[2020_02_07_02]伊方原発3号機、運転差し止めを命じる決定 広島高裁(週刊金曜日2020年2月7日)
 
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伊方原発3号機、運転差し止めを命じる決定 広島高裁

 1月17日、広島高等裁判所前。駆け出てきた住民らが「勝訴」「伊方3号機運転差止」の垂れ幕を掲げると、集まった市民らから「勝ったぁ!」「よかった!」「やったー」と歓声が沸き起こった。広島高裁民事4部(森一岳裁判長)が、四国電力(四電)伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止め仮処分を認めなかった山口地裁岩国支部の決定を取り消し、運転を認めない判断を示したのだ。
 運転禁止期間は本訴の第一審言い渡しまで。四電は早期に異議と執行停止の不服申し立てをする方針だが、2017年12月提訴の本訴は20年2月に第6回口頭弁論を予定している段階で、不服申し立てが認められなかった場合、運転停止が長期化する可能性もある。
 伊方原発をめぐる裁判で、地震に関する四電側の主張が退けられたのは初めて。中村覚弁護団長は「地震と火山の両方で勝った。全面勝訴と言っても過言ではない」と強調。さらに「とりわけ力を入れて繰り返し主張した点が認められた。中央構造線断層帯が動いたら伊方原発に取り返しがつかないことになると、阪神・淡路大震災の発生から25年のこの日に決定が出たことは、日本が地震国で、いつどこで大きな地震が起きてもおかしくないことを裁判所が警告してくれたのだと思う」と述べた。

【四国電力の想定は「過小評価」と結論】

 今回の決定において広島高裁は、原子炉が備えるべき安全性について、住民らが求めた福島第一原発事故のような事故を二度と起こさないようにする安全性を判断に当たり傾聴するとした。
 17年に公表された中央構造線断層帯長期評価が、中央構造線が活断層とは認定できないとし、四電調査は不十分としていること、地質境界としての中央構造線が正断層成分を含む横ずれ断層で「震源が、敷地に極めて近い場合」に該当する可能性があり、活断層であることを否定できないとした。
 この点については広島大学の早坂康隆准教授も本誌16年10月21日号で、伊方原発から600メートルの至近距離を中央構造線が走っていて、マグニチュード(M)8・0もしくはそれ以上の地震が発生する危険性があると指摘している。阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震はM7・3で、Mが0・2上がると地震のエネルギーは2倍となる。
 今回の決定は火山問題について立地不適とまでは言えないとしたものの、「考え方」にもとづく四電の主張については「火山ガイド」の定めに逸脱していると断じた。そして、四電の降下火砕物(火山灰)の想定は過小評価で、これを前提とした大気中濃度の想定も過小評価であるとした。

【住民側「常識的な判断」四電には徹底調査を】

 この仮処分の申立人は離島に住んでいる。避難計画について原審の山口地裁岩国支部は、自治体が対応できない場合は全国実働組織が支援することになっているなどと、なんら具体的ではない無責任な判断をした。広島高裁が、この原審の判断に触れていない点は残念だ。
 広島弁護士会館での記者会見を兼ねた報告集会には200人を超える報道関係者、支援者が集まった。冒頭に挨拶した伊方原発を止める山口裁判の会の原告団副団長の窪田伸子さんは「裁判所の常識的な判断に、敬意を表します」と声を詰まらせながら喜びを語り、福島第一原発事故の被害に触れ「原子力発電所の建設自体が基本的人権を侵害している。伊方原発の過酷事故が起きれば豊饒の海すべてが奪われる。離島に住む方々は避難できない。建設自体がそもそも間違っていた」と述べた。
 中村弁護士は最後に「四国電力が異議を出すこと自体が極めて不当だと考えている。なぜなら今回の決定では非常に常識的な判断をしているわけで、不服申し立てをする暇があるならボーリング調査などで活断層かどうかをはっきりさせていただきたい」と語った。もっとも四電が異議を出してくれば全力投球して臨むとも述べた。

(脱原発弁護団全国連絡会、2020年1月24日号)
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