[2023_11_28_04]「除染土」を新宿御苑や所沢で「再利用」する話はどうなった? 発表から1年、環境省の答えは(東京新聞2023年11月28日)
 
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「除染土」を新宿御苑や所沢で「再利用」する話はどうなった? 発表から1年、環境省の答えは

 12時00分
 東京電力福島第1原発事故後、福島県内の除染作業で集めた汚染土、いわゆる「除染土」。再利用をもくろむ環境省が首都圏での実証事業を発表してから、まもなく1年だが、住民の猛反発が起こると目立った動きは見えなくなった。同省はどうするのか。現在地を探った。(西田直晃)

 ◆「IAEAの助言を受け再生利用の基準の検討を進めている」

 福島県内の除染土は第1原発が立地する双葉町と大熊町の中間貯蔵施設に搬入されており、その量は1400万立方メートルに上る。環境省は放射能濃度を踏まえて分別し、道路用資材などとして各地で再利用する方針。中間貯蔵する分を再利用で減らし、県外での最終処分をしやすくするという。
 再利用の実証事業は福島県内で実施されてきた一方、環境省は昨年12月、東京都新宿区、埼玉県所沢市、茨城県つくば市の3カ所で検討していると発表し、新宿と所沢で説明会を開催。ただ周辺住民や地元町会が猛反発した後は目立った話は聞こえてこなかった。
 そんな中、今年10月の環境省の有識者会議「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」では「実証事業は新宿や所沢でも話があった。どう進める」と質問が上がった。
 同省の担当者は「福島県外での実証事業については昨年12月に住民向けに説明した際、安全性や管理方法について質問が出た」と語った上で、「本年度から国際原子力機関(IAEA)の助言を受けながら、再生利用の基準などの検討を進めている。丁寧な説明のためには必要」と発言。「そうしたことを踏まえながら説明会のタイミングを引き続き検討する」と述べた。

 ◆「いつ、どの範囲か決まっていないが、説明会は開く」

 候補地の一つ、新宿区が改めて問い合わせると、環境省は今月21日に「新宿御苑管理事務所で実施予定の実証事業について」と題した文書を発出。「今後の説明会の開催時期については、別紙に示す議論すべき事項等を踏まえながら検討していく」と記した。この文書は所沢、つくばの両市には送付されていなかった。 「別紙」の「今後のスケジュール(案)」に反応したのが区側だった。「実証事業」の欄には、福島県飯舘村での農地造成、中間貯蔵施設内での道路盛土の2項目だけが書かれており、区環境対策課の小野川哲史課長は取材に「(候補地とされた)新宿御苑の記載はなく、実証事業はやらないと受け止めた」と語った。
 文書を送付した環境省環境再生事業担当参事官室の担当者に取材し、新宿の実証事業は中止かと尋ねると「(中止を)伝えた事実はない」と答え「(首都圏の)3カ所についてはいつ、どの範囲か決まっていないが、説明会は開く」と話した。
 同省福島再生・未来志向プロジェクト推進室の戸ケ崎康企画官は「3カ所のほか、新たな福島県外の実証事業の候補地はない。来年初めごろにまとまるIAEAの最終報告書を待つ段階だ」と語った。

 ◆周辺住民「もう終わったことだ」

 「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」の世話人、平井玄さん(71)は「中止なら中止とはっきり説明し、公表してほしい。説明会を開くにしても、地元住民だけではなく対象地域を広げるべきだ」と訴える。
 候補地の住民にとって、地元合意がないがしろにされる懸念は大きい。原発処理水を巡り、政府はIAEAの報告書が出た後に海洋放出を強行したからだ。
 「除染土の再利用でも環境省はIAEAのお墨付きを得る考えだろうが、所沢市を訪れたこともない国際機関の報告書に意味はない」。そう語るのは同市で再利用に反対する湯沢安治さん(62)。「地元町会は『説明は必要ない』との立場。市議会も『住民合意のない実証事業は認めない』と決議した。もう終わったことだ」と突き放した。
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