[2023_07_04_12]原発推進GX法が成立しても止められる 原子力推進の矛盾はむしろ拡大 電気事業法改悪について 6.運転延長期間の計算方法について 7.運転期間の除外根拠について 8.期間除外条件が複数成立した場合の計算方法について 6/17山崎ゼミの資料紹介 (その6)(連載) 小山芳樹(たんぽぽ舎)(たんぽぽ2023年7月4日)
 
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原発推進GX法が成立しても止められる 原子力推進の矛盾はむしろ拡大 電気事業法改悪について 6.運転延長期間の計算方法について 7.運転期間の除外根拠について 8.期間除外条件が複数成立した場合の計算方法について 6/17山崎ゼミの資料紹介 (その6)(連載) 小山芳樹(たんぽぽ舎)

 
その2 電気事業法改悪について

6.運転延長期間の計算方法について

 条文により許可される期間の計算方法については、何ら具体的に示されていない。その条文とは次のものだ。

「イ 申請発電用原子炉に係る発電事業に関する法令若しくは審査基準若しくは処分基準の制定若しくは改正又は当該法令の解釈若しくは運用の基準の変更に対応するため、その原子力発電事業者が申請発電用原子炉の運転を停止した期間と認められる期間」

「ロ 前条において準用する第27条第1項若しくは第40条の規定による処分、原子炉等規制法第43条の3の20、第43条の3の23若しくは第64条第3項の規定による処分又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第106条の規定による処分による義務を履行するため申請発電用原子炉の運転を停止した原子力発電事業者にあつては、その停止した期間のうち、当該処分による義務を履行するため申請発電用原子炉の運転を停止する必要がなかつたと認められる期間」

「ハ 行政指導に従つて申請発電用原子炉の運転を停止した原子力発電事業者にあつては、当該行政指導に従つて申請発電用原子炉の運転を停止した期間と認められる期間」

「ニ 仮処分命令を受けて申請発電用原子炉の運転を停止した原子力発電事業者にあつては、その停止した期間のうち、当該仮処分命令による義務を履行するため申請発電用原子炉の運転を停止する必要がなかつたと認められる期間」

「ホ ロに規定する処分以外の他の法律の規定に基づく申請発電用原子炉に関する処分であつてその取消しの判決が確定したものその他原子力発電事業者が申請発電用原子炉に係る発電事業の遂行上予見し難い事由として経済産業省令で定めるものに対応するため、その原子力発電事業者が申請発電用原子炉の運転を停止した期間と認められる期間」。

 少なくとも、これら計算根拠と方法を示して、その妥当性を国会で議論するべきではないのか。
 他の法律の審議状況を見ていても、岸田内閣は説明を放棄している。
 特に許しがたいのは国民生活に大きな影響を与えることが予想される事案についても説明をしないことだ。
 最も近いところでは少子化対策として上げた予算のもとを示さないこと。
 増税や社会保険料負担であれば、結局国民負担率が上がるだけであり効果は期待できない。そうした政策ばかりが目立つ内閣である。

7.運転期間の除外根拠について

 具体的に法案の問題点を指摘する。

 最初の「イ」は、規制委が審査を行った期間が運転延長できるとする。
 これを例えれば、所得税申告において国が更正処分を行った後に審査請求が認められた場合、加算税はその期間について減額されるとの考え方と同等だ。
 すると規制委の審査自体が不利益処分であり、それを遡って是正する必要があると認識していると理解できる。
 事業者による不正確な審査書類の作成でも、審査を通すための不正な申請書でも、能力がなくて規制委の要求する水準に達しない回答でも、そのために期間が延びても認めるということになる。
 このような考え方は、安全側に立った審査を強く妨害するが、そうした改訂を行うことに如何なる合理性があるのか説明はない。

 「ロ」は炉規法の規定と武力攻撃事態法に基づく停止措置が、あとから「必要なかった」とされた場合の期間を、

 「ハ」は震災時に菅直人首相が要請して停止させた浜岡原発のことを、

 「ホ」はそれ以外に考えられる全部の法律で止まった場合指す。
 いずれも理由があって停止措置を求めたものを遡ってなかったことにする対応は、事業者の利益第一であって、国民の安全など二の次三の次だということだ。そもそも原発に寿命はないのだから何時までも(壊れるまでは)動かせるとの考え方に依っている。

「ニ」に至っては、もはや暴挙である。
 司法判断でいったんは差し止めの決定があった原発を、その決定が上級審で覆されたら無かったことにするというのだ。
 これにより差し止め処分の効果を消滅させるわけだが、例えば原告側主張により差し止められた原発の事業者が、その指摘を受けて改良し、又は対策したことで上級審が差し止める必要はないと判断したケースでも、無かったことにされる。
 原告が訴えていなければ危険なままだったかもしれないものをここまで擁護する理由は一体何なのだろうか。想像を絶する。

8.期間除外条件が複数成立した場合の計算方法について

 運転延長期間について複数の要件が同時に成立する場合、その年数の計算方法については具体的に示されていない。
 また、イからホの複数に該当した場合の、どの項目に該当して期間が延長されたかについて明確にする方法も示されていない。
 このような予見できない状況で法律だけを成立させようというのは、白紙委任状を求めることに等しく、到底認められるものではない。
 これは規則で明確化すると経産省は答えているが、ならばまずそれを示すことが先である。 (その7)に続く
KEY_WORD:原発_運転期間_延長_:HAMAOKA_: