[2023_04_05_01]原発再稼働を阻む相次ぐ不備 敦賀2号機の審査再中断(日経新聞2023年4月5日)
 
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原発再稼働を阻む相次ぐ不備 敦賀2号機の審査再中断

 2023年4月5日 20:30
 原子力規制委員会は5日、日本原子力発電の敦賀原子力発電所2号機(福井県)の再稼働に向けた安全審査を再び中断する方針を決めた。日本原電が安全審査に必要な書類のミスを繰り返しているためだ。原発を安全に運転できることを事業者側が示せなければ、原発の活用を前提とする国の脱炭素目標の達成にも疑問符がつきかねない。
 東京電力ホールディングス(HD)の柏崎刈羽原発(新潟県)もテロ対策の不備が発覚して再稼働できていない。
 規制委は日本原電に申請書類の一部を8月末までに修正するよう求める行政指導を出す。安全審査に合格しなければ再稼働は認められない。
 日本原電が規制委に審査を申請したのは2015年11月。焦点は原子炉建屋の直下の断層が活断層かどうかだった。19年に1000カ所以上の記載不備が見つかり、20年には敷地内の掘削調査による地質の観測記録の一部書き換えが明らかになった。
 こうした問題を受けて規制委は審査を2年間ほど中断し、22年12月に審査を再開したばかりだった。その後も資料の誤りが発覚し実質的な審査に入れていない。5日の規制委では審査を事実上打ち切る案と、資料の補正を求めて中断する案の2案が示された。
 規制委の山中伸介委員長は5日の記者会見で「審査ができない状態が続くのは非常に好ましくない」と語り、日本原電の書類チェック体制や社長のマネジメントに問題があると指摘した。
 「これが基本的に最後の判断だ」とも強調。改めて提出される書類に基づき「不許可か許可の判断をする2択になる」と述べ、不備があれば規制委で議論した上で再稼働を不許可にする可能性も示唆した。近く日本原電の意思を確認する会議を開く。
 日本原電は原発専業の企業であり、原発分野に集中できる体制にある。それでも審査申請から7年以上たってなお再稼働に必要な書類を整えられないことへの規制委側の不信感は大きい。
 日本原電は東海第2原発原発(茨城県)の再稼働も目指している。規制委の審査には合格したものの、自治体同意の見通しが立たずに再稼働できていない。日本原電が優先的に東海第2原発原発に人手を割いているのではないかとの見方もある。
 日本原電は5日、規制委の方針を巡り「議論を重く受け止めて真摯に対応する」とのコメントを発表した。過去のミスについては「資料の作成過程で古いデータを誤って印刷していた初歩的なミスだった」(担当者)と説明する。
 今回の不備の原因は「調査中」だというが、安全性への意識や社内のガバナンスが欠如していたとみられる。

 原発を巡る不備は日本原電だけではない。

 東電HDの柏崎刈羽原発6、7号機は17年に規制委の安全審査を通過したが、IDカード不正使用といったテロ対策の不備が21年に発覚した。規制委が是正措置命令を出し、それが解除になるまで再稼働は認められない。新潟県など地元自治体の同意も得られていない。
 岸田文雄政権は脱炭素と電力の安定供給のために原発を最大限活用する方針にカジを切った。エネルギー基本計画では30年度の電源構成のうち原子力を20〜22%とする目標を掲げる。
 達成するためには安全が確認できた原発の再稼働が前提となるが、不祥事が続けば目標達成はおぼつかない。
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