[2022_12_21_01]原発賠償基準を9年ぶり見直し 東京電力の不誠実な姿勢に「警告」(東京新聞2022年12月21日)
 
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原発賠償基準を9年ぶり見直し 東京電力の不誠実な姿勢に「警告」

 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)は20日、東京電力福島第一原発事故の賠償基準「中間指針」を9年ぶりに見直し、対象を拡大する方針で一致した。追加賠償の対象は100万人を超え、賠償額は5000億円前後増える可能性がある。

 ◆ 放置してきた国にも責任

 「東京電力は、指針が示す損害額はあくまで目安で、賠償の上限ではないことにあらためて留意を」「被害者の心情に配慮した誠実な対応が求められる」
 国が定める福島原発事故の賠償基準「中間指針」の改訂版は東電にそう、くぎを刺した。
 東電はこれまで、指針以上の賠償になかなか応じなかった。不誠実な姿勢に対する被災者の訴えを受け、事故から11年以上が過ぎてようやく明示された「警告」だ。一方で、警告はあまりに遅く、国も東電の賠償を指導、監督する立場にありながら、放置してきた責任は免れない。
 東電は自らが定めた賠償に対する誓いで、裁判よりも短期間で進む裁判外紛争解決手続き(ADR)で示された和解案を尊重すると約束した。しかし、指針を上回る和解案を東電が拒否し、被災者との交渉が打ち切られたケースはこれまでに55件に上る。
 和解案を東電が受け入れず、交渉をあきらめた被災者もいた。この集団交渉に加わった福島県相馬市の男性は「東電は被災者の苦しみに向き合わず、賠償金を払いたくない姿勢が明白だった。国がそれを許すから、被災者はいつまでたっても救われない」と話す。

 ◆東電社長、それでも「柏崎刈羽原発の再稼働目指す」

 指針改定が決まった20日、経済産業省は東電の小早川智明社長を呼び出し、迅速な賠償を求めた。「福島への責任を果たす」と、沈痛な表情の小早川氏。報道陣の取材で、政府の原発活用策への対応を問われ「柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を目指したい」と答えた。果たしてこれが被災者に寄り添う姿勢なのか、疑問は尽きない。 (小野沢健太、増井のぞみ)
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