[2016_03_24_02]陸・海路で段階的に避難 東通原発事故・広域計画 県検討会 基本方針を了承 原子力災害を想定 210人参加、防災訓練 東北電、東通原発で 医療・福祉施設 避難先確保に不安(東奥日報2016年3月24日)
 
 県は23日、東北電力東通原発(東通村)の重大事故に備えた避難計画の検討会を県庁で開き、自家用車、バス、船舶の活用による陸路と海路併用で原発に近い地域から段階的に避難することなど、広域避難計画の基本方針を了承した。原発半径30キロ圏の5市町村は基本方針を踏まえ、現行避難計画の修正作業を本格化させるが、交通渋滞対策や避難受け入れ態勢の整備など、計画の実効性向上へ課題は多い。     (阿部泰起)
 検討会には市町村や県警、消防、県医師会など関係機関の担当者が出席した。
 避難対象住民が最も多いむつ市の避難計画は、当初はバス避難を原則としていたが、必要台数を確保できず自家用車中心に変更。交通渋滞緩和のため、船舶も活用する方向で協議してきた。検討会では陸・海路併用の避難を了承したほか、青森市内の避難施設で収容しきれないことが判明した約2万人を、五所川原市に約1万1千人、黒石市に約7千人、平内町に約2千人を割り振ることを確認した。受け入れ先は弘前市を加え5市町となる。
 陸・海路併用でも全員が避難し終えるには2〜3日かかる見込み。基本方針は決まったものの、避難計画の詳細は県と市町村が今後も協議していく。出席した市町村の担当者からは「自主的に避難する人は必ずいる。段階的な避難を住民にどう理解してもらえばいいのか」(野辺地町)との戸惑いや、「避難所を開設するための要員は市役所職員だけでは賄いきれない」(青森市)など課題を指摘する意見もあった。
 県原子力安全対策課の庄司博光課長は「自主避難抑制の理解活動を市町村と進めていく。避難所の要員は.周辺市町村や原子力事業者にも協力を依頼したい」と語った。

 原子力災害を想定 210人参加、防災訓練 東北電、東通原発で

 東北電力は23日、東通原発(東通村)で原子力災害発生を想定した防災総合訓練を行った。同社と協力企業から約210人が参加し、事態を収束させるための対応や手順、連絡体制を確認した。
 想定は、大雪で送電線に障害が起きて外部電源が喪失し、さらにトラブルが重なり非常用発電機などを含む全電源を失って原子炉を冷却できなくなり、放射性物質が放出する恐れが生じたーという内容。参加者は、原子炉を冷やすために、送水車にホースをつなぎ合わせて海水をくみ上げる作業などに当たった。現場偵察用ロボット2台を遠隔操作する訓練なども行った。
 東通原発の原子力防災総合訓練は、2011年3月の東日本大震災以降では11回目。部門ごとの個別訓練は合わせて822回実施している。同原発の田中幸喜調査役(53)は「訓練を重ねて手順や資機材の有効性を確認しながら体制強化を図っている」と語った。
 同日は新規制基準に基づく重大事故対策の一環として建設中の淡水貯水槽も報道陣に公開した。貯水量は約1万800立方メートルで、既存の水源が枯渇した場合でも原子炉を7日間冷却させることができる。17年4月に完成予定。(近藤弘樹)

 医療・福祉施設 避難先確保に不安

 東北電力東通原発30キロ圏内の医療機関や福祉施設などは、原子力災害事故に備えた避難計画の作成が義務付けられている。ただ、関係者からは避難車両、避難先施設の確保など課題が指摘されている。
 同原発から約20キロの位置にある下北地域の中核病院・むつ総合病院(むつ市)は、災害時の避難者数を平日の最大時で千人と推計している。
 広域避難となった場合、移動車両や避難先施設の確保は、災害が発生した際に県が調整し決める仕組みだが、現時点では確保できていない。同病院の木村雅敏総務課長は「具体的な避難先が事前に決まっていれば安心なのだが…。搬送手段も患者の容体に合わせた車両やヘリが必要なため、いざという時にどうなるか不安は残る」と話し「病院としては計画の内容に沿って訓練や職員教育に努めるしかない」という。
 約10キロの場所にある介護老人福祉施設「恵光園」(同市)の鶴谷幸三園長も、車両の確保方法や避難先と避難ルートが示されていない点を懸念している。寝たきりなどの入所者が多いことを念頭に、「全員をバスに乗せて−という訳にはいかない。現場の実情を考慮し.た上で、必要な車両の種類や台数を手配してくれるの.だろうか」と語った。
    (本紙取材班)
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