[2021_01_19_03]電事連 プルサーマル30年度12基 目標達成 道のり険しく 電力各社 導入進まず(東奥日報2021年1月19日)
 
 電気事業連合会は昨年12月、新たなプルサーマル計画を公表し、一般の原子炉でMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料を燃やすプルサーマル原発について「2030年度までに少なくとも12基」とする目標を掲げた。「中間目標」(池辺和弘会長)との位置付けで、従来の「16〜18基」は堅持する考え。だが、これまで原子力発電を行ってきた10社のうちプルサーマルが未導入の社は半数超。安全審査や地元手続きなど「高い壁」もあり、残り10年での目標達成に向け各社は厳しい対応を迫られることになる。
    (加藤景子)

 電事連によると、目標の12基は、日本原燃・六ヶ所再処理工場(六ヶ所村)がフル稼働して取り出されるプルトニウムの量から算定した。計画では「稼働する全ての原子炉を対象に1基でも多く導入できるよう検討する」とも定めた。「16〜18基」の目標は、英仏での再処理で発生した海外保有分のプルトニウムと、六ヶ所再処理工場で回収される量を「確実に利用する」ために掲げた基数だった。
 新しい規制基準の下、安全審査に合格し再稼働に至ったプルサーマル原発は、関西電力高浜3、4号機、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3号機の計4基。電事連によると、プルサーマル導入に関わる国の許可を取得している原発はほかに、大間町に建設中の電源開発(Jパワー)大間原発を含め6基ある。
 ただ各社への取材では、手続きの停滞や、東京電力福島第1原発事故による環境の激変で「導入時期を示す段階にない」とする社も多い。
 東通1号機(東通村)が着工済みの東京電力ホールディングスは、事故前は福島第1の3号機でプルサーマル発電を行っていた。柏崎刈羽3号機も国の許可を得たものの、原発トラブル隠し発覚で地元から事前了解を取り消されている。原発事故への対応もあり、同社はプルサーマル導入に対し「具体的な計画を見通せる状況にない」と回答した。
 東北電力は女川3号機への導入を計画しているが、安全審査の申請はこれから。大間原発は、全炉心でMOX燃料を燃やすことができ、プルトニウム利用の要として期待されるが、審査の長期化により、Jパワーは昨年、運転開始見込みを28年度に繰り延べた。
 新たなプルサーマル計画に対し、梶山弘志経済産業相は昨年12月の会見で「事業者が継続的な努力をする中で12基という目標は達成可能と考えている。しっかりと達成していただくよう期待している」と述べた。
 一方、原子力政策に詳しい明治大学の勝田忠広教授は「MOX燃料を使う原発が30年度までに12基稼働できるとは思えない。肝心なのは日本が既に海外にプルトニウムを抱えていること。『利用目的のないプルトニウムは持たない』との考え方に従えば、10年以上は再処理工場を動かす必要はない」と話した。

 プルサーマル計画 電気事業連合会は1997年、原発を運営する電力各社がプルサーマルを順次実施し、2010年度までに計16〜18基で導入するとの計画を策定した。03年にも目標を再確認したが、09年には時期を「15年度まで」に繰り延べた。11年の東京電力福島第1原発事故を受け計画の見直しを迫られていた。プルサーマル導入を巡っては、燃料のデータ捏造(ねつぞう)、シンポジウムでの「やらせ」など各地で問題が発覚、地元手続きの長期停滞につながった原発もある。
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