[2022_11_07_04]不祥事続いた柏崎刈羽原発 東電、信頼回復に奔走 再稼働、容認と反対(茨城新聞2022年11月7日)
 
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不祥事続いた柏崎刈羽原発 東電、信頼回復に奔走 再稼働、容認と反対

 ■住民側「体質変わらぬ」

 脱炭素と安定的な電力供給を図るため、政府は2023年夏以降に日本原子力発電(原電)東海第2原発(茨城県東海村)を含む全国7基の原発の再稼働を目指す方針を示している。この7基の一つで、東海第2と同型(沸騰水型)の東京電力柏崎刈羽原発が、新潟県柏崎市と刈羽村にまたがり立地する。不祥事が絶えず信頼回復に奔走する東電、度重なる裏切り≠ェあっても再稼働を容認する自治体や経済界、「体質は変わらない」と反対姿勢を貫く住民-。地元の思いが交錯する様子を取材した。

 ■あいさつが第一歩

 砂丘と松林を切り開いた海岸に柏崎刈羽原発は立つ。日本海沿いで発電した電気は主に首都圏に送られる。
 柏崎刈羽ではここ数年、不祥事や不備が相次いで発覚した。他人のIDカードの不正使用や、侵入者を検知する機器の故障などだ。安全対策工事の一部未完了や配管の手抜き工事も明らかになった。一連の問題を受け、東電は36項目にわたる改善措置計画を作った。
 「IDカードや鍵の貸し借り、絶対禁止」。6号機建屋のゲートでポスターが目に入った。複数の生体認証も設け、本人確認を徹底する。
 社員や協力企業の従業員が「お疲れさまです」「ご安全に」とあいさつし、声が構内に響く。今年4月に始めた「あいさつ運動」の一環で、不祥事防止対策の肝という。
 東電は不祥事の背景にコミュニケーション不足を挙げる。担当者は「小学生のような問題かもしれないが、あいさつはコミュニケーションの第一歩。日頃から意思疎通できる環境づくりが重要」と強調する。

 ■複合災害も訓練

 柏崎市の桜井雅浩市長(60)は、度重なる不祥事を「お粗末」と切り捨て、「見過ごしてきたわれわれ、原子力規制庁もお粗末だ」と自戒も込める。
 地元生まれで市議も務めた桜井市長は、現在2期目。原発については、エネルギー安全保障や地球温暖化などの観点から、基数と運転期間を絞る「限定的な容認」の姿勢だ。地元の民意も同様の考えが占めると推測する。
 市は20年、市民を対象にエネルギー政策に関する意識調査を実施した。柏崎刈羽の在り方は、「できる限り減らしていくが、限定的な再稼働が必要」「徐々に減らしていき、将来は全て廃炉にする」との回答が合計約68%に上った。
 人口約7万9千人の同市は、全域が原子力災害広域避難計画の対象に入る。市は14年に避難計画を策定。以降、4度修正しており、地震や津波、暴風雪など自然災害を伴う複合災害の対応も追加した。複合災害を想定した避難訓練にも取り組み、厳冬期に住民を雪上車で運び、海路輸送も試行した。
 東電は柏崎刈羽の再稼働時期を示していない。桜井市長は「一つ一つ課題を積み上げて検証したい」と語る。

 ■高まる不信

 柏崎商工会議所の西川正男会頭(66)も「信頼関係は、がたがたと崩れた。取り戻すのは並大抵ではない」と東電に厳しい態度を見せる。ただ、製造業を営む会頭自身にとっても電気代高騰は苦しい局面。「原発による低廉で安価な電気供給は日本のものづくりを救う。安全を前提に、早く柏崎刈羽を動かしてほしい」と再稼働を望む。
 一方、原発に反対する人たちは東電への不信感を高める。
 元刈羽村議の武本和幸さん(72)は、柏崎刈羽の誘致段階の18歳から反対運動に取り組む。共闘してきた仲間の半分ほどは既に亡くなった。武本さんは「東電は不正をしない、隠さないと約束するが、頭を下げるのは今も日常風景。変わりようがない。地域独占にあぐらをかいている」と批判した。

 ★東京電力柏崎刈羽原発全7基あり、総発電出力は約821万2000キロワットで世界最大級。1号機は1985年に営業運転を開始した。東日本大震災後の2012年から全基運転停止中。17年に6、7号機は原子力規制委員会の新規制基準審査に「合格」した。核物質防護などを巡り不祥事が相次ぎ、21年に同委から事実上の運転禁止命令を受けた。
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