[2023_09_04_08]7割は再び処理が必要 福島第1原発の「処理途上水」の実情とは(東京新聞2023年9月4日)
 
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7割は再び処理が必要 福島第1原発の「処理途上水」の実情とは

 2023年9月4日 06時00分
 東京電力は、福島第1原発で貯蔵する高濃度汚染水を処理した後の「処理水」を8月24日から海に放出し始めた。
 放出は、トリチウム以外の放射性物質が基準値を下回るまで処理した後、大量の海水で薄め、除去できないトリチウムは基準値の40分の1未満にするという。
 ただ、現時点で政府が新たに定めた放出基準を満たす水は、約134万トンのうち3割ほどで、残る7割は少なくとももう一度処理する必要がある。東電自らが「処理途上水」と呼ぶ水だ。
 基準を満たさない水はどのエリアにあり、なぜこんな状況になったのかを探った。(山川剛史)


 多核種除去設備(ALPS)で処理したのに、どうして基準を満たせない水が多いのか。タンクごとの測定結果を見ると、放射性セシウム137はごく一部を除いて十分除去されていたが、放射性ストロンチウム90と放射性ヨウ素129が圧倒的に大きな原因となっていた。(上図のタンク群にアイコン表示)
 問題の三つの放射性物質について、ALPSがどれくらい性能を発揮していたか、年度別に主な濃度分布をグラフ化した。
 東電は2015年度末までに少しでも多くの水処理を終えようと急いだ。特にフィルターの交換時期が近い時期に性能が大きく低下。機器トラブルも重なった。
 その結果、タンクの水のリスクは大幅に下がったものの、海洋放出の基準に照らすと、処理が不十分との結果を招いた。

 放出基準 放射性物質ごとに、放出できる基準値が定められている。タンクの水には多様な物質が含まれる。物質ごとに、基準値の何倍の濃度か比率を求め、その合計が1を下回ることが放出の必須条件。たとえば、セシウム137が45ベクレル/リットルの水があったとすると、基準値は90ベクレルなので比率は「0.5」。ストロンチウム90が15ベクレルだとすると、基準値が30ベクレルなので比率は「0.5」。二つの物質だけで比率の合計が「1」になり、この段階で放出基準を満たさない。放出基準に適合する水でも、トリチウムはどのタンクも基準値(6万ベクレル/リットル)を超過しており、大量の海水で薄める。
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