[2021_05_29_02]老朽原発の再稼働で見えた 危険すぎる政策 小沼紀雄(文筆家)(たんぽぽ舎2021年5月29日)
 
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老朽原発の再稼働で見えた 危険すぎる政策 小沼紀雄(文筆家)

 稼働40年超の老朽原発、美浜原発3号機が6月下旬にも再稼働します。
 国民の大半が原発の廃炉を望む中、なぜ危険な老朽原発の再稼働なのか。
 そこからは全てを先送りして目先の利益を求める姿勢が見えます。

◎認めた老朽原発の再稼働

 杉本達治福井県知事は4月28日、運転開始から40年を超えた、関西電力の美浜原発3号機、高浜原発1号機、2号機の老朽原発3基の再稼働に同意しました。
 この決定を受けて関電は、早ければ6月下旬にも、まずは美浜原発3号機からの再稼働に踏み切ります。
 「原発の運転期間を原則40年まで」と定めた2013年7月の改正原子炉等規制法で、極めて「例外的な措置」と位置づけられた老朽原発の稼働20年延長時代が始まったのです。 (中略)

◎決め手となった交付金

 最終的な同意の決め手となったのが、「40年超運転に対応した立地県への1発電所につき最大で25億円を交付する」政府交付金の拡充策でした。(中略) 今回の経緯は、原発立地自治体の原発依存体質を改めて浮かび上がらせました。

◎原発再稼働にかける政府

 根本問題から目を背け、全てを先送りして目先のお金を追い求めるのは、政府も同じです。
 「エネルギー基本計画」では、2030年度の総発電量に占める電源構成比をLNG27%、石油3%、石炭26%、再生可能エネルギー22〜24%、原発20〜22%としています。
 しかし、この目標を達成するには、6%前後にすぎない現在の原発構成比を、いかに高めていけるのかが最大の課題です。
 それなくしては、菅政権のめざす、温室効果ガスの排出をゼロにする2050年度「カーボンニュートラル」も、2030年度までの「温室効果ガス2013年度比46%削減」もできません。
 目標の原発構成比を達成するには30基前後の原発再稼働が必要ですが、再稼働が認められている原発9基のうち、定期検査が長期化している4基を除くと、現在稼働中の原発は5基にすぎません。
 なんとしても、再稼働許可の出ている7基の原発再稼働を実現し、11基の再稼働申請中の原発再稼働許可もできるだけ早く得たいというのが政府の本音です。

◎再稼働の核となる老朽原発

 問題は、再稼働許可を得ている原発7基のうち美浜3号機、高浜1号機、2号機、東海第二の4基が稼働40年超の老朽原発ということ。
 現在稼働中の高浜3号機、4号機、九州電力川内原発1号機、2号機の4基も、5年後には稼働40年を迎えます。(中略)

◎そもそもは30年ルール

 福島原発事故後の改正原子炉等規制法の過程で、「原発運転40年ルール」が独り歩きしてしまいましたが、原発稼働当初は、「原発運転30年」がそもそものルールでした。
 原発の場合、電気事業法施行規則第91条で最長13ヵ月に1回の定期検査が義務付けられており、2003年10月の制度改正で、運転開始後30年を経過する原発は、「自然災害への備えの強化や過酷事故対策を義務づけた新規制基準に適合すれば、1回だけ最長20年間までの延長を認める」とする「例外」規定が盛り込まれました。(中略)

◎危険な老朽原発

 ただ、経験をもとにした想定内の原発検査では、未発見の現象を防ぐことができないのは、福島原発事故で実証済みです。
 老朽原発の再稼働、危険すぎます。
     (「食品と暮らしの安全」2021.6.1発行 No386より抜粋)
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