[2019_02_27_02]日本海溝の地震予測 「危険の芽から目そらすな」 評価及び腰と専門家 超巨大地震後も危険度大(東奥日報2019年2月27日)
 
 政府の地震調査委員会が日本海溝沿いの地震予測を改定した。2011年の超巨大地震(東日本大震災)の震源域に隣接する海域で同規模の地震が発生することを「否定できない」と言及したものの、データ不足として及び腰の評価になった。原発事故の再発を危ぶむ専門家からは「危険の芽から目をそらすな」との批判も。東北太平洋岸にある原発の運転再開を急ぐ電力各社は、負担増につながる防災想定の見直しには消極的だ。
 本県−房総沖の太平洋をほぼ南北に走る日本海溝は、地震が多発するプレート境界だ。11年には岩手ー茨城の沖でマグニチュード(M)9の超巨大地震が発生。今回の予測は、この場所で超巨大地震が550〜600年の間を置いて繰り返すと仮定し、30年以内の発生確率はほぼ0%とした。
 だが、場所が変われば話は別だ。調査委は、11年の震源域外で超巨大地震が起きる可能性は否定できないとしたが、現時点ではデータ不足から規模も確率も不明。「過去にそのような超巨大地震が発生したことは知られていない」と否定的な情報も付け加えた。委員長の平田直東京大教授は「評価できないことはいっばいある」と説明する。
 こうした調査委の慎重姿勢を危ぶむのは島崎邦彦東京大名誉教授(地震学)だ。評価不能を理由に最悪の事態から目を背けてはいけないと指摘。「11年の地震の北と南で別の超巨大地震が発生しうるということは、もっと前面に出して伝えるベきだ」と訴える。
 島崎氏が抱いた危機感の背景には、東京電力福島第1原発事故の苦い経験がある。島崎氏らが02年にまとめた予測では、東北太平洋岸のどこにでも大津波が来る危険を指摘した。だが「過去に確認されていない」「根拠不足」と重視されず、大津波対策に動きださないまま事故を迎えている。
 事情は現在もあまり変わらない。原発の審査を担う原子力規制庁の関係者は「根拠やデータが不十分な巨大災害を想定するよう、電力会社に強く求めるのは難しい」と話す。
 原発の安全対策を進める電力会社側には、運転再開に向けた手続きの遅れや対策費の膨張に対する警戒感は根強い。. 大規模浸水を免れた東北電力女川原発(宮城県)は、2号機の審査が終盤。23・1メートルの津波を想定する方向だが、今回の改定に東北電関係者は「もし追加対策が必要となると、さらに審査が遅れる」と懸念する。
 東北電の東通原発1号機(東通村)の審査では、北海道東部一岩手北部沖の超巨大地震と津波の可能性も議論している。
 審査に合格し、運転再開を目指す東海第2原発(茨城県)を持つ日本原子力発電は「新知見が出れば真剣に対応する」と静観の構え。高さ20メートルの防潮堤の建設などで対策費は1740億円に膨らみ、負担に耐えられるかを危ぶむ声も出ている。

 Q&A 超巨大地震後も危険度大

 政府の地震調査委員会は、2011年3月に超巨大地震(東日本大震災)が起きた日本海溝付近で、今後30年間に予想される大地震の確率を見直しました。

 Q 海溝の近くで大きな地震が起きるの?
 A 太平洋の下にあるプレートは東北日本が載る陸のプレートの下に沈み込んでいます。二つが接する日本海溝付近ではプレートが変形して岩盤が大きく割れ、地震が起きるとされています。

 Q 見直しの結果は?
 A 東日本大震災のようなマグニチュード(M)9の超巨大地震とM7〜8の大地震は違う仕組みで起きるので、大地震の危険は高いままだとしました。危険性を上方修正した海域もあります。超巨大地震が起きれば大地震はしばらくないだろうと思っていた人には意外かもしれません。

 Q 予測の方法は。
 A 同じような区域で同じような大きさの地震がほぼ一定間隔で繰り返してきた場合は、最後の地震からどれくらい時間がたったかを基に確率を出します。間隔が分からない場合は、予測の対象区域をある程度広げ、その中で一定期間に地震が何回起きたかを基にします。今回は間隔が分からない場合が目立ちます。

 Q M9の超巨大地震は心配なさそうだね。
 A 11年と同じ場所ではほとんど心配ないようです。しかし、その外側の岩手県沖北部や房総沖などでは、ないとは言えません。地震の大きさや確率を判断できるだけの観測結果がないのです。
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