[2023_08_31_23]むつ市長「確実な時期を」 知事「見通し掲示は評価」 RFS事業開始新目標 解説 提示迫られ苦肉の新工程(東奥日報2023年8月31日)
 
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むつ市長「確実な時期を」 知事「見通し掲示は評価」 RFS事業開始新目標 解説 提示迫られ苦肉の新工程

 30日にリサイクル燃料貯蔵(むつ市、RFS)が使用済み核燃料中間貯蔵施設の新たな事業開始目標を示したことを受け、山本知也むつ市長は「確実に達成できる時期を主体的に示すことが重要」と強調。核燃料の搬入めどが立った時点で、RFSに精度の高い事業開始時期や搬入計画を示すよう求めた。宮下宗一郎知事は報道陣に「時期だけでなく安全協定など、やらなければいけないことの見通しを示したことは一定の評価ができる」と述べた。
 山本市長は、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)に発令中の移動禁止命令を踏まえ、「環境が整い次第、速やかに事業開始時期の見通しを示す」「2棟目建設を含め、50年間で5千トンを貯蔵する具体的な見通しの明示」などを求めた。高橋泰成社長は「適切な時期に示す」といずれも承諾。使用済み核燃料の搬入計画は禁止命令の解除後、速やかに提示するとした。
 「23年度」から「24年度上期まで」へ幅を広げた新工程に、山本市長は「後退」と表現しつつも、「時期の明示は前進と理解し、確実に24年度上期までに事業開始してほしい」と述べた。
 宮下知事はRFSが「開始時期を見極められないーと木で鼻をくくったような答弁をずっと繰り返してきた」経緯を踏まえ、時期を明示した対応を評価。一方で、高橋社長に対し「(禁止命令など)外側の論理だけで決められないということがないように」とくぎを刺す一幕もあった。(佐々木大輔、山内はるみ)

 解説 提示迫られ苦肉の新工程

 事業開始時期の見極めは困難な状況にもかかわらず「2023年度下期〜24年度上期を念頭に、今後の準備を進めたい」との新工程が示された。時期の提示を迫られた事業者が、不確定要素を度外視してひねり出した、苦肉の策だった。
 リサイクル燃料貯蔵(むつ市、RFS)は使用済み核燃料中間貯蔵施設の操業に向け、核燃料を東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)から海上輸送し、搬入した上で最終検査に臨む。事業開始前に不可欠なエ程だ。しかし同原発は規制当局が核燃料の移動禁止を命令中。解除されなければ輸送・搬入は認められない。
 解除を待つほかないRFSにとって、今の時点で事業開始時期を「はっきり示すのはかなり厳しい」(同社幹部)情勢だった。具体的な時期の明示は「規制側を刺激して逆に解除が遠のきかねない」(別の関係者)との懸念もあった。
 そこに宮下宗一郎知事が一石を投じた。RFSに向けて「見極められないとは言えないはずだ」と言及。むつに拠点を置く事業者の主体性と責任を問うた。
 RFS側は「できるだけ明確化を図った答え」を検討。規制当局への配慮も念頭に、具体的な時期の明示や確定的な表現を避けつつ、新工程を絞り出した。「ぎりぎりのライン」(関係者)を引き、知事から「一足の評価」を得た。
 ただ、解除時期を見通せないことに変わりはなく、障壁解消の道筋も今はまだ見えない。
    (佐々木大輔)
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