[2021_06_10_04]東通原発 停止13年超へ 規制委審査 申請から7年 続く地震動議論 再稼働は見通せず(東奥日報2021年6月10日)
 
 東北電力東通原発1号機(東通村)の再稼働に向けた新規制基準の適合性審査は、2014年6月10日の申請から7年を迎えた。最大の懸案だった断層の審議は昨夏におおむね終結し、現在は、下北半島の陸奥湾側を南北に走る「横浜断層」を焦点に地震動の議論が進められている。審査の長期化に伴い東北電は4月、安全対策工事の完了時期を3年繰り延べ「24年度」とする新たな目標を提示した。.これにより原発の停止期間は13年を超えることが確実となったが、工事後に控える再稼働の時期は依然、見通せない状況だ。
 この7年で開かれた原子力規制委員会の審査会合は30回。ほとんどの時間を敷地内・周辺の断層を巡る議論に費やしてきた。序盤では、規制委の有識者調査団が敷地内の主要断層について活断層の可能性を指摘したことなどもあり、断層審議は東通原発の安全審査で最大の山場だった。20年7月、規制委の審査チームは東北電の断層評価を了承、地震を発生させる断層を確定させたことで、論点は、設計や安全確認の基準となる地震の揺れの大きさ「基準地震動」の策定に移った。
 地震動は、敷地ごとに震源を特定して策定するものと、特定しないものをそれぞれ評価する必要がある。震源を特定するもののうち、プレート間地震と海洋プレ一ト内地震は審議がほぼ終わった。残る内陸地殻内地震は、基準地震動策定に「一番効いてくる」(東北電関係者)とされる横浜断層(評価長さ約15・4キロ)が焦点となっている。
 現行の基準地震動は600ガル(ガルは加速度の単位)。東北電は「現時点で見直すことは考えていない」と繰り返すが、規制委の審査チームは「変わってくる可能性がある」、との見方を示している。仮に大幅な引き上げが必要となれば耐震工事の増大などに直結するため、横浜断層の審議の行方に注目が集まる。
 一方、地震・津波と設備に大別される審査のうち、設備関連の本格審査はまだ開かれていない。さらに、審査合格後に行う安全対策工事の内容は、規制委から認可を受ける必要もある。耐震をはじめ、事故時の対応拠点となる緊急時対策所、直下の断層を避けて付け替える海水の取水施設など、時間を要する工事も計画されている。
 東北電は4月に工事完了時期の延期を公表したが、再稼働時期は「工事後、準備が整った段階」として明示しなかった。今後の審査や工事の進捗次第ではさらに再稼働が遠のく可能性もあり、思い描く工程が実現するかは不透明だ。
 東通村の畑中稔朗村長は「審査についてはコメントする立場にない」としつつ、原発の長期停止による経済的な影響を懸念。国に対し、「国が決めた基準で原発が停止しているのだから、再稼働に至った際には前面に立って原子力を進めてほしい」と求めた。
 樋口康二郎社長は会見で「いまだ再稼働に至っていないことを重く受け止めている。政府が掲げる2050年カーボンニュートラルを実現するためにも、東通原発の早期再稼働に向けて取り組む。地域の期待にもしっかり応えなければならない」と強調した。   (本紙取材班)
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