[2023_09_18_03]かつての「帰還困難区域」 暮らしは戻った? 福島第1原発事故の被災地の現状【動画】(東京新聞2023年9月18日)
 
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かつての「帰還困難区域」 暮らしは戻った? 福島第1原発事故の被災地の現状【動画】

 06時00分
 東京電力福島第1原発事故による高い放射線量のため、立ち入りも制限される「帰還困難区域」。一部を「特定復興再生拠点区域(復興拠点)に指定し、優先的に除染をし避難指示を解除する動きが相次いだ。解除された地域で暮らしは戻ってきたのか。現地の様子を報告する。(山川剛史)=福島県の葛尾村、双葉町、大熊町、飯舘村、浪江町、富岡町の順に掲載

 ◆葛尾村

 農業や畜産が盛んで、放射能汚染は6自治体の中では最も低く、逆に居住率は4割近くと最も高い。ただ、北東部は非常に汚染度が高く、土地の高低差も大きいため除染が難しい。復興拠点も主に県道沿いの狭いエリアに限られた。帰還した人はまだ1人にとどまっている。

 ◆双葉町

 居住再開が最も遅かく、工場誘致や移住促進で巻き返しを狙う。JR常磐線双葉駅の西側(山側)には、しゃれた復興住宅が建設され、居住者の大半がここで暮らす。
 駅東側には数多くの商店や住宅が並んでいたが、大半が解体され、現在はがらんとしている。

 ◆大熊町

 JR常磐線大野駅を中心に市街地が広がっていたが、汚染がひどく、役場は南西側の大川原地区に移転。復興住宅も新役場近くに密集する。
 大野駅周辺は道路までもが取り壊され、元の街並みは消えた。廃炉関連企業や商業施設、ホテルなどへ刷新される。

 ◆飯舘村

 村全体の人口は比較的回復したが、復興拠点だった長泥地区に居住者はいない。除染土でかさ上げする農地造成が続く。
 家屋再建の動きも見られるが、営農再開は数年先で、帰還が進むかどうか見通しにくい。

 ◆浪江町

 旧復興拠点は津島、室原、末森の3地区。写真は、津島地区の通称「津島銀座」だが人に会うことはまれ。近くに復興住宅10棟が建てられ、6棟は居住が確認できた。室原、末森両地区は、農業や畜産に活動再開の兆しが見られる。

 ◆富岡町

 町全体の居住率はようやく2割にまで戻った。
 桜並木沿いに広がる夜の森地区(写真左)などが解除されたが、桜シーズンを除くと人の姿はほとんど見られない。それでも、バウムクーヘン専門店が開店して繁盛するなど明るい兆しも出てきた。

 ◆どうなる? 残された「帰還困難区域」

 残された帰還困難区域は山がちな場所が多いが、面積は広く、約6000人の住民登録者がいる。
 政府は、帰還を希望する人の自宅周辺を除染し、2029年までに帰還を実現する方向。ただし、帰還希望のない家は除染しない考えで、まだらに高濃度汚染が残る恐れもある。
 このほか、原発周辺に設けられた中間貯蔵施設エリア(大熊、双葉両町)には、約2000人の登録者がいる。同エリアに運び込まれた除染土は2045年までになくなる約束だが、先行きは分からない。
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