[2019_05_11_04]命かかる判断 国に丸投げ 東海第二再稼働アンケート 知事権限は「最後の壁」(東京新聞2019年5月11日)
 
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命かかる判断 国に丸投げ 東海第二再稼働アンケート 知事権限は「最後の壁」

 東海第二原発が再稼働すれば、周辺の自治体も茨城県と変わらないリスクにさらされる。だが、一都五県の知事に再稼働の是非を聞いた本紙アンケートからは、住民の暮らしと命にかかわる判断を国に丸投げする姿勢がにじんだ。 (越田普之)
 NPO法人原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「東海第二で事故が起きれば、福島事故より大きい影響が出る可能性があるのに、人ごとのような回答ばかりで失望した」と嘆く。東京、千葉、群馬の三知事が国の責任で判断すべきだとしたことにも、「『原子力は国策』という言い訳が通用しないのは、福島の被害で明らかだ。そのことへの理解も反省もない」と批判した。
 再稼働を止める権限があると答えた知事もゼロ。知事の権限を巡っては、九州電力川内(せんだい)原発の再稼働反対を掲げて二〇一六年七月に初当選した鹿児島県の三反園訓(みたぞのさとし)知事が、当選後に「私に稼働させるか、させないかの権限はない」と態度を一変させ、物議を醸した。
 知事に再稼働を止める権限を明文化した法律はないが、国のエネルギー基本計画では「(再稼働は)立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」と明記している。立地道県と原子力事業者は安全協定も結んでおり、知事の同意は再稼働に当たっての「最後の壁」となっている。
 こうした実態を背景に、中部電力浜岡原発が立地する静岡県の川勝平太知事は、中電から再稼働への同意を求められても拒否する考えを表明している。
 アンケートに答えた知事のうち、神奈川県の黒岩祐治知事は「法的権限はない」としながらも、「原発に依存しすぎたエネルギー体系から脱する『脱原発』を加速させることが重要」とした。
 東京大大学院の金井利之教授(自治体行政学)は「知事には原子炉規制法での権限はないが、事業者と結んでいる安全協定に基づく法的・政治的責務や、地方自治法と災害対策基本法などによる法的権限はある」と説明。三反園知事らの「権限はなし」という発言について「狭い法的権限にすぎず、説明としては不十分だ」としながら、「負託された責務や権限を知事がどう使うのか、県民本位の判断になるよう、県民が監督していかなければならない」とした。
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