[2022_12_18_02]原発建て替え、暗い見通し 有力視される次世代型原発「革新軽水炉」は建設費膨大…及び腰の電力会社も(東京新聞2022年12月18日)
 
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原発建て替え、暗い見通し 有力視される次世代型原発「革新軽水炉」は建設費膨大…及び腰の電力会社も

 16日にまとまった経済産業省の原発活用策は、東京電力福島第一原発事故後の政府方針を覆し、廃炉が決まった原発の建て替え(リプレース)に踏み込んだ。建設するのは次世代型原発とされ、経産省が「革新軽水炉」と呼ぶタイプが有力視される。原発の生き残りをかけた方針転換だが、電力会社側の動きは鈍く、政府の思惑通りに進みそうにない。(増井のぞみ)

 ◆巨額な初期投資…原資は電気料金で国民にツケ

 「リプレースにまで言及したことを評価する」「原子力の持続的な活用には、次世代炉開発が重要だ」
 16日の有識者会議「基本政策分科会」では、原発政策の転換を象徴する建て替え方針を歓迎する委員の声が相次いだ。
 さまざまな種類がある次世代型原発の中で、経産省は革新軽水炉だけに商業運転の開始目標時期を設定し、2030年代半ばの稼働を目指す。三菱重工が9月に北海道、関西、四国、九州の電力4社と設計を進めると発表した原発だ。
 既存原発とほぼ同じ構造なのに、経産省が革新軽水炉と呼ぶ背景には「三菱重工の言葉をそのまま使っている」(同省幹部)現状がある。メーカーの宣伝文句が政策の検討資料にそのまま載り、原子力産業の復権に向けた官民一体の構図が見える。
 ただ、新しい原発は建設費が膨大だ。フランスで建設中のフラマンビル原発3号機は「欧州加圧水型炉(EPR)」と呼ばれ、革新軽水炉に近い。07年に着工し、12年に完成する予定だったが、技術的課題や建設費の高騰で工期の延期を繰り返している。総事業費は当初の4倍の約1兆9000億円に膨らんだ。
 巨額な初期投資がネックとなる状況に、政府は来年度にも新たな資金確保の仕組みをつくる。電力小売り各社が資金を拠出し、建設した原発の運転開始から20年間、電力会社が安定した収入を得られるようにする。原資は電気料金で、最終的に国民にツケが回る。

 ◆識者「事業者は運転延長選ぶ」

 政府は建て替えに向けて地ならしを進めるが、実現までの道のりは険しい。
 福島事故前に建て替え方針が明確だったのは、関西電力美浜原発(福井県)と中部電力浜岡原発(静岡県)の2カ所。両社とも福島事故後は「具体的な検討は進んでいない」と慎重だ。
 一部の電力会社からは、建て替えに否定的な声も上がる。廃炉原発と再稼働への審査中の原発をいずれも抱える電力会社関係者は「まずは再稼働が先。人的資源も資金面も、建て替えを検討できる余力はまったくない」と言い切る。
 原発活用策のもう一つの柱となる60年超運転を可能にする制度が、建て替えの障害になるとの見方も。
 16日の分科会で、橘川武郎・国際大副学長は「次世代炉(革新軽水炉)の建設コストは1兆円単位で、運転延長はそれより2桁は少ない」と指摘した上で「建て替える発電所を明示しないまま、運転延長も認めてしまった。事業者は建設を選ばない」。原発回帰への選択肢を増やそうと、見通しなく方針を打ち上げる経産省をこう批判した。
 「今回の方針で、次世代炉の建設は遠のいた」
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