[2023_12_14_05]被災地寄せた期待が失望に...「裏切られた」 西村経産相交代へ(福島民友2023年12月14日)
 
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被災地寄せた期待が失望に...「裏切られた」 西村経産相交代へ

 08時50分
 岸田文雄首相が14日にも交代させる方針を固めた自民党安倍派(清和政策研究会)の4閣僚のうち、西村康稔経済産業相は本県を頻繁に訪れ、東京電力福島第1原発で発生する処理水の安全性や意義を漁業関係者らに直接説明するなど「官僚任せにしない対応」(政府関係者)で放出開始への道筋を付けた。開始後も県産水産物の魅力発信を主導し「風評対策面で心強い存在」(双葉郡の住民)と評価する声もあったが「政治とカネ」問題で事実上の更迭に追い込まれる事態となり、被災地が寄せた西村氏への期待は失望に変わった。

 トップセールス

 「今後も風評払拭の先頭に立ってくれると思っていたが、裏切られた気分だ」。楢葉町の自営業男性(48)は、首都圏などで県産水産物をPRする西村氏の姿に誠実さと頼もしさを感じていただけに失意に暮れた。
 海洋放出開始後も国内では風評の影響が見られない現状について、政府内では「ことあるごとに各業界に福島の水産物の積極的な活用や取り引きを継続するよう働きかけてきた西村氏の"トップセールス"も効いた」と評する向きもある。今月上旬には競合関係にあるコンビニ運営の大手3社の"協力関係"の構築を主導し、各社の店舗で「三陸常磐もの」を使った商品を一斉販売するキャンペーンを展開。出席する会合では毎日の昼食で松川浦産のアオサのみそ汁を味わっているとPRし、日々の食生活に県産水産物を積極的に取り入れるよう周囲に促した。

 理解進展道半ば

 一方、処理水の海洋放出に反対する中国を含め理解の進展は道半ばで、西村氏は「さまざまな機会を捉えて冷静な対応を求めていく」と繰り返し強調してきたが、実現せず志半ばで経産相の立場を失う。楢葉町の男性は「インボイス(適格請求書)制度の導入で煩雑な経理業務を強いられているのに、自分たちの政治資金の収支に関しては丼勘定だったということだ」と皮肉った。
 政治資金パーティー収入のキックバック(還流)を巡っては、本県関係の与党の国会議員も疑惑のある"身内"に厳しい目を向ける。安倍派に所属し「裏金づくりは一切していない」と明言する自民党県連会長の亀岡偉民衆院議員(比例東北)は「(還流分の)収入があれば(政治資金収支報告書に)記載するべきだった。安倍派の議員が閣僚に残るべきではないとの意見が上がるのも仕方がない」と切り捨てた。公明党の若松謙維参院議員(比例)は「法律をつくる立場の人間が平然と(不記載などを)やっていることで政治不信を招いた。解党的出直しが必要だ」と苦言を呈した。(辺見祐介)
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