[2023_11_20_02]原発処理水3回目の海洋放出終わる 気がかりなタンク間移送時の漏えいリスク…市販の耐圧ホースつなぎ使用(東京新聞2023年11月20日)
 
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原発処理水3回目の海洋放出終わる 気がかりなタンク間移送時の漏えいリスク…市販の耐圧ホースつなぎ使用

 21時52分
 東京電力は20日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理した後の水について、3回目の海洋放出が完了したと発表した。年内の放出を終え、4回目は年明け以降となる。

 ◆汚染水の発生を止めない限り、放出は終わらない

 海洋放出が始まった8月24日から11月16日までに、保管する処理水は約2万トン減った。タンク約20基分で保管総量の1.5%に当たる。東電は2023年度にタンク約10基分を減らせると予測していたが、それを大幅に上回っている。
 汚染水の発生量が想定よりも少なかったことが影響した。溶け落ちた核燃料(デブリ)がある1〜3号機は、建屋に流入した雨水や地下水がデブリに触れた冷却水と混ざって汚染水となる。地面の舗装など雨水対策が進んだ効果が出ているが、現状では地下水の流入を止める抜本策がない。汚染水の発生を止めない限り、放出は終わらない。
 東電への風評被害の損害賠償請求は、16日時点で約50件に上っている。(小野沢健太)

 ◆既設配管なし ホースとポンプを仮設

 2023年度の処理水の海洋放出は、残り1回となった。次から放出する処理水は、保管タンクから放射性物質の濃度測定用のタンクに移す必要がある。既設の配管がないため、仮設のホースやポンプを使って移送するしかなく、漏えいのリスクが付きまとう。
 23年度は処理水約3万1200トンを4回に分けて放出する計画。これまでの3回分は、既に測定用タンクに入った処理水を放出してきた。4回目の放出に向け東電は6日から、2カ所で保管している処理水計約7800トンを測定用タンクに移し始めた。年内に全てを移し終える予定という。
 東電によると、移送に使うホースは市販の耐圧ビニールホースを複数本つなぎ合わせた構造。漏えいを防ぐため、別のホースで外側を覆って二重化した。
 1本のホースは最長10メートル。今回、保管タンクは測定用タンクのそばにあるため、移送中の1カ所のホース延長は約90メートル、もう1カ所は約150メートルで済んだ。
 現場には監視員を4人配置し、30分ごとに見回りをして漏えいがないかを確認。「夜間は異常が確認しにくいため移送しない」とし、作業を昼間に限定した。
 多核種除去設備(ALPS)で浄化した水は、工事で設置した配管を通って敷地内のタンクに送られる。最も離れた場所はALPSから直線距離で1キロ強。保管タンクから測定用タンクを直接結ぶ配管はない。放出が進み、より離れたタンクから移送されるようになると、仮設ホースが長くなり、漏えいリスクが増す。
 東電は仮設ホースの区間を短くするため、既設配管の活用や新たな配管の設置などの検討を始めたばかり。長期間続く放出が、仮設頼みの状況を脱せるかは見通せない。(渡辺聖子)
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