[2023_12_01_03]<東海第二原発 再考再稼働>(59)東海村議編 実効性ある避難計画 不可能 無所属・阿部功志さん(68)(東京新聞2023年12月1日)
 
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<東海第二原発 再考再稼働>(59)東海村議編 実効性ある避難計画 不可能 無所属・阿部功志さん(68)

 08時02分
 東海第2原発を再稼働させるべきでない理由はたくさんあるが、広域避難計画の策定ができないことは大きな理由の一つだ。山田修村長は年内に村の計画を公表すると言っているが、まともなものは出てこないだろう。
 計画策定の課題として当面問題となるのは、避難先をどう確保するかという点。もう一つ、バスや福祉車両など避難手段をどうするのかという問題もある。村は、高齢者や障害者など支援を要する人の個別の避難計画ができているかには関係なく、避難先が決まれば広域避難計画を公表すると言っている。これは、実際に避難できない人がいても構わないからとにかく公表するということで、随分乱暴だと思う。
 避難先の確保について、山田村長は村の広域避難先になっている取手、守谷、つくばみらいの3市の公共施設だけでは足りないから、民間施設も含めて見通しがついたと説明している。ただ、東海村の3万8千人の住民が3市に避難すれば、各市の人口規模からも大きな混乱が起こるだろう。
 避難の方法としては「ターミナル方式」を採用すると言っている。これは、最初に決めていた「地区ごとの避難」ではなく、大規模な施設を基幹避難所に設定し、準備ができた避難所に、どの地区からを問わず村民を先着順で避難させるやり方だ。つまり、全く知らない人だらけの場所で避難生活を送ることになる。それでコミュニティーが維持されるとは思えない。
 このやり方だと多くの村民が基幹避難所に殺到することになる。長蛇の列で待たされたり、渋滞や駐車スペースの問題などが想定されるが、それらの対策はおそらく考えていないだろう。全村民をあらかじめ避難所に割り振る当初のやり方だと各避難所の面倒を見る職員数が圧倒的に足りないから、ターミナル方式が持ち出されたのだろうが、うまくいかないと思う。
 危機管理の考え方の根本にあるのは、最悪の事態を想定することだ。「100%はあり得ない」とよく言われる。結果としてそういう部分はあるかもしれないが、少なくとも計画段階では99・9%ではだめで、100%じゃないといけない。例えば100人いて99人が逃げられればいいだろうという計画は、最初から立ててはいけない。
 ところが、村は要支援者の具体的な避難手段の見通しがないにもかかわらず、広域避難計画を公表しようとしている。「避難先や車両の確保はできていないが、それは県の役割。村として準備するものは全て整ったから公表していいんだ」と考えているのなら、あまりに粗雑で無責任だ。それが県の仕事だと言うなら、少なくともその見通しがついたと県から報告があるまで、村の避難計画を公表するべきではない。
 複合災害を全く想定していないことも問題だ。1次避難所だけでもここまで調整に手間取っており、当初に設定していた避難所が使えない場合を想定した2次避難所については、おそらく全く考えていないだろう。このほかにも多くの問題を抱えているため、実効性のある広域避難計画の策定は不可能だというのが、私の主張だ。
 ここまで欠陥の多い状態の避難計画なのに、なぜむきになって公表を急ぐのか。計画ができたことにして再稼働に進みたいという思惑が見え見えだ。山田村長は事業者や権力者の方ばかりを向いており、村民の方を向いていない。(聞き手・長崎高大)

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 東海第2原発の重大事故時の放射性物質拡散予測の結果が公表された。これを受け周辺自治体では、再稼働の前提となる広域避難計画づくりが進むとみられる。東海村は年内に計画公表を予定し、来年1月改選の村議会での議論が活発化する。今回の「再考 再稼働」は「東海村議編」として、会派や立場が異なる村議4人の意見を紹介する。

<あべ・こうし> 1954年生まれ。北茨城市出身。東京教育大(現筑波大)卒。定年まで県内で高校教諭(国語)として勤務後、2016年東海村議選で初当選し、2期目。東京電力福島第1原発事故後、「原発は反倫理的で絶対悪」と考え、村議会では東海第2の再稼働反対の立場で活動する。
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