[2023_09_19_02]鉄くずを無断で持ち出し換金 帰還困難区域の解体現場の実態(毎日新聞2023年9月19日)
 
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鉄くずを無断で持ち出し換金 帰還困難区域の解体現場の実態

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 東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の建物解体工事現場で、放射性物質に汚染された可能性のある廃棄物から鉄くずなどの金属類が複数の作業員に無断で持ち出され、売却されていることが関係者への取材で明らかになった。環境省発注事業である放射性廃棄物処理の流れを逸脱して、区域外で資材として再利用されるおそれがある。
 環境省は毎日新聞の取材に、元請けの大手ゼネコン鹿島が調査したり警察に報告したりしていると回答。他の現場でも無断持ち出しがないか調査するかについては「警察の動向も踏まえつつ対応を検討中だ」としている。
 無断持ち出しが判明したのは、第1原発が立地する福島県大熊町にある町図書館・民俗伝承館(一部2階建て延べ床面積約2200平方メートル)の解体工事現場。鹿島などの共同企業体(JV)が周辺の除染工事などと合わせて約50億円で落札し、今年2月ごろに工事が始まった。この解体工事現場は、帰還困難区域に区分された地域でも人が再び住めるように、国が優先的に除染やインフラ整備を進めた復興拠点の中にある。
 環境省によると、解体工事で出た廃棄物は指定の仮置き場に集められた後、放射能濃度が1キロあたり10万ベクレルを超えるものは第1原発周辺の中間貯蔵施設に、同10万ベクレル以下のものは専用の処分場に搬出される。同100ベクレル以下などの基準を満たせば再利用できるが、仮置き場で基準を下回るか測定する必要がある。
 こうした処理の流れは放射性物質汚染対処特措法などで定められ、過去に汚染土壌や廃棄物を不法投棄したとして同法違反で立件された事案もある。環境省の担当者は「過去に無断で持ち出し売却された事案は把握していない」と話す。
 関係者の話では、複数の作業員が今年4〜6月ごろ、解体工事現場から出た鉄くずや銅線を仮置き場に持って行かずに帰還困難区域外にある県内の業者に持ち込んで売却。少なくとも7回繰り返され、約90万円を得ていたとみられる。
 この作業員らが所属する1次下請けの土木工事会社「青田興業」(大熊町)の社長は取材に、作業員らに聞き取りして無断持ち出しを把握したことを認め「元請けに全部文書で報告した。いずれは(持ち出したことの)責任を取らなければならない」と答えた。
 鹿島は取材に文書で「発注者、警察に相談の上、対応中だ。個別事案のため詳細は控える」とコメント。環境省も文書で「鹿島JVが調査したと認識している。警察に相談、報告しており、当省でも警察とやり取りしている。対応を検討中だ」と回答した。

 記事後半では、複数の作業員が示し合わせて鉄くずなどを持ち出し、換金していた実態や、作業員が所属する会社社長の一問一答を詳報します。

 帰還困難区域の復興拠点は福島県6町村にまたがり、環境省は除染と解体工事を2017年度にスタートさせ、今年5月までに復興拠点の避難指示がすべて解除された。21年度までに国費から総額約2200億円が費やされ工事は現在も続いている。
(後略)
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