[2023_09_09_04]経産相 水産支援「機動的に」 状況見据え予算確保も 処理水巡り衆参連合審査(福島民報2023年9月9日)
 
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経産相 水産支援「機動的に」 状況見据え予算確保も 処理水巡り衆参連合審査

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 衆参両院は8日、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、経済産業、農林水産両委員会の連合審査会をそれぞれ開いた。西村康稔経産相は午前の衆院で、海洋放出後に中国による日本産水産物の輸入停止などで水産業に被害が発生している現状を踏まえ、「機動的に予算を確保して水産業の支援に万全を期したい」と強調。現時点で基金を積み増す予定はないとしつつも、必要に応じて追加対応を検討する考えを示した。8月24日の処理水放出開始後、この問題を国会で審議するのは初めて。
 政府は水産事業者支援として、海洋放出前に風評被害対策に300億円、漁業継続支援に500億円の計800億円の基金を設置した。海洋放出後には中国の輸入停止による影響を受け、新たに予備費207億円を投じることを5日に閣議決定し、計1007億円の対策に拡充した。300億円の基金については、既に水産物価格が一定程度下落するなどの風評被害が確認されたとして1例目の支援先が決定している。
 自民党の武部新衆院議員は中国などの輸入禁止措置が長期に及ぶ可能性に触れ、「基金の積み増しなど必要に応じた機動的な対策の必要性を伺いたい」と政府の見解をただした。これに対し、西村経産相は「800億円の基金は支出が始まったところで現時点では何か積み増すことは考えていない」と述べた上で、今後の状況を見ながら機動的に予算を確保する意向を明らかにした。
 午後の参院では、野村哲郎農水相が水産物の輸出先を開拓し、中国市場に依存する現状からの転換を目指すと表明した。「(市場が)一国に偏重すると(リスクが)ある」と言及し、代わりの有望市場として米国や台湾、インドネシア、マレーシアを挙げ、輸出先の拡大を図ると説明した。
 販路拡大に向け、政府はホタテの殻を自動でむく機器の購入費用の補助を検討している。野村農水相は「3分の2の補助率でやるということで調整をしている」と述べ、追加支援策として閣議決定した予備費からの支出で対応する方針を示した。

 処理水を「汚染水」と発言し、その後言い間違えたとして撤回したことについては「わびて済む問題ではないことは重々承知している。真剣にこれからも緊張感を持って取り組みたい」と改めて謝罪した。

 ■総務省 自治体向け窓口設置へ 中国からの迷惑電話対応

 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出後に中国からとみられる迷惑電話が福島県内外で相次いでいる問題で、総務省は自治体向けの窓口を設置し、個別の相談への対応を強化する。柘植(つげ)芳文総務副大臣が立憲民主党の落合貴之衆院議員の質問に答えた。
 柘植副大臣は窓口の設置により「自治体の個別の相談に積極的に応じたい」との見解を示した。一方、海外からの着信の制限などのサービスの活用が効果的だとし、「公式SNSなどを通じて広く国民に周知を行う。通信業者に対し相談、申告に迅速かつ円滑に対応するよう要請する」と述べた。
 福島県によると、海洋放出が始まった8月24日から30日までの1週間で、県や県内市町村、団体・学校などに延べ約9200件の迷惑電話が確認されている。
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