[2020_09_06_02]中間貯蔵「合格」 むつ−現状と課題(4) 「乾式」施設 震災時も安全機能維持 保管「永久化」に警戒感(東奥日報2020年9月6日)
 
 むつ市の中間貯蔵施設が採用する、原発で使い終わった核燃料を金属製の容器(キャスク)に収納して一時保管する「乾式貯蔵」は、リサイクル燃料貯蔵(RFS)の親会社、東京電力ホールディングスと日本原子力発電で、既に実績がある。
 「貯蔵プールに比べ、自然冷却で除熱ができるなど運転管理が容易で、経済性にも優れている。・安全機能はプールと同等だ」。原電の担当者は乾式貯蔵施設の特性を説明する。
 原電は東海第2原発(茨城県)で2001年に施設の運用を開始。燃料は原発内のプールで7年以上冷やし、崩壊熱と放射線レベルを下げた後にキャスクに収納する。現在約160トンの燃料を保管中で、今後キャスクを増やして70トン分(7基)を増強する方針だ。
 11年の東日本大震災では震度6弱の地震に見舞われたが、除熱、閉じ込め、遮蔽などの安全機能に影響はなかったという。
 東電も震災前から福島第1原発(福島県)に乾式貯蔵を導入しており、被災時でもキャスクに大きな問題は生じなかった。乾式貯蔵は燃料の冷却に電気も水も使わないため、安全性が高いとされ、原子力規制委員会の更田豊志委員長は「同じ量が原発サイト内にとどまるなら、冷却の進んだ燃料は速やかに乾式に移すベきだ」と主張している。
 国内では現在、各原発や日本原燃・六ヶ所再処理工場に合わせて2万トン近くの使用済み核燃料が保管されている。原発のプール容量には限界があり、各社は貯蔵対策を急ぐ。
 現在、中部、四国、九州の電力3社が乾式貯蔵施設を計画中で、このうち四国電は6月、伊方原発(愛媛県)の敷地内に建設を予定している施設が安全審査で事実上の合格を得た。24年度の運用開始を目指す。
 だが、地元には「半永久的な保管場所になりかねない」との懸念がある。「伊方原発をとめる会」の松浦秀人事務局次長は「核燃料サイクルは事実上破綻しており、国も事業者も燃料の搬出先や時期を明示できていない」と批判。
 伊方3号機は1月、広島高裁で運転差し止めの仮処分決定を受けたが、断層問題などが置き去りにされたまま施設建設が進められようとしているとして「基準地震動の問題が過小評価されている」と不信感を募らせる。
 大阪府立大学の長沢啓行名誉教授(経営工学)は、原子力委員会が示した「必要な量だけ再処理を認める」との考え方に照らし、政策的な面からも永久化の恐れがあると指摘する。
 「四国電は英国にブルトニウムを保有しているが、英国では現在、MOX(ブルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料に加工することができない。これを消費しないうちにさらに国内で再処理してプルトニウムを増やすことは困難だ」と説明。原発の新設が見込めない中で、プルトニウムを燃やす原発は限られていき、再処理を前提とした燃料は施設にとどまり続けることになる−とし「それはむつの施設も同様だ。プルトニウム政策全体と乾式貯蔵は関係性が深い。10年後、この問題はもっとリアルになるだろう」と警鐘を鳴らす。
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