[2021_02_15_04]2021福島県沖地震に被災された方々には御見舞い申し上げます 東日本大震災の余震とされる地震が2月13日福島県沖で発生 震度4の女川市(宮城県)で問題発生、女川原発も… 想定される地震にさえ女川原発は耐えられない 今、原発から引き返さなければ「次」は無い 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年2月15日)
 
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2021福島県沖地震に被災された方々には御見舞い申し上げます 東日本大震災の余震とされる地震が2月13日福島県沖で発生 震度4の女川市(宮城県)で問題発生、女川原発も… 想定される地震にさえ女川原発は耐えられない 今、原発から引き返さなければ「次」は無い 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◎ 東日本大震災の余震とされる地震が2月13日23時08分に福島県沖を震源として発生した。
 この地震は、最大震度6強(宮城県蔵王町、福島県相馬市、国見町、新地町)気象庁マグニチュード7.3(モーメント・マグニチュード7.1)、北緯37.7度/東経141.7度で、深さ55kmである。
 この地震では、2月15日現在、死者はなく、大きな津波も襲ってこなかった。
 しかし数百戸の住宅などが倒壊、損傷し大きな被害が出ている。
 気象庁によると、地震は陸側プレートの下に沈み込んだ太平洋プレート内で発生したと見られ、震源が深く海底地形を大きく変形させなかったことで大きな津波は発生せず、最も陸に近い相馬市でも震央から約70km離れていたこと、地震の起きたプレートと日本列島が乗っているプレートが異なったこと、プレートの境界ではなくプレート内部の断層による地震だったことで、揺れの周期が建造物と共振しやすい1から2秒の周波数が大きくなく周波数の小さい0.1秒前後のほうが大きかったことなどが幸いし、大きな被害は生じなかったと思われる。
 しかし蔵王町のように震度6強を記録したところもあり、さらに北海道から西日本まで揺れが観測されるなど規模の大きな地震であることは間違いない。

◎ 原発の状況については、福島第二と福島第一5、6号機で使用済燃料プールの水が溢れていることが確認されているが、1〜3号機について、それがなかったという意味ではなく、おそらく現場を確認することが困難なために速報されていないだけと思われる。
 原発で大きな損傷があったとの報道はないが、東北電力によると女川原発で以下のような問題が発生したとされる。2月14日付け東北電力報道発表を引用する。
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◎ 地震発生による女川原子力発電所の設備点検結果について
 2021年2月14日
 昨日(2月13日)23時08分に宮城県内で最大震度6強の地震が発生しました。
 女川原子力発電所においては、安全上重要な設備に異常はなく、周辺への放射性物質の影響もありませんでした。
 なお、地震後の現場パトロールにおいて以下の状況を確認し、復旧作業を実施しております。
1.変圧器避圧弁※1
 地震により変圧器内の絶縁油が揺すられ当該弁が動作したもので、当該弁の点検を行い、必要に応じ新品と交換する。
2.女川3号機タービン建屋ブローアウトパネル※2
 地震により当該パネルが開状態になったもので、点検を行い元の状態に復旧する
3.女川2号機および3号機放水口モニタ※3
 地震により2号機および3号機のサンプリング用の取水ポンプが停止したことに伴い、同号機の放水口モニタが欠測した。点検の結果異常がないことを確認し、本日4時00分のデータから伝送を復旧した。
4.大容量電源装置※4
 地震発生後、1台で故障を示す警報が発生したことから、今後、点検を実施する。
5.女川3号機除塵機※5
 地震発生後、電源が入らない状態となったことから、今後、点検を実施する。
※1避圧弁:変圧器内の事故による器内圧力上昇時、機器の損傷を防止するため内部の絶縁油やガスを外部に放出する安全弁
※2ブローアウトパネル:建屋内の圧力が上昇した時に押し出され、建屋内の圧力を減圧するためのパネル
※3放水口モニタ:発電所の放水口から放出される液体中の放射性物質の有無を、連続的に測定している設備
※4大容量電源装置:震災後に緊急的に設置した電力を供給するための設備
※5除塵機:冷却用として取水する海水中の塵かいを取水時に取り除く設備

https://www.tohoku-epco.co.jp/news/atom/__icsFiles/afieldfile/2021/02/15/P1218943.pdf

以下、山崎のコメント

1.については、内部で短絡事故が起きた場合に発生するガスや絶縁油の急激な温度上昇に伴う膨張やガスの燃焼などで圧力が上がった時に、変圧器の爆発や損傷を防ぐ目的で付けられているという。
 「震動により変圧器に入っている絶縁油が揺れにより振動し弁が作動」というのは設計想定なのかそうでないのか。この文章だけでは説明が不足している。
 何処の変圧器なのかも不明確で、通電していた変圧器なのか、短絡が発生していたのかなど、詳細な説明が必要だ。

2.については、柏崎刈羽原発と福島第一原発事故の教訓は生きていないようだ。
 柏崎刈羽原発では原子炉建屋のブローアウトパネルが脱落し、福島第一原発では開かなかった。
 ブローアウトパネルとは、通常運転時には建屋内部の放射性物質を含む気体を封じる役割があり、事故時に建屋の内部の圧力が上昇した際には建屋を損傷させないように開く必要がある。
 今回の場合、建屋内部の圧力上昇はなかったと思われるので、開いてはならないタイミングで開いたことになり欠陥である。タービン建屋でも配管損傷やタービン破損、復水器の損傷などでいくらでも放射性物質が放出される環境にあるので、地震程度でいちいち開いていたのでは何の役にも立たないということだ。
 ブローアウトパネルについては「東海第二」でも問題になったもので、沸騰水型軽水炉特有の欠陥があると、以前から問題として指摘されてきた。女川でも全く解決していないことが良く分かった。

3.放水口モニタについては、地震発生時に停止してしまい、復旧できたのが実に5時間後の翌日午前4時、バックアップもないのかと思う。
 この装置は建屋内部から排水口を経て海に出る放射性物質を監視している。
 それが地震でいちいち止まっていたら役に立たない。
 地震の時ほど建屋内部で配管損傷などで、放射性物質が外部に出る事故が起こりやすい。
 その最も肝心な時に監視できないのでは、存在意義さえない。
 こんなものはバックアップシステムを作ればすぐに改善できるのに、最初からやっていないのは大きな欠陥だ。

4.大容量電源装置が壊れた?可能性がある。
 詳細には今後の調査待ちだろうが、地震で最も壊れてはならないのは言うまでもなく電源システム。
 福島第一原発では地震で構内の電源設備が大破したため繋ぎ込みが出来たとしても各所に電力を送り込むことが困難であった。
 その反省から、敷地内に電源車を配置すると共に重大事故への対処として「大容量電源装置」を敷地内に三基も設置した。その説明は以下の通り。
 『大容量電源装置の配備 原子炉等を冷却するために必要な大型のポンプ等に電力を供給するため、津波等の影響を受けない高台(海抜約52m)に配備 大容量電源装置の配備 完了 2012年2月』
 今回は外部電源もディーゼル発電機も損傷していないので、この装置は起動していないと思われる。それが津波到達前に地震で壊れたのか、詳細な説明が必要だ。

5.女川3号機除塵機とは、取水口で海水からゴミを取り除く装置だという。これの電源が入らないから点検するという。
 地震で電源システムに損害を生じた可能性があり、この装置だけの問題かどうかはっきりしない。系統全体で損傷がないか確認する必要がある。
 地震で構内電源設備が損傷することは避けられないが、この程度の地震でも起きるとしたら、一般産業産業や家庭の電源設備以下だ。
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◎ なお、誤解があってはならないので強調するが、この地震の最大震度6強といっても、それは相馬市や蔵王町のことである。
 女川町は震度4であり、おそらく原発も同程度と見て良い。
 東京23区でも最大震度は4なので、東京で感じた揺れの大きさ程度しか原発は揺れていないと思われる。
 震度4も幅は広く、周期0.1秒で100ガルあまりから200ガルまでの幅はあるので、東京と女川で倍くらいの差はあるかも知れないが。
 震央から約82km離れた女川原発は、震央からの直線距離は約100km、震央距離約74kmの福島第一よりも遠い。
 それなのにこれだけ多くの問題発生とは、いったいどんな原発なのか。
 これは重大な問題である。震度4で壊れてしまった原発が本当に想定しなければならない地震は震度7、宮城県沖の地震と太平洋のプレート境界地震だ。
 今回の地震エネルギーの何千倍もの威力があるうえ、原発の真下で起きるかも知れない。
 遙かに巨大な上下動と、もっともっと長い震動継続時間は原発に致命的な打撃を与える。
 耐震強化したといっても結局はこの程度。

◎ 地元自治体は、遙かに小さい地震でも原発の安全性に問題があったことについて、もっと真面目に考えるべきだ。

【停電】
 電力各社によると、13日午後11時15〜20分ごろ、地震の影響で東北、関東両地方を中心に計12県で最大約95万戸が停電したが、14日午前までに全て解消した。
 13日夜に宮城、福島両県で震度6強を記録した地震を受け、東北地方で13基、発電出力で計686万7000キロワット相当の火力発電所が停止した。経済産業省によると、北海道や西日本の電力会社からの電力融通があり、大規模な停電につながる恐れはない。
 本卸電力取引所(JEPX)の発電情報公開システムによると、東京電力と中部電力の火力発電事業を統合したJERAの広野火力5、6号機(各60万キロワット)や、東北電力とJERAの合弁会社が運営する新地火力1、2号機(各100万キロワット)など原子力発電所に相当する規模の発電機が複数停止した。
 JERA広報担当の澤木敦生氏は、広野火力2基について被害状況を現在確認中で、稼働再開時期の見通しは未定と話した。発電情報公開システムでは現在、5基(出力190万7000キロワット)が16日までに復旧予定となっている。
 地震で複数の発電所が停止したことで大規模な停電が発生。東京電力パワーグリッドによると、栃木県や神奈川県を中心に一時86万戸で停電が発生した。東北電力管内でも、一時福島県や岩手県など計約10万戸で停電が起きたものの、現時点では両社管内の停電はすべて解消している。
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