[2020_10_08_09]サイクル なお前途多難 原燃MOX工場「合格」 プル消費体制 不十分 「サイクル政策堅持」 県議会特別委で国が強調(東奥日報2020年10月8日)
 
 日本原燃のMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料加工工場(六ヶ所村)について、原子力規制委員会が事実上の合格証に当たる審査書案を了承、原燃が運営する核燃料サイクル施設はこれで新規制基準の適合性審査に一定のめどがついたと言える。だが、再処理、MOXの両工場が稼働しても、ブルトニウム消費が進む環境が整わなければ「開店休業」になりかねない。使用済みMOX燃料の問題も置き去りにされたままだ。(本紙取材班)    

 「資源のない日本は一貫して核燃料サイクル政策を基本方針としてきた。エネルギー基本計画の中でもうたわれており、私どもはこの政策をしっかり遂行していく」。梶山弘志経済産業相は8月、本紙取材にこう強調した。
 その前途は多難だ。再処理工場はフル稼働で年間約7トンのプルトニウムを生み出すが、日本は既に約45・5トンを国内外に抱える。プルトニウムは核兵器にも転用可能だとして国際社会が懸念を示しており、将来的に再処理量に制限がかかる可能性も指摘されている。
 プルトニウム利用の主役となるはずだった高速増殖炉は、原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉に伴い道が閉ざされた。現時点での消費は、一般の原発でMOX燃料を燃やすプルサーマルに託されている。
 福島発1原発事故以降、再稼働に至ったプルサーマル原発は4基で、ブルトニウムの消費量は年間2トン程度。全炉心にMOX燃料を装荷でき、ブルトニウム消費の期待がかかる電源開発、大間原発(大間町)は審査終結の見通しが立たず、電源開発は9月、運転開始目標を「2028年度見込み」へ繰り延べた。
 使用済みMOX燃料の行き先も課題になっている。
 今年1月には、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)から初めて使用済みMOXが取り出された。使用済みMOXは一般的な燃料より発熱量が高く毒性も強いため、長期間プールで冷やし続ける必要がある。国は、使用済みMOXも再処理するーとの方針を掲げるが、そのための「第2再処理工場」は具体的な計画はない。
 将来像が不明確な現状下では、たとえプルサーマルが進展しても、使い道が不明な使用済みMOXがたまり続けることになる。

 「サイクル政策堅持」 県議会特別委で国が強調

 県議会は7日、原子力・エネルギー対策特別委員会を県庁で開いた。参考人として出席した経済産業省の担当者は、使用済み核燃料を再処理して取り出したブルトニウムを原発で燃やすプルサーマル発電を含む、核燃料サイクル政策の堅持と必要性をあらためて強調した。
 特別委は、日本原燃・六ケ所再処理工場が原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に合格したことなどを踏まえて開催。9委員が国のほか、県内に原子力施設を展開・計画する5事業者、関係機関などに対し、政策や各施設の安全対策などについて姿勢をただした。
 同省資源エネルギー庁の河野太志原子力立地・核燃料サイクル産業課長は、プルトニウムの削減方針を盛り込んだエネルギー基本計画などに基づいてプルサーマルを進める考えを説明。規制委の審査を終えた原発の再稼働が進めば「プルトニウムの消費も進む」と述べ、全炉心でブルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使う電源開発・大間原発(建設中)については「プルトニウム削減の観点でも重要な原発の一っ」との見解を示した。
 このほか、建設が中断している東京電力東通原発1号機について、東電ホールディングスの宗一誠常務執行役・青森事業本部長は「重要かつ不可欠な電源であることはいささかも変わらない」として、地質調査などを経て、建設を進める考えをあらためて強調した。
 委員からは「審査の長期化解消へ、規制委側は審査の基準や指針を明確に事業者に示すべきだ」(越前陽悦委員)、「経年劣化が進む再処理工場は、新規制基準に基づき施設を建て直すのも選択肢の一つ」(田中満委員)などの意見が出た。
     (安達一将)

         MOX燃料工場の経緯

1998年12月 電気事業連合会がMOX燃料加工事業に関する事業化調査を日本原燃に協力依頼、原燃が調査開始
2000年11月 電事連が六ヶ所村立地を前提に事業主体になるよう原燃に要請、原燃が事業主体を表明
2000年12月 原燃が核燃料サイクル開発機構(現:日本原子力研究開発機構)と建設・運転等に関する技術協力協定を締結
2001年8月  原燃が県と村に立地協力要請
2005年4月  県、村、原燃が基本協定締結
      原燃、経済産業省に核燃料物質加工事業許可申請書を提出
2010年5月  経産省が事業を許可
2010年10月 工場着工
2011年3月  東日本大震災、福島第一原発事故
2014年1月  原子力規制委員会に事業変更許可を申請、安全審査がスタート
2020年7月  再処理工場が正式合格
2020年10月7日 規制委がMOX工場の審査書案を了承、事実上の合格
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