[2023_10_10_02]廃炉最難関に3工法 福島第1原発 来春めどに優先順位決定(東奥日報2023年10月10日)
 
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廃炉最難関に3工法 福島第1原発 来春めどに優先順位決定

 原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、東京電力福島第1原発3号機に残る溶融核燃料(デブリ)を本格的に取り出す際の工法として、従来検討してきた「気中」「冠水」の2工法に加え、樹脂などでデブリを固めて削り出す「充填固化」を提示した。それぞれの技術的課題を洗い出し、来春をめどに廃炉の最難関に挑む工法の優先順位を決める方針だ。
 第1原発1〜3号機のデブリは推計880トン。冷却した水が高濃度の放射性物質を含む汚染水となり地下水や雨水と混じることで、多核種除去設備(ALPS)で浄化した後の処理水が増える原因となっている。東電は2023年度後半に2号機で数グラムのデブリを試験的に取り出し、30年代に3号機で本格的に始める計画だ。
 デブリは原子炉圧力容器や格納容器の底部に残っているとみられる。極めて強い放射線を出し、人が近づけないため遠隔での作業となる。
 検討期間が最も長い気中工法は、デブリに水をかけながらクレーンやロボットアームを遠隔操作し上や横方向から取り出す。機構で工法を検討する委員会の委員長を務める更田豊志前原子力規制委員長は「一番シンプルなやり方だがデブリとの間に遮蔽がなく、高い放射線が最大の敵」と指摘する。原子炉上部に設置するクレーンは大型で、修理方法が課題になる。
 放射線対策を重視するのが冠水工法。原子炉建屋全体を遮蔽効果がある水で満たし、比較的スムーズな作業が期待できる。ただ水を漏らさないよう建屋を完全に覆う構造物が必要となる。地下30〜40メートルにトンネルを数本掘って構造物の床面を造るため、建設が長期間に及ぶ懸念が残る。
 両工法の弱点を補う形で約1年前に急浮上したのが、充填固化工法だ。圧力容器などに充填材を流し込んで放射線を遮り、ボーリングのような掘削装置で上から砕いて回収する。冠水工法のような大きな構造物は不要だが、「樹脂そのものが放射性廃棄物になるデメリットもある」(東電)。
 工法の決定は、国と東電が見込む41〜51年の廃炉完了の成否を分ける。更田氏は「いずれも現在は並んでいる状態。長所と短所を洗い出し、それぞれの工法の組み合わせも考える」と話す。処理水の海洋放出では国内外で反発が起きた。日本原子力学会廃炉検討委員会の宮野広委員長は「工法決定はトップダウンではなく住民参加で考えるベきだ」と指摘している。
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