[2020_05_14_02]浜岡原発関心低下に懸念 停止9年、専門家「チェックし将来に備えを」(静岡新聞SBS2020年5月14日)
 
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浜岡原発関心低下に懸念 停止9年、専門家「チェックし将来に備えを」

 中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)が政府の要請で全炉停止して14日で丸9年を迎え、原発に対する地元の意識が薄れつつある。4月上旬に行われた市長選、市議選では再稼働を巡る問題が主な論点には浮上せず、有権者の関心も高まらなかった。再稼働への見通しが立たない現状が背景にあるとみられる。
 「市民は原発のことを忘れてきていると思う」。浜岡原発の周辺住民でつくる佐倉地区対策協議会の平林和丸会長(79)は率直な感想を口にする。
 静岡新聞社が市長選、市議選で行った出口調査では、多くの有権者が投票に当たり重視した政策として昨年住民投票に発展した「民間産廃処理施設の建設問題への姿勢」を挙げた。「浜岡原発への姿勢」を選んだのは380人中85人。佐倉地区の回答者でも原発への姿勢を選んだのは半数に満たなかった。危機感を強めた平林会長は、中電に安全性対策など現状を示す資料を改めて提示するよう求めたという。
 候補者の訴えからも「原発」は影を潜めた。市議選では再稼働への反対姿勢を明確に示してきた共産系のベテラン現職が落選し、同地区の男性(73)は「原発に関する議論が減るのではないか」との見方を示す。
 原子力行政に詳しい元内閣府政策統括官の興直孝さん(75)=県防災・原子力学術会議委員=は、原子炉が停止中であっても行政や議員が原発に対する基本姿勢を明確に示すべきと指摘。「市民も電力事業者や行政の取り組みをチェックして質問を投げ掛け、議論をして将来に備えることが必要」と強調した。

 ■難航する審査会合、地震・津波「議論に難しさ」

 浜岡原発を巡っては4号機と3号機で、再稼働の前提となる新規制基準への適合性審査が原子力規制委員会で続いている。中電が最初に4号機の審査を申請した2014年2月から6年を超えたものの、南海トラフ巨大地震の想定震源域に位置する立地特性などから審査は難航。更田豊志委員長は13日の定例記者会見で「(浜岡の審査は)やはりそれだけ地震・津波に関わる議論の難しさがあるのだろうと思っている」との認識を示した。
 中電は審査の中で、耐震設計の目安になる「基準地震動」と想定される最大津波高「基準津波」の早期決定を重要課題に位置付けてきた。ただ、現在の議論は「その前段」(事務局の原子力規制庁担当者)。審査会合で委員らは、敷地内の断層の活動性評価についてデータ充実や論理的な説明を求めたり、より厳しい条件設定で津波高を算定する必要性を指摘したりしている。
 中電の勝野哲会長はこれまでの取材や記者会見で、基準地震動や基準津波に関する審査を「佳境」「ヤマ場」と繰り返してきた。これに対し、更田委員長は「従来に比べれば議論は密になっている」と評価しつつ、「佳境というかどうかはなかなか難しい。(中電の認識との)温度差があるかないかは判断しづらい」と説明。他の原発も含めて優先順位を定めながら審査を進めている実態を踏まえ、「浜岡を今、全開に取り組んでいる状況でないのは正直なところだ」とも述べた。
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