[2019_09_28_03]<女川2号機>発電割高に 石炭の1.51倍 LNGの1.36倍(河北新報2019年9月28日)
 
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<女川2号機>発電割高に 石炭の1.51倍 LNGの1.36倍

 東京電力福島第1原発事故後に原発の安全対策費が増大したことなどで、東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の発電コストが停止期間10年で1キロワット時当たり18.6円、11年で同19.0円になることが大島堅一龍谷大教授(環境経済学)の試算で分かった。液化天然ガス(LNG)などの火力発電コストを上回り、経済効率面で原発の優位性が失われている現状が浮き彫りとなった。
 女川2号機は2010年11月に定期検査に入り、東日本大震災と原発事故を経て9年近くも停止が続く。東北電は20年度以降の再稼働を目指し地震や津波、火災を想定した安全対策工事を進め、原子力規制委員会による新規制基準適合性審査も27日にほぼ終えた。
 大島教授は経済産業省が15年に公表した原発の発電コスト(14年モデルで1キロワット時当たり10.1円以上)を基に、原発事故対応費が11兆円から21兆5000億円に増えた点や追加安全対策費を上積みし、稼働後に原則40年間の運転期間を全うすると想定した。
 試算の結果、女川2号機の1キロワット時当たりの発電コストは18.6円。経産省試算の火力発電のうち石油(30.6〜43.4円)は下回ったが石炭(12.3円)の1.51倍、LNG(13.7円)の1.36倍となった。事業用太陽光発電の19年度の買い取り価格(14.0円)も上回った。
 他の停止中の原発も20年に再稼働すると仮定して全国29基の発電コストを試算したところ、女川2号機は最もコストが高かった。北海道電力泊1号機(17.5円)が続き、平均は13.2円だった。
 大島教授は女川2号機の発電コストが割高になる理由に、震災の被災原発として安全対策費に原発1基分の建設費を上回る3400億円を要するほか、停止期間が長く、出力が82万5000キロワットと比較的小さい点を挙げる。
 安全対策費には、再稼働から5年以内の整備が必要で1000億〜2000億円が見込まれるテロ対策施設の費用は含まれず、発電コストは一層高くなることが確実だ。
 大島教授は「安全対策費は増大し(原則40年の残る)稼働期間も短くなる一方。他の電源に比べコストが安いという原発の経済性は失われた。(太陽光など)再生可能エネルギーが普及する東北で、原発再稼働は過剰投資なのが実情だ」と指摘する。
 同じく停止が続く女川3号機の発電コストは14.3円、東通原発(青森県東通村)は12.5円。未確定の安全対策費を計上しなかったが、石炭火力のコストを上回った。
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