[2021_07_26_02]中国・台山原発1号機のその後 「運転停止権限を有するのは中国」とフランス電力が声明 中国も日本も結局「安全より経済」は変わらない ただでさえ危険な原発のリスクはさらに高まり続ける 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年7月26日)
 
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中国・台山原発1号機のその後 「運転停止権限を有するのは中国」とフランス電力が声明 中国も日本も結局「安全より経済」は変わらない ただでさえ危険な原発のリスクはさらに高まり続ける 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 台山原発1号機(EPR型炉166万kW)の燃料損傷、放射性物質放出の第一報は、原発の建つ中国ではなく、また建設したフランスでもなく、米国CNNからもたらされた。
 日本では報道した米国の報道機関経由で、各社が報道した。
 さらに7月23日に、東京新聞などが「中国・台山原発、仏なら一時停止 燃料棒破損、合弁の電力会社見解 」と、フランス電力の声明に基づく報道をしている。
 「台山原発1号機の運転を止めよ」との国際的な圧力がかかり始めている。これは容易ならざる事態に発展しているのだろう。

◎台山原発1号機の燃料損傷

 台山原発1号機を運営しているのは台山原子力合弁会社(TNPJVC)で、この会社は中国広核集団CGN(51%)、フランスの電力会社EDF(30%)、中国の電力会社広東エナジーグループ(19%)の合弁会社である。
 EDFは6月14日にプレスリリースを出している。
 それによると『EDFはTNPJVCの株主として、経営陣がすべてのデータとすべての必要な決定を発表するために臨時のTNPJVC臨時取締役会開催を要求した。』としている。
 CNNは、台山原発1号機は、「差し迫った放射能リスク」を示しているとフラマトム(EPR主契約社)は6月3日に米国当局に語ったことから始まったと報じた。
 フランス紙フィガロは、台山原発の情報が米国からもたらされたいきさつについてヒントを与えている。
 『先週の土曜日、技術者がCGNから最新のデータを受け取ったときに、フランスの電気技師に警告が発せられた。その過程で、EDFは中国に、「経営陣がすべてのデータと必要な決定を提示するように」臨時取締役会を緊急に開催するよう要請した。
 一次冷却系の汚染は、5月末の段階で、フランスでは48時間以内に原子炉の停止を命じるしきい値(つまり、水1トンあたり150ギガベクレル)の2倍のオーダーだった。
 フラマトムから米当局に送られた文書を持っている情報源は、今日、この数字はさらに増加したに違いない。水1トンあたり1000ギガベクレルを超えると、フランスの原子炉を緊急に停止する必要があるとしている。』
 『最初の警報は昨年10月に遡る。2018年末に運転を開始した台山1号機は、その時、運転員により燃料棒の「漏えい」が疑われるパラメータ検出した、ガスはほとんど放出されなかったが。数週間が経ち、状況は悪化した。12月、CGNは中国の安全当局との「対話」を開始し、原子炉の停止を判断するしきい値の引き上げを要求した。CNNによると、これらは最終的に引き上げられた。
 2つのEPRを備えた発電所が位置する広東省の非常に勤勉な地域は、数ヶ月間電力不足を経験している。中国当局に原子力安全を犠牲にしてもらう。』

◎中国は電力逼迫で原発の運転強行

 電力供給が逼迫し、台山原発1号機の電力供給を停止することが困難な状況になったことで、通常ならば停止して安全確認をすべき事態にもかかわらず、原発の運転を優先したのだという。
 これは大変危険な状況だ。
 昨年10月段階で、燃料漏えいは確認されていた。そのため、監視を続けていたところ、この漏えいは拡大の傾向を示し、中国の運転停止基準を越える事態になった。
 フランスの規制では、原発を48時間以内に停止するレベルを超え、2倍の水準になったところで、中国の安全当局はこれを引き上げる判断をしたという。
 そのいきさつは、フランス電力から米国のNRCなどに伝えられ協力を要請したのだろう。それをCNNがスクープしたか、CNNにも情報が伝えられていたと考えられる。
 これは核燃料をフランスが供給している関係で、フランスと米国の間の情報共有条約などが関係している可能性がある。
 また、今後重大事態に進展する場合、フランス電力は必要な対応を取っており、挙げて責任は中国電力当局にあるという伏線を張っているのであろう。

◎中国も日本も「安全より経済」の現実

 原発の安全上の問題と電力供給逼迫が重なったら、どちらが優先されるか。
 日本でもしばしば問題になり、震災前には安全よりも経済性を優先したために福島第一原発事故が起きたと、東京電力自ら認めている。規制当局も同様だった。
 では、今は解消されたかと言えば、今年の夏の電力逼迫予想に対して、関西電力は特定重大事故対処等施設が完成していないため10月には運転を止めなければならない美浜原発3号機を再稼働し、10月までの僅かな期間でも動かそうとしていることを見ても、結局震災前と変わっていないことを示した。
 東京電力も、柏崎刈羽原発で度重なる不祥事を引き起こし、原子力規制委員会による特別検査を受けている現段階で、収益性の改善のために2022年度中に柏崎刈羽原発の再稼働を経営再建計画(総合特別事業計画)を発表するなど、安全よりも経済(経営)の姿勢を露骨に表している。
 日本も中国も、結局「安全より経済」は変わらない。
 これで、ただでさえ危険な原発のリスクは、さらに高まり続けるのである。
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