[2020_11_19_04]新型コロナ下での原発事故対応確認 東通など 県原子力防災訓練 同時発生に不安の声 参加の村民(東奥日報2020年11月19日)
 
 東北電力東通原発(東通村)の重大事故に備えた本年度の県原子力防災訓練が12日、同村と原発から30キロ圏内の市町村で行われた。今年は初めて新型コロナウイルス流行下での事故を想定し、マスク着用、消毒などの感染対策を徹底。感染拡大防止のため、住民の参加は例年より大幅に少ない約40人にとどめた。
 県、市町村、民間など70機関から約1200人が参加。陸上自衛隊の大規模防災訓練「みちのくALERT2020」と連携し、住民をヘリで空路避難させる手順も確認した。
 東通村体育館を青森市内にある避難所と仮定し、広域避難先の青森、弘前、黒石、五所川原、平内の5市町の職員が避難所を開設。段ボールで仕切った避難スペースを間隔を保って配置した。受け付けでは、ガウンやマスクを身に着けた職員が避難してきた村民の検温や問診を行い、発熱している人や濃厚接触者の場合は別の部屋へ誘導した。
 近隣の東通中学校では、放射性物質が放出したとの想定で、園児や児童・生徒らが体育館に屋内退避した。同中3年の西山倫子さんは「話をしっかり開いて落ち着いて行動することが大切だと感じた。訓練しておけば安心して避難できると思う」と語った。県は課題を第三者の視点で抽出するため、各会場に評価者を配置、今後の改善につなげる考え。三村申吾知事は「事故とコロナの中でどのように安全安心を確保するか、今回の訓練を検証する」と述べた。(加藤景子、工藤洋平)

 同時発生に不安の声 参加の村民

 原発事故と新型コロナウイルスを想定して行われた初めての訓練。県は、避難バスの中では避難者を離して座らせるなど、国の考え方に基づき原子力災害時の感染対策を取ったが、参加した村民からは同時発生への不安の声も聞かれた。
 「放射性物質もウイルスも目に見えないから」。それぞれ同じ言葉で不安を語ったのは東通村白糠地区の田中浅雄さん(72)と、入口地区の岡田哲夫さん(67)。田中さんは「避難所には人が集まる。手を洗ったり消毒したりと自衛しなければならないと思う」、岡田さんは「住民が素早く行動できるよう、放射性物質が飛ぶ方向もコロナの感染状況も、素早く、いろいろな方法で行政が広報することが大事だ」と話した。
 約4万人の受け入れ先となっている青森市の牧野豊危機管理監は、避難スぺ−スは余裕を持って確保しているとする一方、避難者の中には旅行者など域外からの人がいる可能性があるとして「クラスター(感染者」集団)を発生させないよう受け入れ時の確認を徹底しなければならない。各避難所には職員を3人ずつ配置するが、一気に避難者が来た場合、初動に対応しきれないことも考えられる」と課題を語った。
 (加藤景子、工藤洋平)
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