さん、知事もそうですけれども、本当に市民や住民の命を守る気概があるのかどうか、私にはとても疑問に思います」
 一方、女川原発では、30キロ圏内の自治体の首長が作る懇談会が、2013年に発足。一部の首長は、再稼働の是非について意見することを求めましたが、意見の相違があるとしてまとまらず、これらの自治体が同意の是非に影響を与える事前了解権を得ることはありませんでした。
 一貫して再稼働に反対の立場をとったのが、美里町の相沢清一町長です。
 相沢清一美里町長「UPZはもともと温度差があったと思う。我々の働きかけ方もまずかったのかという思いはしております。これからもう一回、再スタートという形で、UPZとしてどうあるべきか、今後対応してまいりたいと思います」
 東北電力は、女川原発2号機の安全対策工事が2022年度までかかることを明らかにしています。
 同意の後、再稼働までは最低でも約2年の猶予が与えられますが、県は、この期間で避難計画に実効性を持たせることは可能なのでしょうか。
 福島大学の元教授で、福島の避難者の状況について、継続的に調査を続けている地方自治総合研究所の今井照研究員は、現在作られている女川原発の避難計画は、事故直後の緊急対応に限られていると指摘します。
 今井照・自治総研研究員「(現状の計画は避難先の)受け付けを通して、各避難所にさばかれるというところで、これはまだ本当に1日、2日の話。体育館に身を寄せるとかは1週間ぐらいが限度の話なので、それ以降の話も作っていかなければならない」
 福島の事故では、立地自治体だけではなく、周辺の自治体に住む住民も含め、情報が錯そうする中、大混乱の中、避難しました。
 女川原発の避難では、原発からの距離や地域によって、順に避難を開始することが決められています。
 今井照・自治総研研究員「10キロ離れた人だって、リスクを感じれば避難して良いわけで、避難する権利はある。てんでんこに避難するってことにならざるを得ないし、なるべきだと思う。それを前提にして計画を立てないと、実効性が無いと思いますね。複数の選択肢がないと避難計画の実効性は高まらない」
 今井さんは「福島の事故の教訓が忘れ去られている。原発の再稼働に同意するならば事故によって避難生活がまだ続いている人たちがいることを受け止めて、実効性のある避難計画につなげてほしい」と話しています。

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