[1970_02_25_01]原子力発電所 陸奥湾・小川原湖地区に建設 百万キロワットの大規模 東北電力 東京電力 共同で開発へ 企業ベースの発電所(東奥日報1970年2月25日)
 
 竹内知事は24日の記者会見で「陸奥湾・小川原湖海大型工業開発の基幹エネルギ一に原子力をあて、企業立地の付近にわが国最大の動力炉を持つ原子力発電所を東北電力と東京電力が共同で建設することが決まった」と発表した。これまで同開発計画は構想の域を出なかったが、具体計画示されたのはこれが第一号。県では直ちに適地調査に乗り出すことにしているが、企業進出に先立ってエネルギー供給基地が建設されることにより、同大型工業開発は予想を上回るペースで大きく動き出したことになる。

 原子力発電所を小川原湖周辺に建設する計画は東北電力の平井寛一郎会長、東京電力の田中直治郎常務、原子力産業会議の松根宗一副会長(アラスカ石油会長)と竹内知事がかねてから話し合いを進めていたもので、さる二十日、東京で行なわれた四者会談で正式に決まった。
 それによると建設は東北電力と東京電力が共同で行ない、原子力産業会議が全面的にバックアップする体制をとる方針。予定地は将来の企業立地と関連するので、県に全面的にまかせることになっているが、敷き地として約一千万平方メートルを希望している。県としてはさっそく適地調査を行なうことにしているが、すでに上北群六カ所村の出戸地区を適地とする結論を出している。また、建設時期については電力側では”かなり早い時期”を考えているものと県では判断している。
 発電所の規模は一基100万キロワット。現在わが国で使用中、あるいは建設中の原子力発電所の最大出力は東京電力福島発電所二号炉の78万4000キロワットなので、中央電力協議会が計画している東北電力新潟発電所の100万キロワットと並んで、わが国最大の規模の動力炉となる。
 一方、陸奥湾・小川原湖臨海大型工業開発は、今度の原子力発電所の建設計画によって企業群の進出が急ピッチになることが予想される。竹内知事は「これで当初考えていたより早まることは確実だ」とし、48年には道路、鉄道といった”建設のための建設″が始まり、50年には早いところでは工場のレイアウトが行なわれる一と見通しを述べているが、原子力発電所を建設する以前に石油精製などの企業の進出が決まれば、とりあえず東北電力が火力発電所を別個に建設することになるという。しかし、同大型工業開発の基幹エネルギーとして原子力全体とするのが今度の建設計画の基本方針となっている。
 この原子力発電所とは別に、さる一月、下北郡東通村に内定した第二原子力研究センター構想があるが、今度の計画は完全に企業のためのエネルギー供給基地としての性格をもつもので、県では第二原研センターを企画庁の政府予算で実現するよう独自に実現を働きかけていく方針だ。
 
 企業ベースの発電所 
 解説 

 むつ原子力船定系港、今年早々に建設が内定した第ニ原研センターに続いて今度は企業ベースの原子力の建設が決まった。決定といっても着工時期など未確定要素が多く、問題点は残されているものの、これまで”わが国最後の工業開発処女地”ともてはやされながら、企業立地側から何一つ具体的な計画が示されなかっただけに意義が大きい。広大な土地、豊かな水に加えて一基100万キロワットのエネルギーが確保されることになれば製鉄、石油といった基幹産業型の進出が容易となり、同開発計画の”先兵”の役割りを果たすことは間違いない。時にアルミなど電力多消費型といわれる非鉄金属など多種多様な工業立地も可能となるメリットがある。
 第二に原子力を基幹エネルギーに”規定”したことでキャッチフレーズの公害のない大型工業開発”が実現する見通しが強まったことがあげられる。原子力は石油に代わるエネルギーとして開発が急ピッチで進んでいるが、全国九電力では52年までに38基、2750万キロワットの原子力発電所を建設する計画。60年には全発電量の25〜30%を原子力が占める見通しで、こうした将来展望に合わせた計画になっているのが注目される。
 これで県内では三つ目の原子力施設が日の目を見ることになる可能性が出てきたが、建設予定地が下北郡東通村の第二原研センターと憐接することから同地区が学術用、企業用をも含めた文字通りの原子力センターになることが約束されることになる。

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