[2018_09_06_43]首相「一丸で応急対応」自衛隊2万5千人態勢 断層のずれ 短時間に連続 全道停電 市民生活まひ 加速度1504ガル 安平町 6強程度の地震 1週間は注意を 気象庁 泊原発 外部電源使えず 非常用発電機で冷却継続 県内原子力施設以上確認されず (東奥日報2018年9月6日)
 政府は6日、北海道で震度6強を観測した地震を受け、被害状況の把握と被災者救助に全力を挙げた。安倍晋三首相は午前6時前に急きょ官邸入りし、記者団に「人命第一で、政府一丸となって、災害応急対応に当たっていく」と述べた。4千人態勢で活動を開始した自衛隊を2万5千人に拡充すると明らかにした。また、菅義偉官房長官は緊急記者会見で、北海道全域での大規模停電も早期解消を目指す考えを示した。
 政府は官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置し、関係省庁の局長級による緊急参集チームを招集した。首相は関係省庁に被害の拡大防止などを徹底するよう指示。菅氏や小此木八郎防災担当相らとともに危機管理センターで陣頭指揮に当たった。内閣府は、情報収集に当たる先遣チームを北海道に派遣した。
 政府は関係閣僚会議を官邸で開催。首相は厚真町で発生した土砂崩れなどに触れた上で「事態は一刻を争う。被災市町村と緊密に連携し、被災者の救命救助、ライフラインの復旧に全力で当たってほしい」と求めた。
 菅氏は緊急記者会見を実施。多数の110番、119番が寄せられているとし、地元警察や消防、海上保安庁に加え「他地域の警察、消防の応援部隊が現地に向かっており、救命救助活動に当たっている」と強調した。
 揺れが大きかった地域の住民に向けて「自治体の避難情報に注意し、互いに助け合って行動してほしい」と呼び掛けた。

 6強程度の地震 1週間は注意を 気象庁

 北海道で震度6強を観測した地震で、気象庁は6日、記者会見を開き、松森敏幸地震津波監視課長が「1週間ほどは震度6強程度の地震に気を付け、傾いた建物など危ない場所に近づかないでほしい」と注意を呼び掛けた。北海道では5日に台風21号や前線の影響による大雨で広い範囲で地盤が緩んでおり、土砂災害に厳重な警戒が必要だ。
 震源に近い厚真町やむかわ町などの複数の観測点から震度データが入っていない。通信回線に問題が生じた可能性があるが、原因は不明。観測記録が把握できれば震度6強や6弱の地点が増える可能性があるという。
 今回の地震は陸側の地殻内で発生し、地殻を東北東と西南西から圧縮する力が働き、断層がずれる「逆断層型」と見られる。震源地周辺には石狩低地東縁断層帯があり、関連を調べている。
 北海道の石狩地方南部で長周期地震動の階級4を観測した。4は最大の階級で「立っていることができず、はわないと動けない。揺れに翻弄される」レベル。長周期地震動は周期が長い大きな揺れで震源から離れた地域でも起こる。本県や宮城県の一部でも階級1を観測した。

 首相指示と発言全文

 北海道での震度6強の地震を受けた安倍晋三首相の指示と、記者団への発言全文は次の通り。
 【首相指示】
 一、早急に被害状況を把握すること。
 一、地方自治体とも緊密に連携し、政府一丸となって、被災者の救命・救助などの災害応急対策に全力で取り組むこと。
 一、被害の拡大防止の措置を徹底すること。

 【首相発言】
 今回の地震によって心肺停止、土砂崩れ、家屋の倒壊、大規模な停電が発生し、被害が出ているとの報告を受けている。政府としては人命第一で、政府一丸となって、災害応急対応に当たっていく。危機管理のためにしっかりと対応していきたい。

 断層のずれ 短時間に連続
 
 北海道で6日、最大震度6強を観測した地震は、内陸の活断層がずれて起きた可能性を専門家は指摘する。断層は短い時間に連続してずれたため強い揺れが長くなり、土砂崩れを引き起こした可能性があるという。
 気象庁は今回の地震との関係は不明としているが、震源の約10km西には活断層「石狩低地東縁断層帯」が南北に走っており、長さ約66キロの「主部」と長さ54キロ以上の「南部」からなる。
 活断層に詳しい鈴木康広名古屋大教授(変動地形学)は「活断層は大規模で構造が複雑だ」と指摘。南部は海に延びていて調査は難しく、過去に大規模な地震があったのかどうかなど十分なデータがないという。
 東京大の古村孝志教授(地震学)は、断層帯南部で地震が起きた可能性が高いと指摘。断層帯は、地下で東に向かってほぼ水平方向に傾いており、震源がこれに含まれる可能性がある。断層帯は地盤が上下方向にずれる「逆断層」で、今回の地震と同じタイプだという。
 古村教授が地震波の観測記録を調べたところ、大きな揺れが短い時間に3回ほど続けて記録されていた。古村教授は「断層のずれが連続したことで、強い揺れが長い時間続き、土砂崩れを引き起こしたのかもしれない」と分析する。
 政府の地震調査委員会は、30年以内に大地震が起きる確率を、断層帯主部はマグニチュード(M)7.9程度が「ほぼ0%」、南部はM7.7程度以上が「0.2%以下」と公表済み。今回の地震を受けて6日午後5時から臨時会合を開く。

 加速度1504ガル 安平町

 北海道で最大震度6強を観測した地震で、防災科学技術研究所(茨城県)は6日、安平町に設置した観測点で、極めて強い揺れを示す1504ガルの加速度を記録したとウェブサイトで公表した。
 防災科研はいったん、別の観測点で1796ガルを観測したと公表したが、その後「地震との関係を改めて確認したい」として取り下げた。観測点の状況を調査して、機器が正しくデータを観測できていたかを検証する。
 1504ガルは、防災科研が全国に展開する観測網「KiK−NET」のデータで、東西方向のほか、南北、上下の揺れを組み合わせた数値。地震が発生した午前3時8分ごろに記録した。
 加速度が800ガル以上で、かつ地面が動く速度が毎秒100センチ以上になると、建物に大きな被害を及ぼすとされている。今回の地震では、地面が動いた速度は分かっていないという。
 1995年の阪神大震災では神戸海洋気象台(当時)で891ガル、2016年4月の熊本地震では、2回目の震度7で益城町の揺れが地下の観測で1362ガルとなり、大きな被害が出た。今年6月の大阪府北部の地震では、高槻市で806ガルを記録している。

 災害用伝言ダイヤル 「171」の運用開始

 NTT東日本とNTT西日本は6日、北海道で発生した地震を受け、親族らに安否を知らせるための「災害用伝言ダイヤル(171)」の運用を始めた。「171」に電話して案内に従うと、伝言の録音や再生ができる。
 パソコンなどのインターネット上で安否確認できる「災害用伝言板(WEB171)」も利用できる。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話大手3社も、スマートフォンなどで安否情報の登録や確認ができる「災害用伝言版」や、音声メッセージを残せる「災害用音声お届けサービス」を提供している。

 泊原発 外部電源使えず 非常用発電機で冷却継続

 6日午前に北海道で発生した地震で、震度2を観測した泊村にある北海道電力泊原発は、外部電源が喪失した。同原発は現在停止中で、1〜3号機の原子炉に核燃料は入っていないが、発電はできないため、非常用発電機6台を起動して、使用済み燃料計1527体を貯蔵中のプールの冷却を続けた。原子力規制庁によると、原子炉の冷却に必要な重要設備に異常は見られず、原発の敷地内や周辺の放射線量に変化はないという。
 規制庁によると、外部電源が使えなくなったのは北海道各地で発生した停電が影響したとみられる。地震発生後、規制庁には職員が集まり、情報収集を強化した。
 北海道電は6日午前6時すぎ、外部電源の一部を復旧させたが、15分ほどで再び停止した。復旧の見通しは立っていない。非常用発電機の燃料は、プールの冷却を7日間継続できるだけ確保しているという。
 泊原発は3号機が2012年2月に停止して以降、全基が稼働していない。

 県内原子力施設 異常確認されず

 北海道で起きた地震で、日本原燃の六ケ所再処理工場や、東北電力東通原発に異常は確認されていない。(本紙取材班)
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