[2021_10_15_02]海路避難住民乗船なく コロナで縮小 実効性に懸念 愛媛県原子力防災訓練(愛媛新聞2021年10月15日)
 
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海路避難住民乗船なく コロナで縮小 実効性に懸念 愛媛県原子力防災訓練

 愛媛県原子力防災訓練で、四国電力伊方原発(伊方町九町)の重大事故発生時に孤立が懸念される原発以西の住民を海路で町外に運ぶ訓練は、新型コロナウイルス感染防止のため地域住民が全く参加しない異例の光景となった。県や伊方町職員が感染症要配慮者と一般住民を分けて輸送する手順などを確認したが、住民からは実際の災害時の実効性を懸念する声も聞かれた。
 例年の訓練では、バスなどで送られた住民数十人が船に乗り込んでいた三崎港(同町三崎)。今年は行政職員数人だけが淡々と訓練を進めた。要配慮者を運ぶ便では、住民役の町職員らが手指を消毒、飛沫(ひまつ)感染防止のパーティションで区切った座席に着き八幡浜港に向かった。
 一般住民が乗る便は、県職員2人が乗船までの流れを確認しただけで、実際に搬送はしなかった。三机港(同町三机)では田中英樹副知事ら6人が松山海上保安部の巡視艇に乗り大分県の大分港へ。例年とは異なる船を利用し、接岸などを確認した。
 県原子力安全対策課によると陸・海・空計17ルートの避難を想定していたが14ルートを中止した。住民からも「感染防止のため今年の参加は見合わせたい」との声があったという。同課は訓練の意義を「要員の能力向上」と説明する。ただ住民を受け入れる一時集結所の開設はなく、乗船時の行政職員と船員のやりとりも少なかった。
 町民からは「コロナ禍では仕方ない」との声がある一方、簡略化を心配する声もある。ほぼ毎年訓練に参加してきたという同町田部の武井良一区長(74)は「避難方法を忘れないためにも、継続して住民も参加すべきだ」。三崎地域の無職男性(71)は「以前大分県に船で渡った時は人数も多く船内が狭かった。コロナ禍だからこそ多くの搬送手段を用意して分散して避難することを考えてもよかったのでは」と話す。
 中村時広知事は「今年は関係機関の連携や情報収集に重点を置き、しっかりできたと考えている。来年以降も感染状況をみながら、住民全員参加はできなくても訓練と検証を繰り返したい」とした。(後略)
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