[2018_11_06_01]<関西電力>中間貯蔵施設、候補地選定が難航 決定越年も(毎日新聞2018年11月6日)
 
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<関西電力>中間貯蔵施設、候補地選定が難航 決定越年も

 原子力発電所から出る使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設について、関西電力の候補地選定が難航している。関電の全原発がある福井県に対して「2018年中に県外の保管先を示す」と約束しており、期限まで2カ月を切った。青森県むつ市にある他社の中間貯蔵施設を利用する案が有力視されているが地元の反発は根強く、越年する公算が大きくなりつつある。
 「現時点では具体的な地点を言える状況にない。年内に示せるよう全社を挙げて取り組んでいる」。関電の岩根茂樹社長は10月下旬の記者会見で、この問題について問われて硬い表情を見せた。
 期限を設けたのは岩根社長自身だ。昨年11月、大飯原発3、4号機の再稼働に理解を得るため、使用済み核燃料の県外搬出を求める西川一誠福井県知事に対して、記者団の前で約束した。その後、候補地を示せないまま約1年が経過し、関電のある経営幹部は「原発関連の立地問題は期限を言ってしまうと難しくなる。なぜ言ってしまったのか」と頭を抱える。
 昨年5月以降、高浜原発と大飯原発の計4基を再稼働させた関電。電力自由化で顧客獲得競争が激化しており、原発は電気料金値下げに不可欠な「武器」だ。一方で、原発内の燃料プールで保管する使用済み核燃料は増え続け、今後6〜9年ほどで満杯となる見通しだ。
 有力視されているのが、東京電力ホールディングス(HD)と日本原子力発電が出資して青森県むつ市に建設した中間貯蔵施設(国の審査中)を関電も使う案だ。両社が出資する「リサイクル燃料貯蔵(RFS)」に対して「関電が出資する方向で最終調整」と共同通信が今年6月に報道すると、むつ市の宮下宗一郎市長が「一切聞いていない」と反発。東電幹部らに説明を求める事態になった。
 関係者によると、関電がむつ市の頭越しに青森県と交渉を進め、地元対策が後手に回ったとの見方が強い。県庁がある青森市に関電が契約事務などを扱う事業所を新設したことも、「立地する市町村軽視」との反感を招いた可能性がある。電力政策を所管する資源エネルギー庁のある幹部は「関電は県とも市町村ともうまくコミュニケーションを取ってほしい」と危惧する。
 関電の電力供給エリア内では、福井県以外で受け入れ先を見付けるのは困難とみられ、むつ市以外に選択肢が見当たらないのが実情だ。高浜原発がある福井県高浜町の野瀬豊町長は受け入れに柔軟な姿勢を示すが、県との公約は重く、実現性は低い情勢だ。関電内部や地元関係者からも「年内の候補地選定は厳しい」との声が漏れ始めている。【真野森作】

 【ことば】中間貯蔵施設
 国の核燃料サイクル政策に基づき、原発の使用済み核燃料を一時保管する施設。保管終了後は再処理してプルトニウムなどを分離し、燃料として再利用する計画だが、日本は既に大量のプルトニウムを保有しており、国際問題化している。青森県むつ市には東京電力と日本原子力発電が共同出資した全国初の中間貯蔵施設(貯蔵容量約3000トン)があり、建物内で金属製容器に入れて最大50年間保管する計画だ。

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