[2023_08_14_02]核のゴミを「永久」貯蔵する羽目に。山口県上関町の核燃料中間貯蔵施設プランは何がヤバいか?(MAG22023年8月14日)
 
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核のゴミを「永久」貯蔵する羽目に。山口県上関町の核燃料中間貯蔵施設プランは何がヤバいか?

 8月2日、使用済み核燃料の中間貯蔵施設を山口県上関町に建設するプランを発表した中国電力。町は前向きな姿勢を示していますが、市民団体からは反対の声が上がっています。このプランを「マヤカシ」と断言するのは、元全国紙社会部記者の新恭さん。新さんは自身のメルマガ 『国家権力&メディア一刀両断』 で今回、中間貯蔵施設が「永久貯蔵施設」になりかねない理由を解説するとともに、脱原発以外に核廃棄物問題の解決方法はないと断言しています。

 すべてマヤカシ。山口県上関町の核燃料中間貯蔵施設プランに見る原子力ムラの往生際の悪さ

 原発回帰に前のめりな岸田政権の政策を奇貨として、各電力会社は原発再稼働を急いでいる。だが、原発を動かせば動かすほど、施設内のプールにたまっている使用済み核燃料が増え、満杯になる日が近づいてくる。
 満杯になって、持っていき場があるかといえば、残念ながら無い。「トイレなきマンション」とたとえられるように、最初からそんな場所や処分技術が確保されていないからだ。そのうち何とかなると見切り発車したのが、そもそも原子力発電というシステムだ。
 そこで、日本政府と電力会社は、できもしないことをできるかのように吹聴してきた。使用済み核燃料を再処理してウランやプルトニウムを取り出し、再び燃料にして原発で燃やす。つまり「核燃料サイクル」だ。この構想の中核である高速増殖炉の開発に途方もない巨額投資をし、あえなく失敗した。それでも、“原子力ムラ”は諦めない。いつまでも“神話”を生かし続けねば、原発温存政策の土台が崩れるからだ。
 山口県の上関町に、原発から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設を建設するプランが持ち上がっている。中間貯蔵施設も、核燃料サイクルの一環として考え出されたものだ。
 まだ決まったわけではない。中国電力が原子力発電所をつくるために所有していた敷地の一部を活用し、福井県から使用済み核燃料の県外搬出を求められている関西電力と共同で建設するというプランで、上関町に示したばかりだ。
 過疎化が進む上関町の町長から地域振興策を求められたのに中国電力が応えたかたちだが、原発建設に反対してきた住民にしてみれば寝耳に水の話で、ましてや高浜・大飯・美浜の3つの原発を福井県内に抱える関西電力の使用済み核燃料の面倒までみるということになると受け入れがたいだろう。
 中間貯蔵施設の設置場所が見つからず、どこよりも焦りを募らせてきたのは原発再稼働が進む関西電力だ。高浜3・4号機、美浜3号機、大飯3・4号機の5基に続いて、このほど運転開始から48年も経つ「高浜1号機」が再稼働、9月には「高浜2号機」も再開し、廃炉が決まった4基を除く全7基がフル稼働する見込みだ。
 岸田首相は原発政策を大転換し、60年を超える老朽原発の運転も可能にする法律を成立させた。古い原発の多い関電にとっては望みどおりになったといえる。
 そこで問題になるのが使用済み核燃料の増加だ。高浜原発では約5年もすればプールが満杯になるといわれている。満杯になると、置き場がなくなり、原発の運転ができなくなってしまう。放射性物質がたまり続けると、当然、地元の不安は高まる。
 使用済み核燃料の県外搬出を求める福井県の杉本達治知事に対し、関電は中間貯蔵施設を県外に設けると約束したが、ことは放射性物質にかかわるだけに、受け入れる自治体が簡単に見つかるはずはなく、関電は候補地の提示期限が来ても約束を果たせないまま、解決を先送りしてきた。それだけに、中国電力から共同で中間貯蔵施設をつくろうという話が持ち込まれたのは、“渡りに船”だっただろう。

 核のゴミの最終処分場がないという根本的な問題

 国は原発から出る使用済み核燃料をすべて再処理にまわすよう義務づけ、これまでは英国とフランスに再処理を委託してきた。だが、いつまでも英仏に依存するわけにはいかないため、青森県六ヶ所村に日本原燃の核燃料再処理工場が建設されたが、試運転段階のトラブル続きで完成に至らず、いたずらに環境を汚染し続けているのが現状だ。
 原発からやがて溢れ出すであろう使用済み燃料を、再処理工場に移すまでの間、一時的に保管しておく場所が中間貯蔵施設というわけである。だが、この「一時的」がクセモノなのだ。
 東京電力と日本原子力発電が青森県むつ市に建設中の中間貯蔵施設の場合、使用期間は50年間で、操業開始後40年目までに、搬出について協議することになっている。この「協議」というのも怪しい。搬出先である再処理工場の将来が不透明であるからだ。「協議」によっては、いつまでも搬出できない恐れもある。
 六ヶ所再処理工場は、3兆円もの巨費を投じながら、さまざまなトラブルを引きおこし、これまで竣工が二十数回も延期されている危ういシロモノだ。いつになったら稼働するかわからない。もともと日本には再処理のノウハウがなく、フランスの協力を得て建設を進めたものの、関係企業個々の利権がからんで一貫性のない設計となったのが災いした。
 再処理工場がうまくいかなければ、中間貯蔵施設は「一時保管」ですむはずがない。専門家の中には、「中間貯蔵ではなく永久貯蔵施設になるのではないか」と疑い深い眼を向ける人もいるのだ。
 中間貯蔵施設は鉄筋コンクリートの建物で、使用済み燃料は金属キャスクという頑丈な容器に入れられていて、容器から取り出したり、加工したりすることもなく、安全だという。しかし、大量の放射性物質を含む物を長期にわたって大量に置いておくとしたら、何が起こるかわからない。
 上関町に中間貯蔵施設が建設されることになれば、むつ市に次いで二例目となる。関電はかつてむつ市の中間貯蔵施設を使用させてほしいと要請したが、地元自治体の反対で断念した経緯がある。
 根本的な問題は、核のゴミの最終処分場がないことだ。「核燃料サイクル」計画にしても、再処理によって発生した廃液中の放射性物質を、溶融ガラスと混ぜ合わせた「ガラス固化体」にして最終処分場に埋めることになっている。
 それができないため、フランスやイギリスから返還された「ガラス固化体」は、六ヶ所村の「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」に保管されている。
 最終処分場の実例としては、米国ニューメキシコ州の核廃棄物隔離試験施設や、フィンランドのオルキルオト原子力発電所に併設されているオンカロなどがあるが、日本では小泉純一郎元首相が見学したこともあってオンカロがよく知られている。
 オンカロでは、19億年前にできた岩盤を地下520メートルまで掘り進め、そこから横穴を広げて100年間にわたり核のゴミを埋めてゆく計画だ。それが終わると閉鎖して、無害になるまでなんと10万年も待つのだとか。核廃棄物に含まれるプルトニウムの半減期は2万4,000年で、10万年経過しないと安全は確保できないのだという。
 日本では、2000年5月に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が成立し、廃棄物は、地下300メートル以上の深さの地層において、飛散、流出、浸透することがないように必要な措置を講じて埋設すると定められた。
 「手挙げ方式」と呼ばれる全国公募が始まり、07年に高知県東洋町が応募したものの、町民の激しい反対で取り下げになった。現在、選定プロセスの第1段階に当たる「文献調査」を受け入れているのは、北海道の寿都町と神恵内村だけだ。

 「地層処分」に適した土地を見つけるのはほぼ不可能な日本

 オンカロのようなやり方を地層処分という。いまの科学技術では、これしか核のゴミを最終処分する方法はない。ところが、地層処分には重要な前提がある。地層が安定していることが必要だ。
 火山があり、活断層が分布し、プレートがぶつかり合う日本列島は、地震がいつ、どこで起きても不思議ではない。地層処分に適した土地を見つけるのはほぼ不可能だろう。だいいち、どこの自治体がその施設を受け入れるだろうか。
 いつまでも適地が見つからなければ、中間貯蔵施設や原発の施設内、あるいは再処理施設に使用済み核燃料や核廃棄物を貯め続けるしかないが、これもいつかは限界がくる。つまるところ、原発の運転をやめるほか根本対策はないのだ。
 未曾有の原発事故を経験し、その恐ろしさをどこよりも知っているはずの国が、いったんすべての原発の運転を停止してさえ電力を賄えたというのに、あえて再び、原発依存を復活させようとする。そのために、やれ再処理だ、中間貯蔵だと、地域住民の生活を脅かすことも顧みずにあくせくする。
 原発利権の呪縛を解き、「脱原発」をすれば、少なくとも今以上に核のゴミが増え続けることはないはずだ。無駄なことに莫大なエネルギーを注ぎ込んでいるような気がしてならない。
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