[2023_05_12_11]珠洲原発(石川県)建設予定地を襲う地震 建設されていなかったことが幸いし原発事故を回避した 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2023年5月12日)
 
参照元
珠洲原発(石川県)建設予定地を襲う地震 建設されていなかったことが幸いし原発事故を回避した 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 ◎珠洲市で群発性の地震発生

 2023年5月5日、石川県珠洲市でマグニチュード6.5、震源深さ12km、最大震度6強の地震が発生した。
 この地では、2022年6月にも、マグニチュード5.4、最大震度6弱の地震が起きており、約3年にわたり群発地震が発生する事態となっている。
 一つ一つの地震は大きくないとしても、この一連の群発地震のなかで最大クラスのものとなった5月5日の地震では死者1名を記録し、人命の危機も高まっている。
 2022年6月の地震に比べても今回の地震はエネルギー比は約40〜50倍の大きな地震だった。
 今後もマグニチュード7を超える地震が起きない保障もない中で、地元の人々には、大きな不安と災害による被災が襲いかかっている。既に石川県や赤十字などが義援金の募集をしており、可能な限りの支援をしていただきたい。

◎珠洲原発計画とは

 1975年に計画が明らかになった珠洲原発計画。
 ここは北陸電力管内だが、関西電力、中部電力と北陸電力が共同で開発する原発として計画された。
 計画地は2カ所あり、寺家(じけ)地区と高屋地区が候補地とされた。
 2カ所はかなり離れていて、寺家地区は日本海に面しており、高屋地区は富山湾側に向いていた。(正確に言えば富山湾よりも付き出しているので日本海側でも90度東を向いた角度に相当する場所だった)

 計画の発端は珠洲市議会全員協議会が1975年に原発建設の適否の調査を国に要望するところから公式には始まった。
 これが事実上の原発誘致表明に当たる。
 珠洲市は能登半島の先端という場所もあり、人口減少が進んでいた。
 そのための地域振興の一環として原発誘致至ったとされる。

 住民運動の動きがそれに続いた。
 1978年3月25日に珠洲原発に反対する3者(地区労、日本社会党珠洲総支部、新しい珠洲を考える会)が連携して原発反対運動を強力に推進するために、「珠洲原発反対連絡協議会(通称:反連協)」を発足する設立総会を開催した。
 1979年に米スリーマイル原発事故、1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故が起き、原発反対の声は全市に広がっていった。
 関西電力は1989年には高屋地区で立地可能性調査を試みたが住民約300人が市役所で40日間にわたって座り込みを続けたこともあり計画は具体化しないまま推移した。
 関西電力の動きに対し、高屋では、昼夜を問わず監視行動が続けられ、NHKでも全国放送のドキュメンタリー番組「原発立地はこうして進む」でも取り上げられた。
 市役所ぐるみの原発推進と市長選挙での不正、違法行為が横行したことで、選挙無効にもなる異常な状況が続き、原発反対の声は有権者の過半数を超える勢いになっていた。
 2003年12月に関西・中部・北陸電力の3社長が珠洲市役所を訪れ「珠洲原発の凍結」を申し入れた。
 28年間に及んだ珠洲原発計画は,調査も出来ないまま撤退したのだった。
 (以上は主に『石川県教組珠洲支部50年誌 いばらの歩み』を参考にした)

◎珠洲原発があったらと思うとぞっとする

 この地に珠洲原発が2基計画されていた。135万kW級が2基とされるが、おそらく高屋地区が関電なのでこちらは加圧水型軽水炉、寺家地区が中部北陸電力なので沸騰水型軽水炉が建設される予定だったと思われる。
 今回の地震の震源と建設予定地の位置を地図上にプロットした図(地震が良く分かる会「珠洲群発地震と志賀原発・珠洲原発」より)を見ると、直下地震として定義したマグニチュード6.5震源距離10キロであり、ほぼ定義通りの直下地震といえる。
 もし仮に、東日本大震災を起こした地震が2011年に発生せず、原発建設計画がそのまま進展し、珠洲原発が建設されていたとしたらどうだったか。
 おそらく、柏崎刈羽原発のように真下で起きた地震により重大な損傷を受けた原発が、メルトダウンを起こすような事故を起こしていた可能性も否定できない。

 今回の地震では、防災科研の強震動データに基づけば最大加速度729ガル(重力加速度・三成分合成値KiK−net珠洲ISKH01)を記録した。他に4つの地点でも500ガルを超える揺れを記録している。
 一般に原発の基準地震動は、原発の基礎板よりも深いところにある基盤上で算定される。
 地盤によっては地表面よりも大きな揺れになる場合もある。
 実際に中越沖地震がそうだった。(柏崎刈羽原発では地表面700ガル程度に対して開放基盤表面では1699ガルと評価された)
 珠洲原発が建設されていたならば、基準地震動と同程度の揺れに襲われることになったであろう。
 これでメルトダウンをするかどうかは、何がその後起きるかにより変わってくるが、きわどい値であることは間違いない。
 しかもこの地点は、群発地震の様相を呈しており、これまでも繰り返し揺れに襲われていた。そういった応力集中(低サイクル疲労)の影響もある。

◎原子力規制委は志賀原発の活断層を否定したが

 規制委は3月3日の審査会合で志賀原発の敷地内にある断層が13万〜12万年前以降には活動していなとする北陸電力の説明を妥当とし、規制基準に定める「将来活動する可能性のある断層等」にはあたらないとする見解を示した。
 これにより敷地の断層のうち、S−1、S−2・S−6の断層について、2016年には活断層としていた見解を否定した。
 しかし珠洲地震のように、それまで大きな地震が知られていないところで、未知のメカニズムによる地震の多発が、同じ能登半島にある志賀原発で起きない保障があるのだろうか。
 また、これらの断層は地震を起こす主断層ではなく別の活断層が動いたときに引きずられて動くような断層であるとしたら、この断層の活動性が正当に評価したと言えるのか疑問だ。
 断層といってもわずかに地表近くの地盤を調べたに過ぎず、地下10キロ以上も深いところを正確に知る方法などは無い。
 断層が露出しているようなところでは、その地域で大きな地震が頻発するかどうかが重要であり、局所的な断層の活動性を否定してもほとんど意味はないのではないか。
 志賀原発は7つの断層に囲まれている。そのうえ前面の海域には、2007年能登半島沖地震の震源となった活断層を含む活断層に囲まれている。
 このような地域に立地したこと自体、大きな間違いであることを珠洲の地震は証明しているのではないだろうか。
          (初出:5/12発行、たんぽぽ舎「金曜ビラ」)
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